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キャリア戦略のモヤモヤ、解消されたかな? 日経COMEMOイベントレポート

時代が変わって令和になり、働き方も変わっていく中で、キャリア戦略のモヤモヤを抱えているビジネスパーソンは多いはず。日経COMEMOは7月25日、そんなモヤモヤの解決策を登壇者と一緒に考えるイベントを開きました。

日経COMEMOキーオピニオンリーダー、「TOKYO WORK DESIGN WEEK」オーガナイザーで、「自己紹介2.0」の著書である横石崇さんがファシリテーション。たくさんの若者と向き合って来たマーケティングアナリストの原田曜平さん、平成生まれのパラレルキャリア女子、ハピキラFACTORY代表取締役の正能茉優さんをゲストに迎えました。

会場は東京・大手町のLIFORK。横石さん、原田さん、正能さんは中央のソファで相談に応じました。以下、会場に集った高校生、大学生、社会人の平成生まれ男女から、具体的な相談内容と、3人の回答をまとめました。

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モヤモヤ1:好きなことを仕事にするべきだと思うか?

原田さん ここ数年は就職状況がとても良いので、今の若者は安定志向ではあるものの、以前よりは好きなことを仕事にしようというムードが出てきたのかな。私は映画が大好きだったが、当時の映画会社はあまり自分で映画をつくれる感じではなかった。テレビ局でドラマをつくりたいと思ったが、入社試験に落ちた。好きを仕事にしたかったが挫折して広告会社に入社したが、当時は広告にはぜったいに行きたくなかったので若いときは葛藤して苦しんだ。結局、私は「好き」を仕事にすることはできなかったが、でも、あのときの「好き」が本当に好きだったのかは今となってはわからない。好きか嫌いかはそんなに簡単ではない。あまり好きじゃなかった広告会社に入ってみたものの、本当にいろんな会社があり、広告業界の業務も本当に多様で、自分はなんで偏見で広告業界をみていたんだろうと思ったことがあった。人間には多くの偏見があって、好きか嫌いかはそんなに簡単ではない。

正能さん 私自身、会社を始めた当初は、好きなことが特になかったので「好きなことを仕事にしよう」とは思えませんでした。「好きなこと」って現在進行形で語られがちだけど、気付いみれば「好きだった」と振り返って気付く形でもいいんじゃないかな。例えば、私が起業するきっかけとなった長野県の小布施というまちは、いまとなっては大切な、大好きな場所で、いまでこそ「小布施に関する仕事がしたい」と思いますが、「小布施に初めて行った2010年に小布施が好きだったか」?と聞かれれば、そのときは正直何も思っていなかった。だから、いま現在は好きじゃなくても、楽しくなくても、それでいいと思う。でも、あとから好きだなと思えることに出会うには、いろいろな場所に行って、いろいろな人に会って…とアクションし続けることが大事。私自身、当時はよく知らなかった小布施に行ってみて、これだけ好きなことに出会えたので、好きなことが見えていない人こそ、とりあえず動いてみるのが大事なのかもしれません。

モヤモヤ2:いま大学3年生で、この夏はとりあえずインターンしているが、しんどそうで働きたくありません。結婚して専業主婦になりたいが、簡単に結婚もできそうにないし、どうしたらいいか困っています。

原田さん みんなが一斉に就活するのはおかしいし、そこに違和感を感じるのは正常な感覚だと思う。専業主婦道を究めればいい。相手に自分が何を差し出せるのか、考えたらいい。就活と一緒です。楽な人生なんてない。専業主婦になるにしても人と差別化しなければいけないんです。 

正能さん うーん。人生を幸せに生き抜くことを考えると、私は一度仕事をしてみることをオススメしたいです。働くことって、それ自体も一つの目的だけど、働くことを通じて新しい好きなことに出会えたり、新しい人と知り合うこともできる。だから、いま明確に結婚したいお相手がいないなら、可能性を広げてもいいんじゃないかな。自分の好きなことを見つけられるかもしれないし、それこそ、人生を共にしたいというパートナーに出会えるかもしれない。あとは、いますごく結婚したい人がいて、専業主婦になったとしても、その幸せが残りの人生の80年間、ずっと続くかはわからないじゃない?何かあったときに、自分で決められるための「自分が食べていくお金は自分で稼ぐ」という最低限の武器を持たずに専業主婦になることはすごく怖いことだなといち女性として思う。結婚って、相手ありきのことだから、自分だけで決めることができないところもあるから。

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モヤモヤ3:これから働くうえで、学歴は重要ですか? インターンで働いていて、学歴がなくても活躍している人がいっぱいいます。

