大転職時代の始まり。ポストコロナで増加した「転職もやもや層」が動き出す
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
本コラムではキャリアや転職関連のトピックが多めだと思いますが、個人的には引き続き追っていきたいテーマです。『転職2.0』を上梓したのが約3年半前。コロナ禍に見舞われ欧米では「大退職時代」と呼ばれるムーブメントが起こりました。そのような兆候を見て、これは日本もついに大きな動きになるかもしれないと思い、執筆を始めました。以前より日本はOECD諸国の中でも生産性の低さでは群を抜いており、人材流動性の低さがその一因だと考えていたからです。
コロナ禍が過ぎた今、どうなったのでしょうか。一言で言えば、転職希望者数はうなぎのぼりに増えましたが、実際に転職した(実行した)人は例年並み、横ばいで推移しています。
このギャップ、転職希望者数ー転職者数のことを、私は勝手に「転職もやもや層」と名付けています。希望したけどなんらかの理由により転職しなかったということで、きっと自身のキャリアについてもやもやしているに違いないと思うからです。現在ではこのもやもや層はざっくり1000万人ー300万人。700万人あまりに上っています。
特にミドル層以上については年功序列賃金の影響で、転職できるけど年収がダウンするということが多く見聞きされました。実際そのような事例が多かったと思いますが、直近ではだいぶ景色が変わっています。転職後「年収が上がった」人の割合は39.5%と「下がった」(18.6%)を大きく上回っています(マイナビ:22年実績調査)。20〜50代の男女全ての層で上がった人の割合のほうが多かったとのことです。
また、流動性に関連して話題にあがるのが、いわゆる「出戻り」問題です。転職を組織への「裏切り」と捉える風潮と相まって、戻ってくることも許さないという組織文化です。この課題については以前以下の記事を書きました。
出戻り禁止文化の根っこは何かというと、組織に居続けるよりも一旦市場に出たほうが給与が上がりやすいという点です。内部の昇給昇格はとても緩やかですが、一度市場に出れば時価で評価されます。これが「転職後に年収が上がる」パターンです。日本の中途採用での報酬の提示は、前職給与に依存することが多いです。なので、戻ってくる場合もこのスタンダードが適用されることになり、なぜか組織に忠誠を誓って頑張っていたプロパー社員よりも、一度「裏切った」人のほうが報酬面で報われてしまう。これがある種のモラルハザードとなり、経営者が忌み嫌うものとなりました。
おそらくここに「賃上げ」の機運があります。優秀な人材をつなぎとめておくには、市場並みの報酬をもって報わなくてはならないということです。
政府が強く進めている「三位一体の労働市場改革」のひとつに、円滑な労働移動があります。ここで指摘したような根っこの課題が解決できるかが、改革の実現の鍵となるでしょう。
みなさまからいただく「スキ」がものすごく嬉しいので、記事を読んで「へー」と思ったらぜひポチっとしていただけると飛び上がって喜びます!
タイトル画像提供:takeuchi masato / PIXTA(ピクスタ)