コミュニケーションは「効率」と「つながり」を別軸で考える
ぼくたちオシロ社は、コミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」を開発・提供している。簡単に説明すると、コミュニティ運営を円滑にするシステムと知見をワンストップでサービスするのはもちろん、コミュニティ内にいる人と人が仲良くなれる仕組みを提供している会社だ。
ただ、そういうと「Slackなどのコミュニケーションツールとなにが違うの??」とよく質問される。
Slackはオシロ社でも活用していて、とても優れたプロダクトだ。しかし、それらとOSIROには大きな違いがある。今回はそのことについて説明していきたい。
Slackは効率的にコミュニケーションできるツールである
SlackもFacebookもLINEも多くのユーザーに利用されるコミュニケーションツールだ。OSIROもコミュニケーションをするツールだから、大枠では一緒ではある。
先日掲載した『オフィスの間取りが重要なように、「オンラインの間取り」も重要だ』でも書いたことだが、オシロ社でも利用しているSlackは、非常に優れた情報共有ツールだと思っている。ビジネス用のチャットツールの代表格といっていいだろう。
Slackはもともと、ゲーム開発会社タイニースペック社を共同経営していたバターフィールドさんが、ゲーム開発時に使用する社内の開発コミュニケーションを効率よくとるためのツールとして開発されたものだった。
しかし、そのような誕生秘話を持つSlackをいざ市場にリリースしてみると、爆発的な速度でユーザーを獲得してしまう。そしてついにはタイニースペック社はスラック・テクノロジーズに社名変更し、ゲーム会社からコミュニケーションツールの会社になってしまった。2021年にSalesforceが買収し、現在は同社のプロダクトになっているが、買収額は277億ドルだ。
ツールとしての品質の高さ、フロー情報の共有ツールとしての申し分のないプロダクト。実際に開発で使っているしリスペクトしかない。Salesforceが巨額の資金を投じて買収したのも頷ける。
OSIROが目指す「感情共有」ができるプロダクトとは?
では、OSIROはどう違うのか。それはやはり、開発思想の違いにある。
上述の通り、Slackはゲームを開発するために必要な情報共有のあり方、つまり業務をいかに高速化・効率化させるコミュニケーションを実現できるかを念頭に開発されている。そのため、業務で情報共有したり、フローなコミュニケーションを取るのに適していて、超効率化重視のプロダクトができている。
OSIROがどのような思想で生まれたのかというと、主眼をおくのは効率的な「情報共有」ではなく、持続的な「感情共有」の実現を開発思想としている。
オシロ社のミッションは「日本を芸術文化大国にする」。その実現のために、アーティストやクリエイターが持続的な活動を支援するために生まれたプロダクトだ。
アーティストやクリエイターは、当然毎月食べていくためのお金が必要になる。
しかし、お金だけあっても、活動は継続できない。これは自分自身アーティスト活動に終止符を打った原体験から感じたことでもある。自身の表現活動を心から応援しエールを贈り続けてもらうこともとても大切なのだ。そして、お金とエールの両方を継続的に受け取れるためには、応援者が点でバラバラではなく、応援者同士が仲良くなりそこが居場所となる必要がある。
「コミュニティ」は「インターネット」と同じぐらい広義な言葉だが、大別すると一人のコミュニティオーナーが一人ひとりとコミュニケーションをとる1対1(1:n)」的な関係と、オーナーだけではなくメンバー同士にもつながりが生まれて交流する(1:n:n)関係がある。
もちろん、フローとストックの情報を滑らかに共有できる機能や仕組みはつくりあげてきた。
しかし、ぼくたちオシロ社は、後者のメンバー同士も交流できる関係性が大事だと考えている。お互いの熱量や感情を分かち合う、つまり人と人が仲良くなって、お互いを認め合いながら絆を育んでいく居場所が、理想的な豊かなコミュニティの姿だと思っている。
コミュニケーションツールは「TPO」にあわせて選ぶべきだ
現代はとても便利な時代になった。その反面、人々が「孤独」に苛まれる時代にもなったと思う。人に頼らなくても生きていける幅が広がったのはいいものの、その代わりに助け合うことも、心を通わす機会も減っていっている。実際、孤独感という病は日本だけでなく、世界的に蔓延している。
上記記事は、現代の孤独感に焦点を当てつつも、人類が本能的に人とのつながりを求める理由を地域コミュニティを例にしながら説明しているとても興味深い記事だった。
以前投稿したnoteの記事に、『日本企業の強さの根源には「コミュニティシップ」がある』と書いた。日本は長寿大国でもあるが、それは法人であっても同様だ。会社と社員、そして社員同士のつながりがあるからこそ、企業は長く、強い経営基盤を築けたのではないか。という内容だ。
現代でも多くの企業が人材との「つながり」の必要性には気づいている。しかし、現代は従業員間のつながりを生む難易度は思った以上に上がっているといえる。だからこそ、近年オシロ社にお問い合わせいただくお客様には、アーティスト、クリエイターやブランドだけでなく、社内コミュニケーションを目的とした企業が増加している(詳細な背景や理由については下記リンクから)。
もちろん、業務には効率化が求められる。そういった点ではSlackが向いているし、先述したようにオシロ社でもSlackを使っている。同時に、オシロ社では自社でもOSIROを使い、「社内報」「日報」「部活動」「社内イベント」「社内ポイント」などひとつのツールで社内コミュニティを醸成している。
その実感として、ツールはTPOに合わせて選ぶべきだと思っている。オフィスにも家にも間取りがあり、ライフスタイル、様式、用途に合わせて最適な間取りをつくりあげていくように、オンラインコミュニケーションも効率化が求められる「場」とつながりを醸成する「場」での方法論は異なるのだ。