今でも蔓延る「誰かにとって都合のいい大本営発表」の嘘
シンガポールのメディアからの「日本のソロ社会」についての取材を受けました。あとでニュースとテレビ番組にインタビューが流れるらしいのですが、「日本の少子化、未婚化は何が問題だと思いますか?」などと聞かれまして、いやいやあなたの国の方がよっぽど深刻なんじゃないですか?って話なんだけど…と思ってしまった件。
で、逆になんでシンガポールは低出生なの?という質問をしたら、
1.女性の社会進出による未婚化及び晩婚化で複数出産の不可能
2.子どもの教育費がかかりすぎて、富裕層しかもう子どもを持てない
3.そうしたコストのかかる結婚や出産をする意義をもう女性たちが感じていない
と、まるで日本と同じような事を言っていた。
てなことをツイッター(X)でつぶやいたらこんな引用ポストが。
ええ、私もそう思う。が、この3つの要因を生み出した背景には、日本と同様中間層の没落の経済的要因が大きく、だから結婚も出産も「贅沢な消費」化しているところにある。シンガポールはそもそも1980年代に一度日本の戦前のような優生学的な出産奨励をやらかしたという失敗もある。
さらに、当のシンガポールの人達から見ても、「日本の少子化対策は出生数には寄与しない」と映っているらしいと聞いた。そら、そうでしょうねえ。今やっていることは、少子化対策ではなく、子育て支援策でしかないから。
子育て支援は否定しないが、子育て支援では出生数は増えないという話はもう何回も言い過ぎてるくらいだか、最近ようやく潮目が変わってきて、いろんな国会議員からお声がかかるようになってきている。そもそも自民党の下村議員のYouTubeにも出演させてもらって、その件を言っていたりするけとれども。
とにかく、今まで政府や政府のなんちゃら会議に呼ばれている有識者とかメディアが言ってきたことは少子化対策なんかにはなりえないということをようやく世間の人たちの中にも認知が広がってきている。とてもよいことだと思います。
いつまでも本質的な問題から目を背けてどうするの?って話。
本質的な議論をする前提として、ファクトっぽい嘘をとにかくなくさないといけない。誰かにとって都合のいい大本営発表では話にならない。
私が特に憂いているのは、どこぞの1シンクタンクにすぎないところが発表しているジェンダーギャップ指数なるものに、一部の変な界隈だけが大騒ぎするならともかく、いちいち大手のメディアも政治家も取り上げてどうするよ?という話です。
そもそも2021年の欧州で少しだけ出生率があがった国があったくらいで「出生率反転」とか言っちゃダメでしよ。しかも、この記事では、「ジェンダーギャップ指数が高い国ほど出生率が改善した」などと言いたいためか、こんなグラフまで掲出している。
このグラフも日経ともあろう大新聞がよく公開できたものだと呆れるのだが、なぜ出生率は2020-2021年の差分で軸をとってるのに、ジェンダーギャップ指数し2022年の単年の数値で相関図作っているのか?相関をみるなら、ジェンダーギャップ指数も2020-2021年の差分で見ないと本来意味ない。しかも、恣意的に国を抽出している。
これこそ結論ありきで、それに見合うグラフを作ったという話でしかない。ダメだよ、こういうことしちゃ。
で、双方値とも2020-2021年の差分で相関図で調査対象国全部を網羅して作ってみたら、なんとまあ、見事に無相関。相関係数0.0051。何の関係もない。
むしろ、ジェンダーギャップ指数が大幅に改善されたナイジェリアが出生率落としているし、出生率がもっとも増えた北マケドニアのジェンダーギャップ指数などほぼ変わっていない。
要するに、ジェンダーギャップ指数を改善したら出生率があがるなんてことはこれっぽちも言える話ではないということ。
オレンジ部分の拡大図はこれ。
なんなら、ジェンダーギャップ指数が改善された国だけ見ても、出生率が下がっている国の数の方が圧倒的に多い(グラフの右下の部分)。
他にも、少子化対策の件で、家族関係政府支出GDP比を上げれば出生率はあがるとか、女性の就業率をあげれば出生率があがるとか、男性の育休取得率をあげれば出生率があがるとか、そんなものもすべて大嘘。何の相関もないし、当然因果なんてあるわけがない。こういうのを大学教授とかの肩書の連中がよくもまあ言えるものだと。
全世界的に少子化は進むし、それは政策や制度なんかで改善されるものではない。まずそこの不可避な現実をいい加減認めるところからはじめないと。
「フランスを見習え」とかよくいうが、当のフランス自体が「もう出産対象の女性の絶対人口が減ったので出生数増は無理」と言っているくらいなのだから。
新聞とかテレビで流れている情報が必ずしも正しいとは限らない。モノの見方次第、切り取り方次第でいかようにも印象操作が可能。それは、第二次世界大戦に向かう時期の日本の新聞の動向を見ても歴史が証明している話です。
ちなみに、ジェンダーギャップ指数なんて鵜呑みにできないよって話は私だけが言っている話ではないので、こちらもご参考までに。