「うちの会社、複業禁止だから」と、何もせずに思考停止していないでしょうか?(西村創一朗さん×岩崎由夏さん)〜「日経COMEMO」×「日本経済新聞」連動企画〜
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「うちの会社、複業禁止だから」と、何もせずに思考停止していないでしょうか?(西村創一朗さん×岩崎由夏さん)〜「日経COMEMO」×「日本経済新聞」連動企画〜

この記事は12月22日(火)に開催した、オンラインイベント「働き方innovation #07 複業を選ぶ前に知っておきたいこと」の内容をもとに作成しています。

「複業解禁」という言葉が飛び交う昨今、複業を始めたいと考える人は増えています。しかし、「自分に売れるスキルがあるのか?」「どうやって仕事を見つければいいのか?」「職務規定で複業を禁止している会社に所属している」などの様々な理由から、最初の一歩を踏み出すことができずにいる人も多いはずです。

そこで今回は「複業を始めたいけど一歩を踏み出せずにいる人」のために、複業で「二兎を追って二兎を得られる世の中を創る」をミッションに掲げる複業研究家の西村創一朗さんと、キャリアのSNS「YOUTRUST」の代表取締役の岩崎由夏さんにお話を伺いました。聞き手は、働き方について30年以上取材を続ける日経の石塚編集委員です。


■はじめに

ー石塚編集委員
今回のテーマは「複業を選ぶ前に知っておきたいこと」です。本日はご自身も複業の実践経験があり、現在はその支援やサービス提供も行なっているお2人、西村創一朗さんと岩崎由夏さんにお話を伺いたいと思います。

まず、今回のイベント開催にあたっての事前打ち合わせで、お2人が話していたことを動画にまとめましたので、こちらからご覧ください。

これまで、私たちのイベントでも複業を取り扱ったことはあり、比較的前向きな話題が多かったのですが、今回お話を伺うお2人は少し趣きが違っている感じです。複業について少し厳しい意見と感じた方もいらっしゃったかもしれません。

こちらに(イベント参加者の)皆さんの意識調査の結果があります。これについて、西村さんはどんな印象をもたれましたか?

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ー西村さん
会社の規定で複業できない方が4割いるわけですね。でも、2、3年前に同じ調査をすると、8割の人は会社が禁止しているのでできませんと答えていました。それを思えば、すでに実際に複業をされている方もいるわけですから、「変わってきたな」という印象です。

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ー岩崎さん
私もそう思います。「人の目が気になってできない」という人が結構いるのではないかと思いましたが、そういう方はかなり少ないのですね。時代が変わって、複業をすることがやましいことではなくなった、ということなのではないかと感じました。

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イベント参加者からの質問:うちの会社は複業禁止なのですが、複業に関心があります。就業規則は重視するべきですか?

ー石塚編集委員
これからの時代、自分のキャリアについてしっかりと先のことまで考えるのであれば、入社する段階で複業が認められている会社なのかどうかを見るべきなのでしょうか?

ー岩崎さん
私が以前お会いした転職希望者の方で、競合の会社の同じポジションへの転職を検討されている方がいました。「これって転職する必要あるんですか?」と聞くと、「こちらの会社は複業OKなので」と言っていました。転職の理由として「複業OKかどうか」を判断基準にする人が出てきたことには私も驚きましたが、これからは増えていくかもしれませんね。

■複業を始めるときに「壁」になること

ー石塚編集委員
先日まで日経COMEMOでは、「みなさんが考える複業の壁を教えてください!」という投稿募集企画が開催されていました。

西村さんは、複業に立ちはだかる「5つの壁」があると紹介してくださっていますが、これについて少し解説していただけますか?

ー西村さん
複業をする上で壁になることは主に5つあると思います。どの壁が最初に訪れるか?どの順番で訪れるか?ということは、その人によって違いますし、ケースバイケースだと思います。

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5つの中で、多くの人にとって大きな壁になるのが、2つ目の「意識の壁」と3つ目「スキルの壁」です。

「意識の壁」を乗り越えるためには「価値あるものを提供しないとお金がもらえない」ということを受け入れなければなりません。「労働した分のお金はちゃんとほしい」という意識では難しいわけです。

そして、「スキルの壁」については、日本の企業で行われている「ゼネラリスト」を育成する仕組みが原因の1つになっていると思います。1人の社員に様々な部署を経験させるという環境では、ゼネラリストは育っても、専門性の高いスキルを身につけたプロフェッショナルは育ちにくい。複業は高い専門性をもっていないとお金を稼ぎづらいので、この壁も超えることが難しくなります。

ー石塚編集委員
私には4つ目の「有料化の壁」がとても大きく見えます。西村さんも複業を始めたばかりの頃は、かなりの低価格な報酬で働いたと言っていましたが?

