2023年、複業(副業)の重要トピックを総まとめ〜複業解禁から促進へ〜
株式会社Another works代表の大林です。複業したい個人と企業・自治体を繋ぐ総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営しております。
日経COMEMO KOLを拝命した2020年から毎年続けている1年の振り返りと次年度のトレンド予測。今回がシリーズ第4弾となります。
2023年を一文でまとめると、複業解禁から複業促進へ、大きくステージアップした1年でした。本記事では、押さえておくべき2023年の複業(副業)重要トピックを3つにまとめ、詳しく解説していきます。2024年の複業(副業)動向も予測していますので、最後までチェックお願いします。
▽2022年の複業(副業)まとめはこちら
複業前提でキャリアを考える時代へ。生まれるミドルシニアとの価値観の差分
2023年、大きくファクトとしても示されたのは若者世代、特にZ世代における複業浸透です。Z世代は、就職活動や第2新卒としての転職活動において、複業ができるか否かが判断軸の1つとなり、複業を視野に入れながら企業選びを進めています。
就活段階において副業に興味がある学生が7割を超えているというデータや25卒就活生の3人に1人は既に副業を視野に入れながら就活をしているというデータが実際に出てきています。日経電子版では、アメリカのZ世代の副業実施割合が53%と他世代と比べて多くの割合を締めているという興味深いニュースも出ていました。
2023年7月に放送されたテレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」では、番組内のニッポン経済のNEXTを探るコーナー「WBS NEXT」にて「Z世代の複業(副業)」というテーマが放送、私も複業推進企業を代表して出演させていただきました。これらからも、Z世代の複業への関心の高まりは一目瞭然です。
ここで企業に求められているのは複業解禁と複業がしやすい社内体制の構築です。もはや、複業を解禁しなければ人材が流出し、新卒・中途問わず厳しい採用市場を勝ち抜くことが難しくなっています。人材流出を恐れ複業を禁止し、閉鎖的な状態を作ることは人材確保の難易度を自ら上げているのです。
また、現行の企業体制では複業がしにくいことも事実です。独立行政法人 労働政策研究・研修機構の調査によれば、副業していることを本業の勤め先に知らせない理由の上位には「個人的なことで言いたくないから」「伝えることで、自身が不利益を被らないか心配だから」などが挙げられているそうです。(https://www.jil.go.jp/press/documents/20230519.pdf)
複業を反対されるのではないかと危惧し上司に言えない、暗黙の了解として複業は禁止状態にあるなどのケースが依然として多いでしょう。現在、管理職のポジションに多くついているミドルシニア層は終身雇用に慣れてきた世代。Z世代を中心とする若者層との大きな価値観の違いが浮き彫りとなってきており、2024年以降の課題であります。
複業(副業)人材の受け入れを国が後押しした1年
複業(副業)元年と呼ばれる2018年以来、モデル就業規則の改訂や副業・兼業ガイドラインの制定、2022年には複業(副業)を制限する場合の理由公表を要請する形で企業の複業(副業)解禁を後押しする動きが見られていました。
2023年はより具体的な議論が展開しており、10月に開催された経済に関する基本的かつ重要な政策に関する施策を推進する規制改革推進会議では、副業や兼業がしやすいよう労働時間に関する規制を緩めるなどの制度変更を視野に議論がされています。
また、2023年は複業(副業)受け入れ・送り出しをする企業への補助金というより1歩踏み込んだ国の支援が展開されました。経済産業省は「自社の従業員の複業(副業)を支援する企業が対象となる類型A副業・兼業送り出し型」と「複業人材を採用する企業が対象となる類型B副業・兼業受け入れ型」の2種類の補助体制を整え、最大で費用の50%が補助対象(上限金額等あり)となります。
ここで注目すべきは「複業(副業)人材の受け入れを国が補助金を通じて後押ししている」という点です。複業促進の動きは、個人のスキルアップ・自己実現だけを目的としているわけではありません。企業における人手不足解消、身近に迫る労働力人口の減少という社会課題の解決に直結する手立てとして注目されているのです。
行政が複業(外部人材)を活用するのが選択肢になった1年
そして、2023年最も動きがあったのが行政における複業(外部人材)登用です。日経電子版でも「行政の複業募集・登用」に関連した多くのニュースがありました。
弊社がご支援している行政も日本全国47都道府県110自治体を超え、実際に登用された複業(外部)人材は400ポジション以上です。これは全国の6%以上の自治体で行政が複業(外部人材)を登用した実績であり、行政課題の解決において1つの選択肢となったと言っても過言ではありません。
また、行政課題の中でも特に多いDX分野においては内閣府が新たに制度を新設しました。内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局は、デジタル専門人材派遣制度において「人材紹介型」を新設。行政と即戦力民間人材のマッチングを支援できる事業者を選定し、外部人材の力で行政DXを支えています。
これにより、従来課題となっていた自治体側が困難を極めていたDX人材に求める要件定義を採択事業者と共に実施し、最適なマッチングを促進することが可能となりました。
社会・経済情勢が大きく変化し、新たな行政課題が勃発し続ける現在、自治体と即戦力の複業(外部)人材の共創による課題解決はより浸透していくと確信しています。
ズバリ2024年の複業(副業)はどうなる?
ここまで2023年の複業(副業)重要トピックを3つにまとめてご紹介しました。Z世代を中心に複業がキャリアの選択肢の1つとして急速に浸透し、国や行政も複業(支援)を促進するという、解禁から促進へ、複業における考え方が大きくステージアップした1年となりました。
2024年は、複業に関する法整備が進む1年になると予測しています。2023年は、国が補助金をスタートし、複業の受け入れ・送り出しのリアルな情報が集まると同時に、複業の有用性を確認する期間でした。次のステップは制度設計、現行の法整備の見直しです。
2018年にモデル就業規則に副業・兼業が追記され、その後2回の改訂が行われましたが、大元の労働基準法や複業に関連する取り決めは現代に立脚していないものが多く残っています。先行してフリーランスに関わる制度の見直しが進んでおり、労災保険の加入対象者を拡大するというニュースは話題となりました。複業(副業)容認予定の企業が従業員数5,000名以上の大手企業で8割を超え、規模や地域を問わず複業採用が急拡大する現在、ニーズへの対応とリスクへの対策として法整備が求められるでしょう。
今後も日経電子版を通じて働き方の最新情報や未来予測を発信していきます。
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