続「初音ミク」インパクトinドイツ
1月20日、ヴァーチャルシンガー「初音ミク」の公式コンサートがドイツのベルリンで開催されました。今回はその反響をまとめてみます。
欧州5都市を巡る今回のツアーではドイツ公演のロケーションとしてベルリンが選ばれました。「初音ミク」の欧州ツアーは今回で2度目。1年近く前の前回はケルンで公演が行われています。その時のもようは「『初音ミク』インパクトinドイツ」にまとめていますが、今回はその続きとして前回同様ドイツに絞って取り上げます。
会場となったベルリンのコンサートホール「verti music hall」は旧東ベルリン側で再開発が進むエリアでした。
地元ベルリンの公共放送RBBの報道によると、来場者は2000人程度だったそうです。ベルリンの日刊紙『ベルリナー・モルゲンポスト』は21日付の記事で公演のもようを報じました。
「ベルリンの初音ミク:ホログラムのスーパースター」というタイトルで、背景事情なども含めて紹介。「初音ミク現象」として、その存在や未来のポップ音楽について哲学的に考えるエッセイなどがあることに触れ、コンサートの来場者は必ずしも若者ばかりではなかったと指摘しました。
一方でRBBは「平面画面のエモーション」というタイトルで、キャラクターの動きは不自然でスクリーンを離れることはなく、舞台照明に邪魔されて3Dに見える効果もあまり感じられなかったと記者の落胆ぶりを伝えました。ファンが振るライトスティックについても、まるで軍隊のようだと表現しました。とくに曲間に演出が少なく長い無音状態が続き、まるで動画を見ていただけのようだとの印象を、奇怪なという意味を持つ「ビザール」という言葉で表現しました。
批判的な報道ですが、記者は「それほど」の大きな期待をもって取材したのではないかと筆者は考えます。つまり、ヴァーチャルでない歌手のコンサートと比較したのではないでしょうか。ヴァーチャルシンガーのコンサートはドイツではありえないというコラムが過去に存在したことを考えると、比較に対象となったことは大きな進歩といってよいかもしれません。
時間を少しさかのぼりましょう。コンサート開催前にもメディアでの報道が数点見られました。たいていは、開催を伝える宣伝に終始する内容でしたが、ドイツのアート・ライフスタイル雑誌『Monopol』がオンラインで公開した記事は一線を画していました。
コンサートの紹介ではなく「初音ミク」について考える内容で、実在する歌手のイメージと比較するなど、「初音ミク」がニッチな世界からよりメジャーに近づいているような、そんな印象を得ました。
また、SF作家の野尻抱介さんはツイッターで、この記事の最後に注目。
ファンは「初音ミク」を祝っているのではなく、次は自分の曲が来るかもしれないと期待するファン自身を祝いたいだけなのでは?というライターの指摘でした。
ドイツでボカロ楽曲を専門に扱うオンラインラジオ「VocalNexus」でメインパーソナリティーを担当するLuluさんは、オランダのアムステルダム公演を観たあとにツイッターで、「初音ミク」における音楽の多様性を指摘しました。
ミクエキスポ(「初音ミク」のコンサート名)はメタル、ポップ、サルサがひとつのそして同じバンドによって演奏され続けるコンサートです。
後日、Luluさんに聞いた情報によると、ドイツでは月曜日に開催されたベルリン公演ではなく、金曜日のアムステルダム公演に参加したファンも多かったそうです。
ドイツの「初音ミク」ファンはコンサートをどう受け止めたのでしょうか。ツイッターでは、2万本のピンでピクセルアートを作った人が見られました。コンサートの思い出にと作成したそうです。
ドイツの反響をまとめてみました。今回の欧州ツアーでは各都市の公演会場で、それぞれ地元メディアが取材を行っていたようです。気になる方はぜひ探してみてください。各国の報道を比較するとさらに面白い知見が得られるかもしれませんよ。
(2月1日追記)野尻抱介さんから引用ツイート部分の解釈内容について筆者とは異なる旨の説明がありましたので、改めて以下に紹介します。
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タイトル写真:「初音ミク」ベルリン公演で筆者が撮影。
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