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国際女性デーに考える、ダイバーシティとテクノロジー(メタバース/AI)の可能性

お疲れ様です。メタバースクリエイターズ若宮です。

今日は国際女性デーですね。
(昨年の国際女性デーに寄せての記事はこちら↓)

先週今週と、ジェンダーやダイバーシティについての登壇が続きまして、イベント登壇を通じて改めて感じた、ダイバーシティとテクノロジーの関係について書いてみたいと思います。チェケラ!


ダイバースとメタバース

国際女性デーをめがけて登壇の機会をいただくことが色々ありました。その中のひとつで先週、アンダーソン・毛利・友常法律事務所のイベントでジェンダーギャップについてお話する機会を得ました。

今回の登壇は「メタバースの人」ではなく「ジェンダーの人」としての依頼だったのですが、実はアンダーソン・毛利・友常法律事務所(以下「AMTさん」)とはメタバースクリエイターズでここ一年くらい「メタバース支店」の開設でご一緒しています。

法律事務所、しかも「日本の四大法律事務所」と言われるくらい大きな事務所なので、正直だいぶコンサバなイメージがあったのですが、元プロのeスポーツ選手の方やカードゲームを開発している方などユニークな弁護士さんも多く、弁護士のみなさんもアバターで活動されるなど、想像以上に柔軟でご一緒していて楽しいです。

弁護士事務所の中ではメタバースにもいち早く大手町のモダンな自社オフィスをメタバース上に再現した「メタバース支店」をつくり、そこでVRChatなどのクリエイターの法律相談会を開催されたりしています。


僕自身、もう最近プロフィールもMTGも全部シロクマでやってるくらいシロクマになっていますし、せっかくだからメタバース支店を活用してやりましょう、というところから、弁護士さんたちも全員アバター、「何ならボイスチェンジャーもして物理性別や誰かがわからない感じでやれたら本音で話しやすいかもですね!」「それいいですね!」「やりましょう!」という感じでとんとんと話が進み、「アバター&ボイチェン」での先進的なジェンダーイベントに…!(このあたりスピード感もすごいw)

で、やってみたら、アバターでのジェンダートークが想像以上に面白かった

①二項対立にならない「メタ」

アバターでのジェンダートークの面白かったポイントの一つはアバターを使うことによる「メタ(超越)」な感覚です。

そもそも、ジェンダーのイベントというとどうしても女性の参加者が多い傾向があります。(ここ一年くらいは男性の参加者も増えてきてとても良い変化だと思っているのですが)男性がなかなか参加しない理由として「おじさん」批判や非難が飛んでくるのではないかと心配する人も多いのですよね…。

とかくジェンダーの話では対立構造が生まれがちです。みんなで社会を変えていくために、女性は女性なりの立場から、男性は男性なりの立場から意見を言えることが大事なのですが、率直に意見をいうと互いに誤解を招くこともあります。

(僕自身、以前ジェンダーに関する取材を受けた際に言ったことが、批判を受けたこともあります。(まあこれは記事が少し煽り気味のタイトルになっていたこともあるのですが…)


女性か・男性か・ではなく、みんなで・みんなが・可能性を発揮できる社会を目指すのが大事だと思っていて、ジェンダーに関する議論はどちらかの権利を主張し他方を批判するためではなく、お互いの立場と意見をリスペクトしつつ、社会全体としてアップデートしていくほうがいいと思っているのですが、とはいっても、こういう時、物理属性が邪魔をしてしまうことがあります。


僕はけっこう女性が多数派の場にいることが多くそれに慣れているのですが、でも「男性って」とか「おじさんって」と言われた時に、つい自分が物理身体として・男性の身体でいると、なんか男性への批判に対してなにか反論したくなってしまうことも実はあるんですね…。


そういうのにちょっともう疲れてシロクマになった、というのもあるのですがw、アバターで性別を変えていたり超越していると自分の物理身体の属性からいい意味で「引き離す」ことができて、客観的に話すことができるというのがある気がします。

今回のイベントでも、物理性別と関係なく、狼とかハンバーガーみたいな種を越えた存在になっていたことで、物理的な性別を超えた対話が出来た感覚がありました。

イベント後の登壇者記念撮影(みんな元気)


撮影ミスで中の人(?)が抜けた後でこうなった…


「di・verse」というのは語義的に「別々に・向かう」という意味ですが、それは時に分断を生んでしまうこともあります、「男性陣」「女性陣」みたいに。でもアバターだと関係なく、「meta・verse」はそれを超越し、属性と一層ちがうレイヤーで話せる感覚。中身(?)が女性でも男性でもいったんそれを置いて、それってそうだよね、こうしていけるといいかもね、と物理だと対立しがちな話題も、俯瞰的に、より客観的に話し合えた感じがあったんですね。

