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20代で活躍できる企業の見極め方。良い会社には成長を促す“仕掛け”がある

皆さん、こんにちは。今回は「20代が活躍できる企業」について書かせていただきます。

「3年以内離職率3割」は、かなり前から言われていることですが、よくある離職理由の調査結果は、「イメージと違った」「仕事内容が合わなかった」「労働条件や労働環境が良くなかった」などです。ただ、このような結果からは、若手社員の本音は分かりません。

4月は新入社員が職場に配属される時期。希望にあふれた顔つきの新入社員だが、しばらくすると辞めてしまう人も多い。厚生労働省は新卒入社の社員が3年以内に離職する割合を毎年発表しているが、これを見ると過去25年間、離職率は33%前後で推移している。従業員1000人以上の大手企業の場合、3年以内の離職率は20.5%(2009年)から26.5%(17年)へと、毎年少しずつ上がってきている

企業側は、「仕事が合わなかった」と言われ、「そうですか、では仕方がないですね」と何も反省せず、何も改善しなければ、時代の流れや市場環境により、若手社員の離職に歯止めがきかなくなる一方です。

なぜ、入社前に「自分に合う」会社を見極められないのでしょうか。
自分に合う会社に入社するには、どのようなポイントを抑えておく必要があるのでしょうか。
そして、企業はどのように20代のキャリアと向き合っていけば良いのでしょうか。

■なぜ若手社員は3年以内に辞めていくのか

引用した記事には、
①「このままでは成長できない」という危機感があるから。
②「デジタル化が遅れ、仕事の進め方が非効率的」だから。
という、2つの理由がピックアップされていました。

①については、「変化を嫌い、旧態依然としている」「風通しが悪く、経営陣に現場の声が届かない」「挑戦する風土がなく、会社も成長していない」「成果を出しても評価されない」「若手の抜てきや成長機会がない」という声が多く、②については、「社内の情報共有の手法が古く、デジタルツールが活用されていない」「チャットツールが浸透していない分、それぞれの興味や関心がオープンではなく、個人が活躍できる環境ではない」とあります。

簡単に言うと、若手社員にとって「イケてる」環境ではない、ということです。若手社員にとっての「イケていない」企業の特徴は、以下のようなものではないかと思います。

  • 20代で責任あるポジションに就いている人が少ない(評価される、認められるのに時間がかかる)

  • 大きなチャンスが与えられず、仕事にやりがいを見出せない(仕事が面白いと感じない)

  • 頑張って成果を出しても評価されない(結果に関わらず、ある程度一律の幅でしか昇給しない)

  • 旧態依然とした企業風土で変化を避ける(これまでのやり方が正しいと疑わない)

  • 上司が上を見て仕事をしている(尊敬できる人が少ない、こうなりたいというロールモデルがいない)

  • 経営方針や企業理念、社風が合わない(皆が向かっている方向に共感できずシラケてしまう)

  • 能力やスキルを伸ばす機会に恵まれない(成長実感を得られず、このままでいいのか不安を覚える)

入社前に抱いていた、仕事内容や働きやすさ、仕事のやりがい、昇進や昇格のスピード、与えられる裁量の大きさ、社風などのイメージと、入社後に直面する実態とのギャップが大きければ大きいほど、「期待外れ」でショックを感じてしまう人が多いはずです。そのような人ほど実際に成長実感を持てず、仕事も楽しめず、目の前の現状に失望しながら、せっかく入った会社をすぐに離れることを決意していくのです。

これらのポイントは、本当に入社してからでないと分からないものなのでしょうか。

入社前に見極めるには、就職活動や転職活動の段階で、情報収集の仕方や、カジュアル面談などでの社員との接点の持ち方、選考段階で社員や人事とのコミュニケーションの仕方を工夫することで、十分見極められることも多々あるように思います。情報を多面的に見ることはもちろん、新卒採用であれば長期インターンシップなどで実際に会社の中に入ってみることが一番見極めの精度が高まるはずです。

入社前に自分に合う会社かどうかを見極める上で大事なステップは以下の通りです。

●自分の価値観や企業に求めることを明確にする
→自分が何を大事にしているのか、企業に何を求めるのかを明確化し、なぜそう思うのかまで言語化しておく
●「自分ができること」と「自分がやりたいこと」を整理する
→自分は今何ができる人間なのか、そしてその上で何を実現したいのかについて理解を深める
(※将来やりたいことだけを考える人が多いですが、自分の能力や強みを踏まえて考えられるとベターです。)
●自分の現時点の市場価値を冷静に把握する
→主観だけでなく、第三者のアドバイスをもらう
(※自分を過大評価している人も過小評価している人もどちらも存在します。)
●「一般的に良い企業」よりも「自分にとって良い企業」を探す
→「世の中的に評価されている企業」よりも「自分の軸で評価が高い企業」を見つける
●理想的な職場環境を定義すると同時に、許容範囲のラインも決めておく
→複数の条件のうち妥協できるポイントも抑えておく
(※全てが理想通りな完璧な職場環境はないと思った方が良いです。自分の許容ラインを決めておくことで、仮にマイナス面が見えてきても、自分でどう乗り越えるかを考えられます。)
●企業の社風やどのような社員が多いかは、必ず自分の目で確認する
→企業から提供されている情報にリアリティを持たせる
(※提供されている情報をそのまま鵜呑みにせずに、その真偽を確かめる必要があります。)