ー西村さん
複業と言ってもいろいろなビジネスモデルがあります。私の場合はWebメディアを作って広告収入を得るというビジネスモデルの複業をやっていたので、最初は読者も少なくお金にもなりませんでした。月40〜50時間程度の時間を使っていた中で、初めて発生した報酬は62円でした。

ただ、私は稼ぐことよりも、複業を通じで本業では得られない経験がほしいと思っていたので、苦にはなりませんでした。誰の手も借りずに自分の力で62円の価値を生み出すことができて、とてもうれしかったです。

ー石塚編集委員
岩崎さんもこの投稿募集企画に参加されていて、その中で「お小遣い稼ぎが目的なら複業はやらないほうがいい」という、少し厳しい意見を書いていらっしゃいますね。

ー岩崎さん
「複業の人を自分が採用する側だったら」ということを想像してもらうと一番いいと思いますが、企業が複業の人を採用するのは「プロを採用したい」と思っているからです。「自分のどのスキルが売れるのか?」「プロとして通用するのか?」ということを、しっかり考えてから複業に取り組まれるのがいいと思います。

イベント参加者からの質問:まさに「スキルの壁」を感じています。自分には何ができるのかわかりません。

ー岩崎さん
日本の企業はゼネラリストを育てているケースが多いとは思いますが、ゼネラリストを自覚している人にもいろいろあると思います。

私もかつては、自分はゼネラリストで、できることは何もないと感じていましたが、知人から「あなたは採用ができるじゃない」と言われて「確かに!」と思ったことがありました。

ゼネラリストを自称しつつも、何かしら切り売りできるスキルを経験しているのではないでしょうか。人事、経理、広報など、あなたがやったことのある仕事は、幅広く世の中にニーズがあるものです。

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■複業の経験によって自分の本業を充実させる

ー石塚編集委員
西村さんはなぜ複業を始めようと思ったのですか?

ー西村さん
複業を始める前、私は法人営業の仕事をしていましたが、本当にやりたいことは新規事業企画の仕事でした。やっていた仕事とやりたい仕事の間にギャップがあったんです。

会社を辞めて転職するとか独立するとか、そんなふうに大きなリスクをおかすことなくこのギャップを埋める方法はないかと考えて、思いついたのが複業でした。プライベートの時間を使って、新規事業企画の経験を積もうと考えました。

結果的にこの複業経験が会社に認められて、社内ヘッドハントで新規事業企画の部門に異動することができました。複業を始めた翌年には、自分の希望が叶いました。

ー石塚編集委員
岩崎さんも複業を経験されていますが、複業にはどんなメリットがあると思いますか?

ー岩崎さん
一番のメリットは、視界が広がって別の視点が手に入ることだと思います。

私は採用担当を長くやっていたので、採用のことはなんでもわかった気になっていました。ところが、知人から頼まれてベンチャー企業の採用を複業で手伝うと、採用のやり方がまったく違っていたんです。

採用に使うサービスや面接のやり方、選考フローなど、様々な部分で異なることが多く、「今までなんて狭い範囲を見て知った気になっていたのだろう」と気づけたことは、大きな学びでした。

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■自分のスキルがわからない人が複業を始めるには

ー石塚編集委員
自分のスキルがよくわからない人は、どんなことから始めればいいのでしょうか?

ー岩崎さん
例えば、働いてみたい会社に、どんな複業人材を求めているのか聞いてしまうのも一つの手です。それから、スキルシェアサービスを見てどんなスキルが売れているのか見てみる、ということもいいと思います。

自分のやりたいことやスキルが思いつかないならば、「ニーズから考える」という方法もあると思います。世間が求めているスキルを知ることで「それだったら私できるな」と気づけることもあると思います。

ー西村さん
複業には大きく分けて「プロ型」と「趣味型」があります。「プロ型」は本業での実績やスキルを活かせる複業で、「趣味型」は本業とは関係のないプライベートでやっていることを活かしてやる複業です。

「趣味型」の場合、例えば「アニメを見るのが好き」「漫画を読むのが好き」といった「消費型の趣味」がほとんどだと思いますが、消費量が膨大になるとそれが知識やデータとして自分の中に溜まるので、誰かの役に立つ情報やノウハウを提供できる「貢献型の趣味」に変えることができるケースがあります。

もし、本業を活かした複業が難しそうなら、自分の趣味の中から「貢献型の趣味」に変えられそうなものを探してみてください。人の役に立てる情報やノウハウを提供することは、複業になります。

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イベント参加者からの質問:自分のスキルをどうやって売り込めばいいのですか?