②プロテウス効果 「誰かの靴を履いてみる」

あと、アバターの「プロテウス効果」も感じました。

アバターやボイスチェンジャーをつかって、外見だけでなく声まで変わると、それに合わせて行動や考え方もだんだん変わってくるんですよね。自分も含めて、これはメタバースを生活空間としていると多くの人が経験していることで、逆に言うと男性の男性的ふるまいも、物理アバターが男性だからっていうプロテウス効果じゃないかと思います。


ダイバーシティを考えるうえでは「誰かの視点や体験」がとても重要です。ブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』では「誰かの靴を履いてみる」と表現されていましたが、

異なる立場や視点をもつ大事なのですが、左脳だけではいけないところがあり、それを「体験」することがアートやフィクションの重要な機能だとも思います。やってみるとわかるのですが、アバターやボイスチェンジャーで「いつもとちがう存在」になることは擬似的にですが、しかしかなりの実感を持って「他者の靴を履いてみる」体験なのです。

そもそもメタバースの世界で半分くらい生活していると、物理身体の属性があまり重要ではなくなってくる感覚があります。

物理世界ではなぜか、見た目や年齢・国籍など、「そもそも自分が選んだわけでもない偶然の属性」に人生が左右されがちです。これはメタバースで言えば、アバターを強制的に決められ、一度決まったら変更することができないみたいな感じです。いやあああああああああああああ!!!

ルッキズムはいまだに評価にも結構影響していて、その制約を開放しつつあるのがVTuberだと思うのですが、とにかく物理属性を離れたり、時々入れ替えたりしてみられることで、物理属性への固着が薄まり、ダイバーシティが進むのではという気がします。


AIとダイバーシティ

もう一つ、今日のデロイトトーマツさんのイベントでも感じたことがありました。

「雪が降ってよかったですね」って言われたw

登壇者の一人にAIの専門家の松本さんという方(左上)がいらしたのですが、AIとダイバーシティの話になりました。


AIはしばしば、過去のデータを学習するためにバイアスが存在することが問題になっています。

米通信社ブルームバーグの報道でも、米国の裁判官の34%が女性なのに対し、「裁判官」というキーワードでAIが生成した画像のうち女性はたった3%になるなど、生成AIが人間以上に性別や人種に強い偏見を示すことが指摘されている。

「生成AI」とはいっても、LLM AIはこれまでの人間の言論を学習しているので、いわばAIは「過去」を食べてそれを「再生産」しているのですよね。しかも人間の数百倍のスピードで生成できるので、その傾向をamplifyしてしまいます。

テクノロジーは便利ですし、人間の能力を拡張します。しかしその使い方によっては差別や偏見を再生産するどころか、数百倍に拡大しかねないわけです。


こうしたAIに関する懸念もある一方で、興味深かったのは「AIは多様性を学習することもできる」ということです。

松本さんはDigital Matsumotoというご本人のデータを学習させたデジタルツインをつくって彼(?)が記事も書いているのですが、

generalな学習AIだけでなくこのようにとても個人的な言説のみを学習することが出来ます(周りの起業家も「◯◯GPT」をつくっている人が結構います)。なので、女性や若い人、障害者の方など特定のセグメントの見解だけをそれぞれ抽出し、モデルとして学習することで、多様なAIモデルを作ることもできるのです。

こうしたAIをつかって、なにかの施策を検討する時に、こうしたさまざまなモデルから意見をもらう。そうすると「でも、これだとxxxみたいなことが不便だなという懸念があります」みたいな指摘がもらえるわけです。


人間って万能のようでAI以上に過去志向な部分もあります。なかなか自分のバイアスに気づきませんし、自分が美徳として教育され学んできた価値観の外から思考する(out-of-the-box)ことは難しいものです。


しかし「文字」が思考を外在化させ、それによって抽象的な思考を大きく進化させたように、「技術」を使うことで人間は自らの限界を超えることもできます。

AIによるバイアス強化の事例にみたように、テクノロジーは無意識に使うとその線形性と効率性によって過去を再生産・拡大しかねません。しかし一方で使いようによっては、テクノロジーは眼の前の制限や事象への拘泥から引き離し「過去」のバイアスから解き放つこともできるのです。

過ぎればイカロスのようにもなりますが、レッドブルは翼も授けます。


これまた現状の偏りによるのですが、いまのところテクノロジーは男性に専有されがちな状況もあります。だからこそテクノロジーの開発者や使い手に多様性が増えると、加テクノロジーがダイバーシティをさらに加速させていくのではないかと思います。


というわけで国際女性デーによせての、テクノロジーのお話でした。

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