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号令かかれど進まぬリスキリング キャリア自律の難路にどう向き合うか

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

街の喧騒を感じつつある昨今、いよいよ年末感が出てきました。コロナ禍を経て忘年会なども完全に戻った感があり、昨日は仕事納め前の最後の金曜日なのか繁華街で連れ立って歩く姿をたくさん見ました。

コロナ禍ではライフスタイルや仕事の仕方が大きく変わりました。今年は出社回帰など以前に戻っていく動きも見られましたが、リモート会議が一般的になるなど完全に戻ったというよりは新しいやり方・選択肢が増えたという結果に落ち着いたのではないでしょうか。

また、この流れの中で自身の働き方について再考する動きもありました。欧米では「大退職時代」や「静かな退職」という言葉が生まれ、最近では企業主体の「静かな解雇」というトピックが話題になっています。

コロナ禍では大退職時代とともに、「静かな退職」という言葉が米労働市場のはやり言葉となった。静かな退職は仕事への熱意が低く、最低限の仕事しかしないことを指すが、最近の米メディアでは「静かな解雇」が話題となっている。

静かな解雇は再配置や職務の見直しなどで給与の引き下げが伴う。職位を下げたり仕事の要求水準を引き上げたりすることもあるという。従業員は会社に残れるものの、本当の解雇への恐怖とは隣り合わせだ。労働需給が緩むとともに、主導権が働き手から雇用主へと移りつつあることを象徴する現象ともいえる。

日経電子版

日本においても転職希望者数は堅調な伸びを見せており、雇用の流動化と賃上げを果たすという岸田政府の政策もあり今後もトレンドは変わらないと予測しています。しかしながら、個々人のキャリア戦略はまだ途上であり、今後より一層個人としての「キャリア自律」をどう実現するのかが問われてくるでしょう。

リクルートワークス研究所は15歳以上の約5万人を対象にした「全国就業実態パネル調査」を2016年から毎年実施。その調査結果のデータをもとに同研究所が転職の実態を分析した。

ある年に転職を希望していた就業者のうち、翌年までに転職していなかった人は、時期によって違いはあるが83〜87%と大部分を占めた。転職希望者のうち実際に転職に向けて活動をしていた人(「転職活動者」)のなかで、翌年までに転職をしていなかった人の割合も60%前後にのぼった。

22年12月時点の転職活動者(就業者の15.1%)について、まだ転職していない理由をみると、最も多かったのは「自分にあった仕事がわからない」で14.2%あった。自分に向いた仕事がみえてこない、自分のやりたい仕事がみつからないという状況が、転職活動を前に進みにくくしている。ワークス研究所は「転職迷子」と表現する。

日経電子版

「転職迷子」のことを、わたしは「転職もやもや層」と表現していました。どちらでもいいのですが、問題なのは中高年であっても一定数の方が「自分に合った仕事がわからない」と感じていることです。先のリクルートワークス研究所の調査では、35〜44歳で13.6%、45〜54歳では10.6%、55〜64歳でも8.7%にのぼると報告しています。

世の中では「社会を変えたい!」「これが私の天職!」などというキラキラストーリーが目立ちます。多くの方々もこのような記事を読み、羨望の眼差しを向けながらも「でも自分なんて、、、特にやりたいこともないんだよな」と自省することがあるかもしれません。

そうなってしまう一因は、とにかく正解のみを求める従来の日本の教育システムにあると思っています。これをどうするかは別の機会に論じるとして、重要なのは個人の意思決定に「正解」はないということです。キャリア戦略も同じで、人生の多くの時間を過ごす「働く」という時間。これをどうするかは自分の気持ちが一番大切であり、そこに収入などの考慮すべき変数が加味されます。えてしてこれらのパラメーターはトレードオフの関係になったりしますので(労働時間が長くなれば収入が増えるetc.)、これをどう選択するのかが戦略です。

一方で、就職をするときに決めた戦略が一生続くものでもありません。向こう40年の戦略を立てて実行するというのは、どんなに優秀な経営者でも不可能に近い話ですので、まずは向こう5年、10年くらいのスパンで考えてみることをおすすめします。私自身、次の10年なにをするかというのを数年前くらいからなんとなく考え始めて、ときが来たら実行するというのを繰り返しているだけです。ただ、なんとなくでも考えるというのが大事で、それによっていまの強みや弱みが把握でき、足りないものは勉強して補う気になります。これこそがいま盛んに言われているリスキリングです。

ぼんやりでもよいので進むべき道が見えないと、何を学べばいいのかもわかりません。年末年始で振り返るにはよい時期。ぜひ自身のキャリア戦略について考えてみる機会にしてはいかがでしょうか。


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タイトル画像提供:タカス / PIXTA(ピクスタ)


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