「トビバッタ」にならないために 〜インターネットでも「三密」を避けよう
お疲れさまです。uni'que若宮です。
突然ですが、今日は「バッタ」の話をしたいと思います。
サバクトビバッタの成虫は世界で最も破壊的な移動性害虫の一つ。自身の体重と同じ約2グラムの植物を1日で食べることができる。2020年1月以降、ケニアは過去70年で最悪の大発生に見舞われている。バッタの増殖は続いており、東アフリカの作物は特に攻撃を受けやすい生育期を迎えている。
トビバッタ
大発生して植物を食い荒らしながら大移動し行軍を続ける、こういう現象を「飛蝗(ひこう)」と言います。よく「イナゴの大群が」と言われるのですが、実は「イナゴ」ではありません。wikipediaパイセンによると、
極めて多数のバッタ類が群れをなして飛来し、あらゆる植物を食い尽くしながら(蝗害)移動する飛蝗(ひこう[1])という現象は、世界各地で見られる。日本でもかつて見られたことがある。往々にしてイナゴと呼ばれることがあるが、分類学上はイナゴ類ではなく、トノサマバッタなどに近いバッタ類である。
イナゴ類ではなくバッタ類なのだそうです。「飛蝗」という言葉を訓読みするとわかるように、「トビバッタ」というやつなのですね。
この「トビバッタ」、ちょっと特殊な「バッタ」でして、見た目も大きく普通のバッタとはちがいます。
普通のバッタに比べ色が黒っぽい、足は短い、翅が長い、触覚の感覚器が少ない、などの特徴があります。下が「トビバッタ」なのですが、なんていうか、強そうだし悪そうですよね。。。
ダーク・ジェダイ
普通のバッタは緑色ですが、トビバッタは黒を基調としたダークな仕上がりとなっております。
デザインがもうなんとなく「強そうだし悪そう」です。降谷健志あたりとだいたい友達なんじゃないかなっていう気がしますし、黒光りしたマスクはダースベイダーを彷彿とさせます。
で、この「トビバッタ」、見た目だけじゃなく、中身もまさにダースベイダー的なのです。
どういうことかというと、実はこの人、元から悪かったわけではないんですね。ベイダー卿はパツキンイケメンのジェダイとして活躍していたのが、色々あってダークサイドに落ちちゃったわけですが、何を隠そうこのトビバッタも、驚くべきことに元は緑色のバッタなのです!!!
近縁のバッタ類は同一地域に常時観察されるが、それとは外見上で明らかに異なる。一般的に普通の生活をするバッタと、それによく似た群飛性のバッタを比べると、後者がより翅が長く、跳躍に使われる後脚は短い。また、体色は後者の方が黒っぽい。当然ながら、両者は別種と考えられていた。しかしながら、詳細に調べると、両者の中間型があったり、分類上の重要な特徴とされる生殖器の構造に、はっきりした差異が認められないなどの問題があった。
これらが同一種の変異であることを発見したのは、ボリス・ウヴァロフ(1921) である。
すごくないすか。同じ種とは信じられなくないすか。
こんなに変わるってすごい。害虫化してあらゆるものを食い尽くし、果ては共食いすらはじめてしまう、ほとんど狂気じみた無尽蔵の欲望はまさにダークサイドに落ちたジェダイのようです。
闇落ちの原因は「過密」
ではどうしてトビバッタはダークサイドに落ちてしまったのでしょうか?
その原因は「過密」です。
孤独相から群生相への変異は、生育中の幼生が過密状態で育つことで引き起こされる
過密な環境に置かれたバッタは、孤独相とよばれる緑の状態から黒っぽい群生相という状態に変化し、暗黒のダースベイダーとなるのです。
「過密」の悪影響については、満員電車を想像してみるとよいかもしれません。
満員電車の過密のストレスは、しばしば人々を攻撃的にし、舌打ちをしたり怒鳴りあったり、ちょっとしたことで暴力をふるわせたりします。首都圏に住む方は少なからず、「お客様同士のトラブル」で電車が遅れた経験があるでしょう。そして運行再開まで寿司詰めで待たされると、凶暴性が乗客の中に広がっていき、まさに黒ずんだトビバッタの群れのようになります。僕自身もそのような感情になった経験がありますが、過密状態というのは「相」を「変異」させてしまうほどのネガティブな影響力があるようです。
ところでコロナ禍では、「密」というのは一つのトピックでした。僕も満員電車にはここ2ヶ月ほど乗っていませんし、リモートワークが進み「過密」はだいぶ解消されたでしょう。(残念ながら緊急事態宣言の解除とともにまた満員になってきていますが、、、)それでも「三密」(密着、密集、密閉)を避けろ、と言われているので、以前に比べ「過密」はだいぶ減るでしょう。
「開疎化」と言われるwithコロナの時代には「トビバッタ」はいなくなるのでしょうか?
インターネットの「時間的過密」
残念ながら「トビバッタ化」は相変わらず起こっているようです。
え、「密」が減ったんなら減るはずでは?
