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大転職時代の始まり。ポストコロナで増加した「転職もやもや層」が動き出す

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

本コラムではキャリアや転職関連のトピックが多めだと思いますが、個人的には引き続き追っていきたいテーマです。『転職2.0』を上梓したのが約3年半前。コロナ禍に見舞われ欧米では「大退職時代」と呼ばれるムーブメントが起こりました。そのような兆候を見て、これは日本もついに大きな動きになるかもしれないと思い、執筆を始めました。以前より日本はOECD諸国の中でも生産性の低さでは群を抜いており、人材流動性の低さがその一因だと考えていたからです。

I Quit.(私は辞めた)――。米国のSNS(交流サイト)で「退職宣言」があふれている。新型コロナウイルス禍を経て現在の働き方に矛盾を感じ、転職を考える人が増えているためだ。コロナ禍が促す人材の流動化は生産性向上やイノベーションの創出を後押しすることになりそうだ

ニューヨーク在住で投資銀行などに勤めていたビンセント・チャンさん(26)は2020年秋に独立した。金融知識を生かして個人投資家向けに教材を作る事業を始め、今では収入が社員時代を上回る。「年収12万ドルの仕事を辞めた理由」を語った動画の再生は170万回を超え、転職を考える人たちの共感を呼ぶ。

日経電子版

コロナ禍が過ぎた今、どうなったのでしょうか。一言で言えば、転職希望者数はうなぎのぼりに増えましたが、実際に転職した(実行した)人は例年並み、横ばいで推移しています。

転職が当たり前になりつつある。総務省によると2022年に転職を希望した人の数は968万人と過去最高を記録。10年で2割増え、23年は1000万人超えが予想される。実際に転職した人の数は303万人と新型コロナウイルス禍前の19年(353万人)に迫る。リクルートの藤井薫HR統括編集長は「転職者数は23年以降も着実に増える」と市場拡大に手応えを示す。

なぜ、いま転職が広がるのか。背景にあるのが構造化する人手不足だ。日銀の9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、人手が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いた雇用人員判断DIが全産業でマイナス33となった。リーマン・ショック前の好景気にあった07年末(マイナス10)よりマイナス幅は格段に大きい。

リクルートの藤井氏は「人手不足が慢性化し、企業が過去に見ないほど中途採用に積極的」と言う。団塊世代の大量退職後に少子化も加速し、既存の仕事を回すのにも人が足りない。働き方改革の浸透で、雇用を増やす必要もある。「DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるため社外から人材を獲得する動きも活発だ」(藤井氏)

日経電子版

このギャップ、転職希望者数ー転職者数のことを、私は勝手に「転職もやもや層」と名付けています。希望したけどなんらかの理由により転職しなかったということで、きっと自身のキャリアについてもやもやしているに違いないと思うからです。現在ではこのもやもや層はざっくり1000万人ー300万人。700万人あまりに上っています。

特にミドル層以上については年功序列賃金の影響で、転職できるけど年収がダウンするということが多く見聞きされました。実際そのような事例が多かったと思いますが、直近ではだいぶ景色が変わっています。転職後「年収が上がった」人の割合は39.5%と「下がった」(18.6%)を大きく上回っています(マイナビ:22年実績調査)。20〜50代の男女全ての層で上がった人の割合のほうが多かったとのことです。

また、流動性に関連して話題にあがるのが、いわゆる「出戻り」問題です。転職を組織への「裏切り」と捉える風潮と相まって、戻ってくることも許さないという組織文化です。この課題については以前以下の記事を書きました。

出戻り禁止文化の根っこは何かというと、組織に居続けるよりも一旦市場に出たほうが給与が上がりやすいという点です。内部の昇給昇格はとても緩やかですが、一度市場に出れば時価で評価されます。これが「転職後に年収が上がる」パターンです。日本の中途採用での報酬の提示は、前職給与に依存することが多いです。なので、戻ってくる場合もこのスタンダードが適用されることになり、なぜか組織に忠誠を誓って頑張っていたプロパー社員よりも、一度「裏切った」人のほうが報酬面で報われてしまう。これがある種のモラルハザードとなり、経営者が忌み嫌うものとなりました。

おそらくここに「賃上げ」の機運があります。優秀な人材をつなぎとめておくには、市場並みの報酬をもって報わなくてはならないということです。

政府が強く進めている「三位一体の労働市場改革」のひとつに、円滑な労働移動があります。ここで指摘したような根っこの課題が解決できるかが、改革の実現の鍵となるでしょう。


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タイトル画像提供:takeuchi masato / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #NIKKEI

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