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ちがいを活かす経営がイノベーションの源泉だ

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

多様性の時代と言われて久しいですが、日本ではジェンダーダイバーシティ(女性活躍)の文脈で語られることがまだまだ多い印象です。女性管理職比率における各国比較を見ても一目瞭然ですが、現在進行系の社会課題としていまだ大きな存在感があります。

近年ではLGBT(性的少数者。LGBTQやLGBTQIAなどの表記もありますが、本記事では日経表記に合わせています)に関する認知が拡大しており、それにまつわる課題についても徐々に理解が深まっているのを感じます。なにより、日経電子版において特集が組まれるというのは良い意味で驚きです。その初回の記事をここでは引用していきたいと思います。

家でテレビを見ていたとき、オネエ言葉のタレントが登場した。母が言った。「あらやだ、気持ち悪い。あなたはこうなってはだめよ」。当時、中学生だった星賢人さん(28)は家を飛び出し、インターネットカフェで夜を過ごした。

自分が好きになる対象が男性だと気づいたのは、中学に入ったころ。「女々しい」とからかわれ、いじめられ、不登校になった。家にも居場所がなくなって、初めて親友にカミングアウトした。「『おまえはおまえだろ』と言われて。40人いるクラスに居場所がなくても、世界には認めてくれる人もいるんだと実感がわきました」

日経電子版

自身の強烈な原体験から、社会のために立ち上がる決断をした星さん。日本初のLGBT向け求人サイト「JobRainbow(ジョブレインボー)」を運営しています。きっかけとなったのは外資系企業のインターンに参加した際に経験した「社内にLGBTサークルもあり、予算が割かれ、多様な価値観が絡み合ってイノベーションが生まれていた。」状況でした。CEOみずからが真っ先にダイバーシティーを掲げ、事業が急速に好転していく様子をみて危機感を覚えたそうです。

1年半ほど前に、このような記事を書きました。ちょうど東証のガバナンスコードが改訂される直前で、その中に「中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保」が求められることなどを紹介しています。

米マッキンゼー・アンド・カンパニーは20年、経営陣の民族的・文化的な多様性を分析し、上位4分の1の企業は下位4分の1より収益性が36%高いという調査結果を発表しました。つまり、多様性の確保はすでに経営の中核になってきており、収益向上のためには必要不可欠なものであることがわかります。

また、多様性というのはあらゆる「ちがい」に適切に配慮するということに他なりません。近年、人が知らぬ間に持っている「無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)」を認知することの重要性が語られています。

多様性とは、もちろん性自認・性的指向だけを指すものではない。ジョブレインボーは今、ベジタリアンや宗教、車いす利用などにタグの種類を広げている。「LGBTはダイバーシティーを考える起点になるんです」と星さんは言う。一見しただけでは分からない「深層的な差異」に意識的になるからだ。

その言葉の意味が分かる実例が、愛知県瀬戸市にある。ジョブレインボーを利用する企業のひとつ、大橋運輸だ。自動車部品の輸送などを手掛ける同社は、十数年前まで絵に描いたような男性職場だった。それが今、2割を女性、1割を高齢者、1割を外国人、約8%を障害者と性的少数者が占める。

日経電子版

ある集団の中でマイノリティーになった経験を持つことは、お互いのマイノリティー性を認めるきっかけになるでしょう。例えば、地方から東京に出てきたときに感じた疎外感、海外に旅行にいったときに誰も日本語を理解してくれないときに感じた不安、スーツの人ばかりの会食にすごくカジュアルな服装で参加してしまったときのバツの悪さ等々。多くの方が経験しうる体験も実はマイノリティーを理解する一助になるでしょう。

まず気づくこと。そして認めること。どんな人も安心して働ける社会になることは、ひいては経済の活性化につながっていくと信じています。

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タイトル画像提供:lonesomebunny / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #NIKKEI

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