情報は検索すればたくさん出てきますが、表面的な情報だけに惑わされずに、自分の目で見て、自分の足を使って得た情報を適切に捉え、判断することが重要です。周囲に振り回されずに「自分で決める」ことが何より大事で、自分で決めたからには“覚悟”も“責任”も持つことがセットで求められます。

■若手社員が活躍しやすい企業の特徴とは

以前、こちらに働き方も価値観も多様化している今、「若手社員の離職率をいかに抑えるかをKPI化しなくてもいいのでは?」という記事を投稿しました。とはいえ、20代の若手社員にとって、彼らが能力を思う存分発揮してイキイキと働いてくれるような、働く場所として魅力のある会社にしていく努力は継続的に行っていく必要はあります。

具体的に「20代の若手社員が活躍しやすい企業の特徴」を挙げてみます。

1、年齢/性別/職種などに関係なく大きなチャンスがある
→多様な人材が活躍しているかが重要で、限られた属性の人だけにチャンスがまわってくる組織になっている場合は注意が必要です。
2、個人が主体性や責任感を持ち、意思決定の裁量権が与えられている
→指示を待っているだけの受け身の組織において、若手だけがどんどん意思決定できるような風土があるはずがありません。
3、社員が自走する仕組みがある
→大きな目標や役割を持ち、自由に達成に向けてアプローチできる組織は社員がイキイキと働ける傾向が強いです。
4、フラットな組織で自分の意志や意見が反映されやすい
→若手社員にも意見を求められる機会が多く、発言機会や提案機会が多い組織は、若手の活躍が顕著です。
5、経営層との接点が多く、分かりやすく期待をかけられている
→現場と経営のコミュニケーションが円滑に行われていると、誰にどのような強みや適性があるかを把握しやすく、新しい仕事や役割を提供しやすくなります。
6、成果に応じて、適切な報酬が得られる
→頑張った分や成果を出した分が、しっかり評価される評価制度になっているかは、仕事におけるやりがいや働きがいに直結し、社員の活躍度合にも当然影響します。
7、適切なフィードバックのループがまわっている
→できていることもできていないことも、他者からのフィードバックにより自分で理解・把握ができる機会が多ければ多いほど若手の成長環境が整っています。
8、組織のマジョリティが、個人だけでなく会社の成長を追求している
→個人の自己成長だけを追求している組織では、若手に限らず一体感が生まれにくく、同じ方向を向いて頑張る人が少ないと、結果的に個人の成果も組織の成果も小さくなっていきます。
9、応援される、承認される、サポートされるという心理的安全性が担保されている
→心理的な安心材料が豊富にある組織は、挑戦機会を生み出しやすく、社員の目標達成意欲や挑戦意欲が向上しやすいはずです。
10、割り振られる仕事ばかりではなく、自分で生み出す仕事が存在する
→特に若手社員のうちは、与えられる仕事の割合が多めになってしまいがちですが、そこから自分で仕事を生み出し、挑戦できる機会が潤沢にあるかどうかは、20代が活躍できる企業かそうでないかの大きな分かれ道です。

このような項目に該当する企業は、若手社員が何かに挑戦する機会が十分に提供され、そのチャンスを生かすために自ら考え、行動し、成果にコミットするような風土が自然と醸成されていくように思います。そしてそのチャレンジの結果、成功すればさらにモチベーションが高まり、失敗しても自分で決めたからこそ何がダメだったか反省し次につなげることができるのです。

結局重要な点は、社員の「やる気をいかに引き出すか」であり、それは企業の職場環境や風土、仕組み、ルール、制度、人事施策などの工夫によって、最大化できるものではないかと思います。

■若手社員の「やる気を引き出す」仕掛け

若手社員の多くがやる気に満ち溢れ、日々意欲的に働いている会社は、20代が活躍しやすい会社であることは明白です。「社員のやる気を引き出す」という観点で、具体的にどのような取り組みが必要なのか事例とともに考えていきます。

こちらの記事には、

社員が急増する組織をどう束ねれば成長できるのか――。若手の登用はやる気を生み出し、組織が一丸となって前進するきっかけになる。そこでは背伸びを後押しする仕掛けが重要だ。

