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3人目以上を産んでもらうという少子化対策が見当はずれである理由

相変わらず、しつこいくらいに「出生数過去最低」というニュースが出るのですが…。

どこかの圧力でもあるんでしょうか?報道の回数増やしたら、子どもが産まれるんでしょうか?

何度も言いますが、出生数が今後あがることは100%あり得ません。

短期的な今年の数字の一喜一憂なんかしてる場合じゃなくて、いい加減、今後50年100年そういう傾向が続くという前提の議論しないといけないのではないでしょうか?

今回の記事では、「推計より2年早く年間90万人を切り、2019年は86万人になってしまう」ということを問題視しているのですが、伝えるならちゃんと詳細も伝えるべきだと思います。

ここで言う推計とは、2017年発表の社人研「中位推計」を指しています。その推計では、2019年の出生数予測は、92万人でした。そこから見れば、確かに86万人というのはかなり低い実績となるでしょう。しかし、社人研は同時に「低位推計」も出しています。それによれば、2019年出生数は83万5900人と推計しており、十分その範囲内に収まっています。社人研の人たちの推計がいい加減であるかのような伝え方はフェアではありません。

出生推計

断言してもいいですが、今後も出生数は下がり続けます。出生数が上向く要因は、人口メカニズム的にも考えられないわけです。社人研の低位推計のようにそのうち年間60万人台に突入するのは必定です。


こういう記事が出るたびに、「フランスを見習え」だの「ハンガリーのやり方を勉強しろ」だの、要するに「出産した子供の数に応じた一時金を出せ」とか言い出す人たちがいるんですが、今回はそういう施策が全く出生数の上昇の寄与しないという話をしましょう。

社人研の2016~2018年の推計による出生順位別出生数予測と同年の実績とを比較してみます。要するに、お母さんたちが何人目の子を産んでいるかの数を比較します。推計と実績で、どれくらい子どもの数が食い違ったかを表します。グラフの上の方が推計より実績が上回ったということで、下はその逆です。

出生順

一目瞭然だと思いますが、第3子の出産数は推計とほぼ変わらず、第4子以上の出産に至っては、推計よりも多くこの3年間は子どもが産まれています。つまり、出生数が減っている最大の要因は第1子が産まれないことであり、それはそもそも結婚数が減っているからにほかならないわけです。

言い方を変えれば、現状でもたくさん子どもを産むお母さんは産んでいるし、がんばっているわけです。少なくとも国の推計以上に産んでいます。

もちろん、そうした子沢山世帯のためにも「子育て支援」は必要です。これはこれで大事。しかし、こと少子化という観点においては、「3人目、4人目を産んでもらうことではなく、1人目を産んでもらうこと」が一番のポイントなのです。

婚外子が極端に少ない日本においては、それは婚姻数を増やすことになります。

以前、こちらの記事で「問題は少子化ではなく少母化であり、未婚化・非婚化が出生数減の最大要因である」というお話をしました。

理論上は、婚姻数が増えれば子どもの数も増えるはずです。

しかし、現実はそうはいきません。婚姻数は増えませんし、結婚しても子を持たない夫婦の比率も高まっています。よって少子化は何をしようとも解決なんかされるはずがないのです。


「誰もが婚姻し、子を産み育てる」のがデフォルトだった時代は終わっているのだ、とそろそろ認識を変える必要があるのではないでしょうか。


最近、親による「子どもの虐待殺人」事件が毎日のようにニュースで流れます。産めばいいって問題ではないと思います。

出産・育児については親当事者だけの問題ではなく、結婚してもしなくても、子がいてもいなくても、直接間接に関わらず、「生まれてきた子どもたちをちゃんと無事に育て上げられる社会」の問題としてそろそろ取り組んでいかないといけないのではないかと思います。


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