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2020年版『学びと仕事に役立つデジタルツール調査』 〜ビデオ会議、コラボ、エンゲージメント、ホワイトボード・ツールの躍進

英国在住のコンサルタントのジェーン・ハート( Jane Hart)氏が2007年から毎年行っている公開アンケートにより選ばれる「Top Tools for Learning」の2020年版が今週リリースされました。個人によるプロジェクトですが、過去14年間、毎年定点観測的に開催され、今年も45カ国、2,369人からの投票、推薦が寄せられたとのことです。

時代の流れとともに必要とされるツール、流行っているアプリも変化していくなかで、こうした定点観測はとても貴重な資料的価値があるのではないかと思います。特に今年は新型コロナウィルスの感染拡大により、学びや仕事、プライベートにおいても「新しい常識:ニューノーマル」が求められるようになり、どのような変化が起きているか、とても注目度の高い結果となっています。以下概要と気になった調査結果について、簡単にご紹介したいと思います。

【1】2020年度版のトップ10のツールは?
今年のトップ10も定番のツールがランクインして、首位は動画共有サイトのYouTubeですが、『ツール・オブ・ザ・イヤー』として8ランク上昇して2位にZoomが位置しているのは多くの人が頷くのではないでしょうか。「Zoom」を運営する米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの直近の決算発表では2020年5~7月期の売上高が前年同期比4.6倍と急成長を裏付け、その定着ぶりが伺えます。

その他に注目に値するのがコラボレーションツールのマイクロソフトTeams、チャットサービスのWhatsAppの躍進です。その他、Linkedin が初めてTwitterの順位を上回ったことも印象的です。

改めてお伝えするまでもないですが、あくまで調査対象国は英国、米国など、英語圏の国と思われますので日本国内での認識とは少し違和感がある部分もあるかもしれません。とはいえ、参考になる部分もあるのではないかと思い、今回も昨年に続きご紹介することにしました。

1 →    YouTube
2 ↗8  Zoom
3 ↘ 1  Google検索 PowerPoint
4 ↘ 1  PowerPoint
5 ↗6  Microsoft Teams
6 ↗1   Word
7 ↘ 1  Google Docs & Drive
8 ↘3   LinkedIn
9 ↘5   Twitter
10↗4  WhatsApp

*↗→↘は前年比

当初教育分野の方を中心に投票が行われていた『The Top Tools for Learning』ですが、今年の調査に対する回答者の59%は企業、ビジネス、非営利団体からの回答で、41%が教育関係者でした。ただし、K12の初等教育関係者は6%に過ぎないため、今回の調査結果は高等教育や成人教育の状況を主に反映している、とのことです。

トップ200ツールのインフォグラフィック(出典:The Top Tools for Learning 2020 Analysis )

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ジェーン・ハート氏による調査結果の分析から注目の内容をいくつか抜粋してみたいと思います。

・チャットやビデオ会議ツールの躍進
2位のZoomのみならず、Google Meetは77位から16位へ、WhatsAppは14位から10位へ、Wherebyは79位から45位に、その他38位のFlipgrid、109位に新しくランク入りしたオープンソースのJitsi Meetなど、ビデオ会話ツールの躍進が目立ちます。

・コラボレーションツールの健闘
マイクロソフトのライバルであるSlackは順位を5つ下げ17位、Workplace by Facebookは43位から103位に下がったものの、タスク管理ツールのTrelloは8つ順位を上げ20位、生産性向上コラボレーション・サービスのAsanaもランクに復活し138位、その他Clickupという新しいツールも124位に新規ランクインしています。

・ビジュアルコラボレーションのためのオンラインホワイトボード
印象的な新しいカテゴリーとして挙げられているのがいずれも初登場のMural(66位)、Miro(75位)、MS(Microsoft) Whiteboard(128位)の3つの新しいツールで、Jamboard(Google G-suite |ランクを11上げて102位)に加わり、いずれもマインドマップを新たなレベルに引き上げていると指摘されています。グラフィック・デザイン・プラットフォームのCanvaも34位から18位に躍進しています。

・ライブ・エンゲージメント・ツール
ほとんどのツールが、純粋に教室やイベントのエンゲージメントツールから、リモートミーティングやリモートティーチングのエンゲージメントをサポートするためのツールに生まれ変わったことも紹介されています。ゲーム形式で簡単なクイズ作成を可能にするKahootはランクを3つ下げたものの、24位でリストのトップに立っています。他のツールもリストの順位を大きく押し上げています。26位のMentimeterはランク15の上昇 、62位のQuizizzはランク115の上昇、88位のSocrativeはランク31の上昇となってます。リストには含まれてませんがオンラインでQAをやり取りできるslidoなどもこのカテゴリに入ってくると思われます。

・オンラインコースプラットフォームの順位低下
LinkedIn Learningは最も人気のあるオンラインコースプラットフォームであることに変わりはありませんが(ランクを9下げて22位)、ほぼすべての大手オンラインコースプラットフォームは順位を下げていることが分かります。*個人的には、様々なメディアでこうしたMOOCプラットフォームの登録者数、利用者数が急増している報道もあるだけにこの下落傾向の理由は少し腹落ちしにくいと感じます。
Udemy[54位  25ランク下落] 、Coursera[57位  4ランク下落]、Udacity[133位  18ランク下落]、FutureLearn[135位  32ランク下落]。

その他分析ページには「個人としての学び」「職場での学び」、「教育現場での学び」に役立つツールがカテゴリー別に別途ランキングされているので、興味のある方はぜひそちらも併せてご確認ください。
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最後に個人的に意外だったのは、注目しているNotionRoam Researchなどはまだランクインしておらず、まだまだアーリーアダプター対象のサービスであることを感じました。その他、個人的にとても気に入っている翻訳サービスのDeepLは123位から60位へと大きくランクが上昇していることに納得です。

過去ご紹介記事
・アウトプットのためのネットワーク化された思考とアイディアの情報整理メモツール〜Roam Research(ロームリサーチ)
・リモートワーク時代がもたらす新しい習慣とデジタルツール活用〜メモ・コラボレーションツールのNotion(ノーション)
・コロナ時代のグローバルな情報収集・発信に役立つ機械翻訳ツール:DeepL(ディープ・エル)

みなさんが愛用しているにも関わらずランクインしていないツールなどはありましたでしょうか?「ニューノーマル」が象徴的な2020年ですが、変化のスピードが本当に早いと感じます。来年にはどのようなツール、サービスが登場するのか、とても楽しみです。

以上、国内での利用と比べると馴染みのないサービスも含まれているかもしれませんが、日々のデジタルライフをほんの少し点検・改善する際に参考にしていただけたら幸いです。

市川裕康 Twitter : @SocialCompany

Photo by Gabriel Benois on Unsplash

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