原田さん 世界的にみると、日本は学歴社会ではないほうです。異常な人手不足で、学歴とかいえない状況だから。学歴と実力は相関性があると思うが、それぐらいのものです。学歴がとれなかったら、違うところで頑張ればいい。人生で一番強いのはコンプレックスだと思う。逆にそれを自分の武器にすればいい。僕は「もてなかった」のを武器に若いときは生きました。

正能さん 私は慶應大学の出身なのですが、「慶應なんだ」というだけで初対面の先輩や後輩と仲良くなれたりする。それはうれしいところです。でもこれって、地域に関する仕事をしているときに遭遇する「◎町出身」という話題で盛り上がる感覚に近いと思う。「サッカー部出身なんだ」とか「小さいときから転勤族なんだ」とか。学歴じゃない違うタグでも、同じように人との距離をグッと近づけることはできるし、それでももし学歴が気になるなら、いまから進学してもいい。学歴は、いつでも取り戻せるものだと思います。

モヤモヤ4:自分の時間がほしいです。自分の時間をどう管理していますか?

原田さん 自分の時間はないです。ほぼゼロ。寝る前に、若い人に話をあわせるために「あいのり」とか「テラスハウス」を観るぐらいで。今ある時間を大切にしてほしいです。本を読む時間もこの5年ぐらいないです。それでも断れない仕事も多いし、前に進むしかない。人を待たせたりして迷惑をかけることも多いけど「原田さんしかできないこと」を持って乗り切るしかない。

正能さん 私は、自分の時間を大事にしたい気持ち、よくわかります。家族とか友達との時間も大事にしたい。私の場合、3年前に祖母が倒れてしまって、もしこのまま祖母と時間を過ごさなかったら、たとえ仕事で大成功しても、絶対に後悔すると思った。そのときから、家族とご飯を食べる時間を、週に1回は確保したいと思って、土曜日の夕方から夜の時間には予定を入れないようにした。いまは「人生配分表」という、人生を使い方を考えた表をつくって、ずっと働きつづけないようにしている。

横石さん 私も配分表をつくっていて、理想の時間の使い方と今の使い方を並べて、どれだけ差分があるか、書き出して違いを可視化している。私は自分で会社をやっていて時間の使い方は自由。妻に「ワークワイフバランス」を宣言したら「何にもわかっていない。時間の問題じゃない。『ありがとう、ごめんね』っていえること大事」と言われた。ワークワイフバランスをどうしようか悩んでいるところです。

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モヤモヤ5:学生のうちにやったほうがよかったと思うことは?

正能さん 私は、普通にしていたら会う機会もない人に会うという「会う人ロンダリング」をしていた。普通に毎日、暮らしていたら、友達と家族と先生ぐらいしか、会う人がいない。でも、それでは世界は広がらないわけで。どうしたら、上下とか、ジャンルを越えた、自分とは違う世界で生き、違う目線で物事を見ている人と会えるかなと考えて。その時に「学生である」とか「若者である」って、すごく会ってもらいやすい。だから、若いうちにやるのがおススメです。

原田さん SNSで横のつながりが増え、横社会化した。でも若いときに自分のモデルを見つけた人は強い。僕の場合は「下流社会」という本や宮台真司先生など、若者研究をされていた先人たちの存在。あるターゲットについて誰よりも詳しければご飯が食べていけるんだと、20代後半の時に気付いたときは、パッと目の前が開ける感じがしたのを覚えています。

モヤモヤ6:突き詰めることと、浅く広く経験すること、どちらが強いのか?

原田さん 僕は深く詰めるタイプ。僕ら団塊ジュニア世代群は、専門職志向が強かった。でもゼネラリストが是とされる日本の会社で、若者研究というジャンルを社内で確立するのが最初は本当に大変だった。僕らの下の世代は、専門職志向は減って、管理職志望が増えた。バランス重視で生きようとしている。 

正能さん 突き詰めることも、広げることも、大事。でも、順番としては、まずは突き詰めて、そこで結果を出す。その実績をもって、他のジャンルに広げるというのがやりやすいんじゃないかな。

モヤモヤ7:学生起業をどう考える?