たしかに物理的な場からは「過密」は減ります。しかしトビバッタは別の場所で生まれ、むしろこれまで以上に凶暴に食い荒らしているのです。
それは、インターネットの「過密」の中です。
インターネットの過密とは、空間的な過密ではなく、時間的な過密です。
インターネットというのは「網」ですが、それを「つなぐ」のは「線」であり、線の中でやり取りされるコミュニケーションは0と1の並んだひとつの「列」です。なので原理的にその性質は、空間的な広がりをもたない一次元的なものになります。「LINE」がコミュニケーションツールの代表であり、多くのSNSでもメインページをタイム「ライン」というように、インターネットの「場」は、広がりを持たず一方向に進む一次元の「時間の線」なのです。
そしてこの「線」の中に、ひとときに多くの人々が集まり、大量の刺激が集中すると「過密」になってしまいます。一車線しかない道が渋滞しやすいように、「線」はより過密になりやすいのです。
先日、インターネットが原因でとても悲しいことがありました。それに関連し、以前僕も批判と中傷について記事を書きましたが、いま一度考え直すきっかけをくれたのが、けんすうさんのこちらの記事です。
この記事にはっとしたのは、「中傷か批判か」「悪意か善意か」という質的な差異以上に、実は「量」そのものに暴力性がある、という指摘です。
「相手をとことん貶めよう」という誹謗中傷する人って実はそもそも少数派なんじゃないかなぁ、、と。
じゃあ何が問題か・・・というと、単純に「まともな批判が、大量に来てしまう」という量の問題だと思います。
どういうことかとざっくり書くと「1人1人の批判は適切で、批判の範囲内であり、問題がなかったとしても、批判の量が多すぎると、受ける側のキャパシティが超えてしまう」ということが起こっているということです。
これはとても恐ろしいことです。なぜ恐ろしいか、というと「ひとりひとりの善意」でそれが防げないからです。むしろ善意が多く集まると、そこに暴力が生まれてしまう、という皮肉。
このけんすうさんの記事を「トビバッタ化」と合わせて考えると、危険なのは「量」そのものではなく「過密」なのではないか、という気がしてきます。つまり、数が多いだけではなく「高頻度」で「短時間」に集まることが問題なのではないか。
たとえ100件の批判があったとしても、日に1件とか、密でなく時間的に「疎」な状態が維持されれば、心が壊れずにそれを受け止めることができるかもしれません。けんすうさんは解決策にまで思いを致していますが、
どうすればいいのかを考えてみても、たとえばSNSとかが実装して、批判が一定まできたら話題にでづらくするとか、不可視にするとかが思いついたんですが、「1件目の批判は見えるけど、100件目からは見えなくなる」とかが、言論を交わすプラットフォームとして正常か、フェアか、という問題になるので、実装は難しそう。
ある量で打ち止めになるのではなく、時間あたりの投稿量や表示量をコントロールする、という手もあるかもしれません。
インターネットでも「三密」を避けよう
実はインターネット、とくにSNSではしばしば「三密」の状態が発生しています。
1)密着:
肌身離さずスマホを持ちひっきりなしにチェックする。特定の相手に粘着する。
2)密集:
一つの投稿に沢山の人が群がる。
3)密閉:
ネットの世界に「閉じこもり、出れなく」なる。
とくに問題なのは2)の「密集」です。インターネットではリアルワールドのように物理的制約がないため、「密集」がほとんど無限に進行するからです。
何気ないツイートでも、一度バズるとそこにわらわらと群がり、攻撃し合うさまはまさにトビバッタのようではないでしょうか。そしてトビバッタたちはそこを食い荒らすとまた別のターゲットを探して大移動していきます。「バズる」とはよくいったもので、それはまさにトビバッタの群れの羽音そのものなのです。
トビバッタに学ぶなら、もうひとつ怖いことがあります。こちらのwikipediaで
ある程度過密な状態で育った幼生は、次第に体色が濃くなり、互いに接近して共に移動する性質が強くなる。それがさらに過密な状態を作り出すという、言わば正のフィードバックが働き、やがて全個体が移動を始めるに至る。
「正のフィードバック」と言われている現象です。危険なことにトビバッタ化は加速するのです。
過密で育つと、より接近して「密」になろうとする。それによってさらに密度が増し、ますますトビバッタ化してしまう。それはまるで、バズるのを体験したり目にしたりした人がさらなるバズを求めて過激になっていくさまそのものではないでしょうか。
インターネットでは気づかぬうちに「過密」がおこり、「過密」によってダークサイドに落ちてしまう。
そうならないためにはインターネットでも「三密」を避けることです。「タイムライン」という一次元の中で「過密」を感じたら時間の間隔をとること。インターネットでも「ソーシャルディスタンス」は大事ですが、それは時間的なディスタンスなのです。
1)「密着」を避けましょう:
あまりに高頻度にSNSを開いたり、同じ相手に粘着したり、されたりしている事に気づいたら、一度距離を取りましょう。
2)「密集」を避けましょう:
多くの人が群がっていたら、そこにあなたも行く必要はありません。コメントを増やして更に密集させるようなことはせず、人が減るまでそっ閉じしましょう。
3)「密閉」を避けましょう:
ネットの中に閉じこもると、ネットが全てのように思われてきて、閉塞し窒息してしまいます。でも、ほんとはその外に世界は広がっています。ネットから出て、深呼吸し、広い場所に散歩でもしにいきましょう。
あなたやあなたの周りの人は、気づかぬうちに「トビバッタ」になりかけていないでしょうか?ダークサイドに堕ちないために、「三密」に気をつけましょう。