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白泉社から投資を獲得したドイツの新興マンガ出版社とは?

ドイツの新興マンガ出版社であるAltraverseはこのほど、日本の白泉社から投資を獲得しました。ドイツの書籍業界の専門誌『buchreport』の2月6日付けのニュースによると、投資の中身は資本協力にとどまらず、長年のマンガ分野の経験とマルチメディアを駆使したマーケティングに関するノウハウの協力にも及びます。

両社は2018年12月末、ドイツのマンガ市場で新たな商品分野と読者層を開拓することで、パートナーシップを結びました。その約1カ月後に今回の投資獲得の発表がありました。両社は相当意気投合したとみられます。

しかし、このAltraverseというマンガ出版社は何者なのか?ちょっと気になりませんか?

くだんのニュースによると、ハンブルクを拠点とし設立されたのは2017年8月と割と最近です。さらに実際に翻訳マンガの販売がスタートしたのは2018年4月ということなので、本当に新しい企業です。しかし、事業は順調で、すでに35万冊を売り上げたそうです。

Altraverseのホームページを見てみました。下の画像はトップページで紹介されている2月の新刊ラインナップです。なんとなく方向性が分かりそうな気もしますが、どうでしょう?白泉社が投資するまでに至った決定打はまだ見えません。

Altraverseを設立したのは、ヨアキム・カプスさんというマンガ編集者です。先ほどの『buchreport』は、同氏がマンガ出版社Tokyopopの代表を辞めたこと(2016年11月18日付)、新たなに出版社を設立しマンガ業界に復帰したこと(2018年2月28日付)、を取り上げていました。つまりヨアキム・カプスさんは、書籍業界全体のニュースポータルがその動向に注目するほどのキーパーソンである、と言ってもよさそうです。

というわけで、もう少しカプスさんについて調べてみました。2014年と少し古い記事ですが、ドイツの書籍業界に関する別のニュースサイト『BuchMarkt』は、彼の50歳の誕生日にあわせてそれまでの仕事を紹介しています。

記事によると、彼の成功はカールゼン・コミック、カールゼン・マンガで、少年マンガ誌『BANZAI!』や少女マンガ誌『DAISUKI』を立ち上げ、そこから『One Piece』や『Naruto』といった今でも人気な作品をドイツで紹介したことにあるそうです。また、性格について、「外部からの批判や影響に寛容で、常に実験的な試みに対してオープン」であると評しています。チャレンジ精神が旺盛な人、といったところでしょうか。

このあたりから、白泉社がなぜAltraverseに投資するのか、その理由が少し見えてきた気がします。マンガ出版社自体は新しいですが、その実は、ドイツのマンガ市場でとても経験豊富で、むしろ業界をけん引してきた第一人者である人物が設立したマンガ出版社というものでした。

ちなみに、今回の白泉社からの投資に関しては、冒頭で触れた以外には、投資の金額やノウハウ協力の具体的な内容は明らかにされていません。

「COMEMO」ではすでに、アニメ業界で日本とドイツの企業が合弁会社を設立し、映画イベントなどで成功を収めている模様を紹介しました。(「映画館でアニメ体験:都市移動型アニメ映画祭という興行モデル=ドイツ」

アニメやマンガ・ビジネスの分野で交流が深まる日本とドイツの企業、現地のニーズをしっかり押さえた現地企業との協業はやはり有効な手段のようです。今後の動向が非常に気になるところです。

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