資源価格高騰と今後の資源燃料政策とーばんそうこう的措置からの脱却をー
「ロシア」「ウクライナ」に関係する内容の可能性がある記事です。
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資源価格高騰と今後の資源燃料政策とーばんそうこう的措置からの脱却をー

4月25日午前中、モビリティビジョン検討会と日時が重なってしまい出席できなかった資源燃料分科会。どちらに出席すべきか悩んだのですが、先にモビリティビジョン検討会が決まっていたこと、課題の緊急性は資源燃料分科会の方が高いと感じるものの、それだけに発言しなければならないことも明確だと思ったので、資源燃料分科会は意見書の提出で対応しました。

分科会の資料はこちら。関連の報道はこちら
私が提出した意見書も掲載いただいています。こんな一文にもならない仕事に結構な時間を使いましたので、ぜひお目通しいただきたいのですが(笑)、今日はもう少し意見書をかみ砕きつつ、ポイントを抜粋し、最後にブルームバーグの記事も紹介したいと思います。

資源燃料価格高騰対策ーばんそうこう的措置で良いのか?

ガソリン価格高騰に対応して、石油元売り会社に対する補助金が給付されていますが、電力・ガス含めてあらゆるエネルギー価格が上昇しています。
今年に入っての資源高による影響はここまでのところ限定的ですが(電気代に反映されるまでには時間差がある)、これから電気もガスも値上がりが続くでしょう。ガソリン・灯油類などにだけ、しかも元売りへの補助金という形での対応が妥当なのか考える必要があります。
但し、ここで申し上げたいのは「全部に補助せよ」ということでは決してありません。資源価格高騰局面に入る前には、カーボン・プライシングの導入が検討されていたわけで、化石燃料の外部不経済の内部化(=CO2排出のコストを負わせる)により化石燃料の価格が上がり使いづらくなる(=そのことによって、CO2を排出しない他の技術が選択されるようになる)状況を創ろうとしていたはずです。むしろ脱炭素化が難しい化石燃料にこうした補助金を手当てすることで、依存を継続させてしまうことは正しい措置とは考え難く、早急にこうした「ばんそうこう的措置」を見直す必要があることを申し上げました。

ウクライナ侵攻等を踏まえた資源・燃料政策の今後ーLNG調達努力の限界

わが国だけでなく、近年各国のエネルギー政策は、軸足を「気候変動対策」に置いてきました。先進国は、2030年、50年に向かって相当野心的な目標を設定しましたので、辻褄を合わせようと思えばそうならざるを得ません。2030年までわずか8年。50年までも30年弱であり、エネルギーインフラの転換にかかる時間を考えれば悠長なことは言っていられないからです。
一方で10年、30年あればさまざまな社会には様々な危機が起こります。ロシアによるウクライナ侵攻は「想定外の事態」だったかもしれませんが、人類は数十年に一度はこうした争いごとを起こすものであり、近年も、西側諸国が直接巻き込まれなかったかもしれませんが、様々な紛争や内戦含めて地政学的リスクが発生していたわけです。
気候変動対策を社会の最重要課題として掲げたこと自体は間違っていなかったとしても、移行に必要な時間の長さとその間に起こりえる多様な危機への備えが全く不十分であったと私は思っています。エネルギーの専門家は声を上げていましたが、オイルショックの記憶も薄れてしまったなかでは、抵抗勢力のように受け取られてしまっていたのは残念なところ。気候変動対策の持続性のためにも、長期にわたる移行期間で発生するであろうリスクへのレジリエンスをどのように確保するか改めて議論が必要ですし、化石燃料の調達努力はもちろんですが、省エネ、再エネ、原子力の活用など総力戦が必要です。

化石燃料の調達努力について、政府はしばしば「国が前面に出る」という表現をしますが、資源外交に注力してもらうことは必要ながら、それだけでモノが動く訳ではありません。売買の主体となる事業者が、長期の契約を締結したり、安定的な支払いができる裏付けが必要です。
その点で、政府が昨年示したエネルギー基本計画と長期エネルギー需給見通しでは、天然ガスは現在の半分程度となる見通しが示されています。これをそのままにして事業者に「買い付けを頑張ってください」と言っても無理です。
加えて、電力自由化により、各事業者は自社の販売量が見通せなくなり、長期契約を締結しづらくなっています。わが国の天然ガス長期契約は急速に減少しています(提出した意見書には、エネルギー経済社会研究所分析の図表を添付させていただきました)。

示唆に富むブルームバーグの記事

こうした問題意識をストレートに表現してあるブルームバーグの記事が、まさに4月25日に掲載されていましたので、最後に紹介させていただきます。ブルームバーグは皆さんご承知の通り、気候変動対策をかなり強く謳ってきた媒体ですが、こういう記事も出すんですよね。気候変動対策で「過去の遺物」とされかかっていた石炭が奪い合いになっている現状を整理したもので、若干長いのですが、そこに出てくるコメントが秀逸。

“To say in the long run there’s no demand for your product, but in the short run, can you please ramp it up — that’s a lot to ask of a supply chain,” said Ethan Zindler, head of Americas research at BloombergNEF.
ブルームバーグNEFの米州調査部長イーサン・ジンドラー氏
「長期的には需要がないが、短期的には増やしてほしいというのは、サプライチェーンに求めるものが大きすぎる」

わが国が「2030年の温暖化目標があるので、長期エネルギー需給見通しでは2030年には天然ガスは今の半分くらいの利用になるけど、資源外交頑張るから、短期的には調達頑張ってよ」と言っているのはまさにこの状況。

“When you’re trying to balance decarbonization and energy security, everyone knows which one wins: Keeping the lights on,” said Steve Hulton, senior vice president for coal markets at market-research company Rystad Energy in Sydney.
市場調査会社の副社長
「脱炭素とエネルギー安全保障のバランスを取ろうとしたとき、どちらが優先かは明らか。灯りを消すことはできない(=エネルギー安全保障優先に決まってるだろう)」

こんな発言を聞くと、数年前、とあるシンポジウムで私が「エネルギーの3つのEには優先順位がある」と発言したところ、とても偉い方が「その通り!環境性が一番大事なんです」と仰って、私は椅子から静かに転げ落ちた…ことを思い出します。

日本、問われる対応: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ウクライナ侵攻が一日も早く収束することを祈りつつ。
皆さん良いゴールデンウイークをお過ごしください。




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竹内 純子(国際環境経済研究所理事/U3イノベーションズ合同会社共同代表/東北大学特任教授)
温暖化・エネルギー政策研究と、ビジネスの両面から、現実的な移行とサステナブルへの移行を目指しています。