原田さん 学生起業はだんだん増えているが、99%は長くもたない。経験と捉えてやるのか、もし本気で大きな会社にしていきたいのならなら本気でやるべき。要はどういうスタンスでやるかだ。日本はいい大企業、中小企業が多く、いい会社に入るといいDNAに出会ったり、いい研修があったり、会社に入るメリットはある。

正能さん 起業の一番の面白さは、「決める」、ということに毎日遭遇すること。会社に入ると、自分の意志で決めることって、若手のうちははなかなかない。で、そうこうしているうちに、世の中の当たり前がわかってきちゃって、決めることが苦手になる。判断はできるけど、決断ができなくなる。別に決められる人にならなくても人生困らないけど、決断できる人間になりたいなら、学生起業はおススメ。

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モヤモヤ8:会社にいることの内的な動機は?

原田さん 「ナレッジ」を武器にすること。大きな研究をし、それを最大限多くの得意先に売るには個人や小さな組織でやるより大きな組織でやることが適していると思う。

正能さん 1人で生きていたら気付かないことに気付けること。自分ではまだ気づいていない、実は楽しいことに出会えたり、知らない方法を教えてもらえたりする。

モヤモヤ9:日によっては気分が下がって何もやる気がしない時や自信がなくなる時もあります。どうコントロールしていますか?

正能さん ダメな日もありますよね。私の場合、ダメな時って、心か体が疲れているときなので、自分を含めて誰かを「裏切る」ことがなければ、お休みします。で、また次の日から、頑張ります。でも、だれかとの約束を破ったり、これまで頑張ってきたことを台無しにするタイミングなら、その日だけはニッコリ頑張ります。で、次の日に休みます。


モヤモヤ10:高校生ですが、バイトは就職のことを考えたら1つのことを継続したほうがいいと(親から)言われました。どう思いますか?

原田さん 親にも意外にたいしたロジックはないかもしれません。要は、親の理論を超える理由をきちんとつくれるかどうかが重要で、これは仕事でも同じことが言えると思う。

正能さん 私は居酒屋でバイトしてた時期があるのだけど、ビールジョッキを3つ持つのが限界で。でも、そこには6個持てる人がいて、自分はこの場所では役に立たないという自覚を持った。苦手なことや好きじゃないことに気付く場として、仕事に比べると始めやすくて辞めやすいバイトをしていてよかったなと思う。

モヤモヤ11:いま26歳だが、会社で頑張るということ、一生懸命に仕事することが何なのかわからない。教えてください。

原田さん 26歳の日本のサラリーマンの多くは歯車的な仕事をさせられている人がほとんどだと思う。それも後から考えたら大切な仕事である場合が多いが、自分で一切の裁量権のない仕事は疲弊につながる。裁量権のない仕事より裁量権のある嫌いな仕事のほうが恐らく楽しい。歯車をしながら少しでも裁量権を得るための戦いをしたほうがよい。

正能さん 私もいま27歳なので、近い感じかなと思うのですが、この歳って、自分の得意・不得意も少し見えてくるし、役割も後輩としてついていくだけではいけなくなってきて、考えますよね。そんなできることや苦手なことが見えてきている年次だからこそ、自分の存在価値が1.00を常に下回らないような役割を意識することが大事なのかなと。

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最後に、横石さんのモヤモヤを正能さん、原田さんに相談。令和時代をどう生きるべきか?

正能さん 働き方や生き方の選択肢が広がっているからこそ、いろいろ思うことはあるし、いろいろ言う人もいる。そんな時代だからこそ、自分の芯となるWHATはぶらさずに、HOWで工夫して、伝え方や立ち振る舞いに気遣いが必要なのかも。そうしたら、自分の大切なWHATをぶらさずに、働いていけると思います。

原田さん 若者にとっては、いい時代になっていると思う。世界で一番めぐまれている状況になりつつある。少子化がこれだけ続き、これまでは移民が少なかったから、就職も転職もし放題で、これはある程度続くだろう。真面目に議論なんかしていないで、いろいろやってみて、考えたらいい。いいなと思った年長者に近づくのも大事。そのためには魅力的な年長者に好かれる努力も必要だ。

横石さん、原田さん、正能さん、ありがとうございました。参加者のみなさんのモヤモヤ、だいぶ晴れたのではないでしょうか。

グラフィックレコーディングは今回、香林望さんに担当していただきました。

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こちらは完成版です。


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イベントの相談と回答の一部は8月に日経朝刊「COMEMOの論点」および日経電子版に掲載予定です。

また、今回のイベントは、日経とnoteの共同運営コミュニティ「Nサロン」Facebookグループにて、映像生配信(やわラボさん撮影)させていただきました。「Nサロン」は、月額制のオンラインサロンです。メンバーになると、日経COMEMO主催のイベントに無料招待されるほか、イベント動画視聴が楽しめます。興味のある方はこちらをご覧ください。

今後も日経COMEMOのイベントをお楽しみに!(スタッフ・山田豊)