ー西村さん
まず、スキルシェアサービスに自分のスキルを出品する方法があると思います。今はたくさんサイトがありますから、そこで売られているスキルを調べて、自分に売れるスキルがあるかどうかを考えるところから始めてみてください。

それから、「この人の話を聞いてみたい!」と思ってもらえるような発信を、SNSやブログでしていくことも有効だと思います。お金をかけずに無料で発信できるサービスはたくさんありますから、そこでおもしろい話を紹介できれば、仕事の話が向こうからやってくることもあると思います。

イベント参加者からの質問:複業禁止の会社で隠れて複業することについて、どう思いますか?

ー岩崎さん
会社の規模にもよると思いますが、バレてしまったときの自分のキャリアへのリスクは考えたほうがいいと思います。例えば、小さな会社でワンマン社長が目を光らせているところで複業がバレてしまうと、社内での立場が悪くなることもあると思います。

ただ、隠れて複業することを推奨はしませんが、事実ベースでお話しすると、複業禁止の会社で隠れて複業をしている人はたくさんいます。「バレても罰せられるわけではない」と、強気の人たちも中にはいます。

ー石塚編集委員
このイベントは、日本経済新聞朝刊に隔週火曜日で掲載している「働き方innovation」面との連動企画で開催していますが、今日の紙面には会社に申告をせずに複業している人は約4割という数字が出ています。実際には結構いるということですね。

ー西村さん
私も、会社に隠れて複業することを推奨はしませんが、「複業禁止だから何もしない」と思考停止してしまうのはもったいないと思います。

複業で、何の実績もないところからお金を稼げるようになるまでには、ある程度時間がかかります。複業禁止でも、お金をもらわなければ会社から咎められることはないはずです。会社が複業解禁になったときに、すぐに換金したり有料化したりできるスキルを身につけることを、今から始めることを私はおすすめしています。

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■まとめ

ー西村さん
複業は筋トレと同じで、レクチャーを受けてたくさんの知識を入れても、実際にやってみなければ身になりません。どんなに小さなことでもいいので始めてみることだと思います。ちょっと勇気を出して動いてみるだけでも世界は変わってくるので、少しずつでも行動に移していただければと思います。

ー岩崎さん
私は、複業は一律に皆さんにおすすめするものだとは思っていません。でも、実際にやっていただくと、今日お話ししたことを「こういうことか!」と実感してもらえると思います。転職しなくても、1社では経験できないことを知れたり、別の視点が手に入ったり、同じ業界にコミュニティができたり、とてもいい時代になったと思っています。今日の話が、複業への一歩を踏み出すきっかけになればいいなと思います。

■プロフィール

西村創一朗さん
複業研究家/HRマーケター

株式会社HARES CEO
NPO法人ファザーリングジャパン 理事

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複業研究家/HRマーケター。2011年に株式会社リクルートキャリアに入社後、複業で「二兎を追って二兎を得られる世の中を創る」をミッションに株式会社HARES(ヘアーズ)を創業。しばらくは会社員兼経営者として活動後、2017年に独立。19歳で学生結婚し、現在3児(12歳/8歳/4歳)の父。NPO法人ファザーリング・ジャパンの最年少理事も務める。著書に『複業の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)がある。


岩崎由夏さん
株式会社YOUTRUST 代表取締役

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大阪大学理学部を卒業後、2012年に株式会社ディー・エヌ・エーに新卒入社。1年目より新卒採用、中途採用、経営管理を経験。その後、株式会社ペロリに出向し経営企画を担当。2017年12月に株式会社YOUTRUSTを設立。「信頼される人が報われる転職市場に」をミッションに掲げる。同社は2020年10月にユーザー数20,000名を突破し、MRRも前年同月比で630%となっている。


石塚由紀夫
日本経済新聞社 編集委員

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1988年日本経済新聞社入社。女性活躍推進やシニア雇用といったダイバーシティ(人材の多様化)、働き方改革など企業の人事戦略を 30年以上にわたり、取材・執筆。 2015年法政大学大学院MBA(経営学修士)取得。女性面編集長を経て現職。著書に「資生堂インパクト」「味の素『残業ゼロ』改革」(ともに日本経済新聞出版社)など。日経電子版有料会員向けにニューズレター「Workstyle2030」を毎週執筆中。


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