とあります。その“仕掛け”として、

  • 本人の希望を重視・・・会社命令の異動がない

  • 全ての事業やポジションを社内公募・・・社内で自由に希望の部署に異動できる

  • 事業創出の機会・・・事業創造の社内コンテストを実施し、事業構想力を鍛えられる

  • 高待遇・・・ポジションと職務内容を踏まえ、転職した場合の市場価格を参考に報酬を決める

など、とことん本人の意志に寄り添い、社員のやる気を生み出す工夫をしているのです。

こちらの記事には、

社是にあたるような行動指針を練り上げて経営陣と議論したり、スキル向上策など幅広い働き方を発案したりと、社員が組織づくりのうえで大きな裁量を持つ。

とあり、

  • 全員参加型の経営・・・行動指針や働き方を社員の発案で策定する

  • 委員会の設置・・・働き方などの制度を議論し経営層に提案する

  • 社長の公募・・・新規事業を担う子会社を作り、事業責任者である社長を公募する

などと、社員に大きな「裁量権」を渡し、上意下達の組織ではなく、情報をオープン化した上で権限委譲を進めています。

このように、「社員のやる気を引き出す」仕掛けは様々ですが、

  • 会社の価値観や理念を徹底的に共有する、またその指針の策定段階から社員を巻き込む

  • 社員一人ひとりが会社を運営していると実感できる環境を整える

  • 社員の自律的なキャリア開発を支援する

  • 企業側からの「抜擢」だけでなく、手挙げ型で社員自ら「セルフ抜擢」の機会を作る

  • 挑戦を後押しする社内風土を構築する

などは抑えておくべきポイントと言えると思います。

当社でも「社員のやる気を引き出す」ための施策は数多く存在します。(以下、一部ご紹介)

  1. 「あした会議(会社の“あした”を考えるという意味)と呼ばれる、経営課題解決提案を行う場(重要議題の決議の場)に社員を巻き込む・・・「会社の未来を考える機会」「新規事業立案機会」「経営に対して自らの案を直接提案する機会」「経営の意思決定の場に参加する機会」を創出しています。

  2. 「キャリチャレ(キャリアチャレンジの略)」と呼ばれる、自分の意志で部署異動を実現する制度を設ける・・・会社による異動人事の発令ではなく、「自らキャリア形成・キャリア開発をする機会」を創出しています。

  3. 年齢や社歴などに関係なく、「子会社社長/取締役への就任」や「選抜プログラムへの参加」など、抜擢を意図的に行う→それぞれの部門・組織において、どの人にどのような機会を提供することが、個人の成長、ひいては組織の成長につながるかを常に議論し、決めたアクション(“誰”を“どうするか”)を速やかに実行しています。

  4. 「自由と自己責任」という企業風土→トップダウンで決められたことを決めたられた通りに実行するのではなく、目標も役割も、自ら決めて全うするという企業風土が定着しています。(マネジメント層は、社員が自分で決められるようにサポートしています。)

これらの「社員のやる気を引き出す仕掛け」は、会社の規模や業界・業種、これまでの歴史や今後向かっていく方向性などによって、実際の環境構築の方法は各社ごとに異なります。

多くの学生さんと接していると、「会社の規模が小さいスタートアップ企業ほど若手社員の成長機会が多い」(逆に言うと、会社の規模が大きくなると若手社員のチャンスは減り活躍できない)と捉えている人が多いです。実際に、それは正しいとも思います。(私自身が就職活動を終えて最後に就職先を決める時も、「若手の裁量権」「若手にまわってくる打席の数」「若手がチャレンジできる経験数の多さ」が当時のサイバーエージェントに入社を決めた決め手となりました。)

ですが、必ずしも会社の規模と若手社員にまわってくるチャンスの総量に相関関係がないケースも存在します。規模が大きな会社になればなるほど、世の中に与えるインパクトや、案件として扱う規模(金額)の大きさ、巻き込む人の多さがスタートアップ企業とは比べものにならず、かつチャレンジできる仕事内容のバリエーションや、職務やポジションなどの抜擢のバリエーションも、企業側が意図的に増やしていく傾向は今後も強くなっていくでしょう。

当社内でもよく話題に上がるのですが、「20年前の若手社員」と「最近の若手社員」を比較すると、今の若手社員の方がデジタルリテラシー含めスキル面においては、圧倒的に優秀です。それは、当社が変化の激しいIT業界であり、常に若い力・新しい力を生かし、新領域への挑戦や新規事業の創出などを積極的に行っている会社だから特にそう感じるのかもしれません。事業の内容や仕事の内容が、若手の力を必要としている企業ほど、それだけ成長機会や挑戦機会を提供することに必然的につながっていくのだと思います。

企業側は、特に会社が成長し続けていくために若手社員の力を活用することからは避けられず、規模が大きくなっても、若手にとっての働きがいのある魅力的な会社であり続けるための努力を怠らず、何をすべきかに真摯に向き合い続けることが重要なのではないでしょうか。

20代の若手社員が目を輝かせて活躍している企業と、「仕事が面白くない」「ここでは成長できない」と失望して次々と去っていくような企業と、どちらの未来が明るいかは一目瞭然です。



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