オミクロン株・年末年始にかけての動向を考察して迎えた新年
新年を迎えても新型コロナ・オミクロン株の話題は尽きませんが、昨年12月19日に年末年始はどのような状況になるのかを考察していますので、今回は実際にその時期を迎えているにあたっての現場の実感とさらなる今後の動向について続報として考察してみたいと思います。
東京都ホームページ・都内の最近感染動向によれば、感染者数7日間移動平均が100名未満となったのは10月12日、50名未満となったのは10月20日、30名未満となったのは10月24日、その後は10~20名でしばらく推移していましたが、12月24日からは30名を超える水準で推移しています。都内でオミクロン株の市中感染が確認されたのも12月24日でしたが、その2週間ほど前に以下の事例がありました。
東京都内在住の20代女性は8日に米テキサス州から帰国後、14日間の自宅待機中に発症した。成田空港の検疫では陰性だった。16日にオミクロン型とわかった。入国時に陰性で、濃厚接触者でない健康観察の対象者の感染確認は初めてだった。女性は帰国便の同乗者に陽性者がおらず、自宅で待機できた。同州が検疫所の確保する宿泊施設で3日間の待機を求める地域に指定される前のことだった。この女性と8、9日に会っていた都内の20代男性の感染が15日に確認された。男性は女性と会った翌10日に発熱などの症状が出た。陽性と判明する前の12日には川崎市内でサッカーを観戦していた。男性もオミクロン株であることが判明した。
これを受け、前回(12月19日)の記事で私が考察した内容が以下です。
該当者が医療機関を受診して検査を行い新型コロナと判明した場合、すべての症例で遺伝子解析を行うはずですので、2-3日後には結果が判明します。オミクロン株が拡がりやすいことを考えれば、このイベントにおける感染機会があったかどうかは来週(12/20~25)の首都圏の感染者数の推移に現れてくる可能性があります。
実際に川崎市内での感染が東京での市中感染とリンクしているかはわかりませんが、海外からの帰国者の行動については規則が守られていないという情報もあるようですので「水面下でのオミクロン株の拡散はある」と考えて良いと思います。しかしながら、既にオミクロン株が日本に入り込んでから1か月以上が経過しているにもかかわらず、現段階では諸外国のように数日単位での感染者の急増には至っていません。今のところ懸念していた昨年末と同じような状況は回避できているような印象です。
大晦日に東京都の新型コロナ検査陽性者数が1,000人を超えました。残念ながら12月に入ってからも減らない人出と会食機会、それは東京都民の意識の低さの結果とも言えるでしょう。実際に診療していても、新型コロナの患者さんが減ることはなく連日陽性者の報告を行っている状況で、聞き取り内容ではほぼすべてマスクなしでの会食機会があった方々です。多くの医療者は家族への感染は勿論のこと、院内で感染を発生させないために、やりたいことを我慢して、この年末年始も患者さんと向き合っているにもかかわらずです(2020年12月31日 「真の医療崩壊を防ぐためにも水面下の医療体制の偏在化を是正すべき」より)
年末は30日まで診療を行っていましたが、発熱相談センターからの紹介件数は微増ではあるものの検査で陽性になる方はゼロのままです。昨年は12月上旬から徐々に検査陽性者が増え始め、年末は保健所から依頼された濃厚接触者はほぼ陽性というような状況でしたので、現在も上昇の兆しがみえない状況は昨年末とは明らかに違っています。前述の感染者数7日間移動平均が30名を超えた時期は東京都がPCR等検査無料化事業を開始した時期にも一致しており、検査数の増加に伴う検査陽性者数の増加とも捉えることができます。東京都の検査数にこの無料化事業の検査数が反映されているかどうかは不明確ですが、少なくとも検査陽性率は1%程度と低い水準で推移しており急増はしていません。オミクロン株はデルタ株より拡がりやすいのは確かかもしれませんが、市中で確認された後でも感染者が急激に増加しているわけではなく微増、あるいは横ばいといったように見受けられます。
諸外国とは異なる背景として、やはりこの1年でさらに築き上げられた日本人の高い公衆衛生知識、感染対策の徹底が功を奏しているようにも思えます。いずれにしても年末年始は人が集まる機会も多く、医療機関が休診の時期でもありますので、今後の動向をさらに考察するためには正月休み明けの週末(1月6, 7, 8日あたり)と連休明け(1月11, 12, 13日あたり)の感染者数と検査陽性率を注視する必要があると考えています。
余談ですが、新型コロナに関する識者のコメントに反感を抱く国民が少なくない昨今で、それを助長するような専門医ではない肩書だけの識者の現実的ではないコメントが目に留まりましたので記事にしてみたところです。感染対策は理想論だけで言うべきではなく、実務から習得したスキルを日常生活の中でいかに効率よく、現実的に生かしていくかが重要であると私は思います。
関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)によると、鉄道や飛行機などの公共交通機関は、駅や空港で「密」になりやすい。混雑のピークを避けて移動する工夫が有効だ。
年末年始に混雑のピークを避けて移動することなどほぼ不可能ですし、公共施設で密になるのは当たり前です。移動が問題ではなく現地でどう過ごすかがポイントです。
電車は、なるべくすいている車両を選び、大声で話をしない。マイカーは人との接触は少ないが、高速道路のサービスエリアなどでは注意が必要だ。勝田教授は「食事は買ったものを車内でとる方が安心」と話す。
混雑している帰省ですいている車両などは皆無です。サービスエリアがリスクのある場所とは考え難く車内でとらなくても食事をとる場所はいくらでもあります。上記同様、移動自体は問題にはなりません。
帰省先などでの行動にも気をつけたい。オミクロン株は感染力が強く、エアロゾル(空気中を漂う微粒子)で感染する可能性が指摘されている。勝田教授は「寒い時期だが、特に換気に力を入れてほしい」と訴える。家族と過ごす際は、暖房器具を増やし、常時開けておく窓を作ることを提案する。おせち料理など食事は大皿でなく、あらかじめ取り分けることが望ましい。
オミクロン株に限らず新型コロナウイルスは3密環境ではエアロゾル感染の可能性があり、それは常時起こるわけではありません。また、私も経験がありますが、真冬の北海道などでは窓を開けて換気をすることは現実的ではなく、常時窓を開けておくなどほぼ不可能です。二段階換気など、より具体的な方法を示すべきです。さらに、「おせち」取り分けがポイントのような見出しですが、そもそも食事を介した感染の可能性はほとんどないことがわかっていますので、その時に大きな声での会話をしないことの方が重要なポイントです。
識者に重要なのは「肩書」ではなく「どのような経歴があるか」です。本件に限らずですがメディアはそれを見分けることができないのでしょうかね。
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