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テレワークを止めないために-「縛る」から「繋がる」へ

こんにちは。Funleash志水です。昨年は私のNoteにたくさんのスキやメッセージをいただき心から感謝しています。今年も昨年同様に皆さまのお役にたてるように知見や知識を盛り込みつつ、他とは異なる斜めの視点から、気になるトピックをとりあげていきます。
私のnoteを読んで明日が楽しみになる、ちょっと勇気が出た・・そんな方が一人でも増えたら嬉しく思います。本年もどうぞお付き合いくださいませ。

さて新しい年を迎えて早くも1カ月が過ぎようとしています。
1月最初のnoteは、日経朝刊投稿募集「 #テレワークに効くコミュニケーション 」というテーマについて考えます。

コロナ禍によって在宅勤務を主とするテレワークが急速に普及しました。
体感的にはテレワーカー人口の割合は増加し、働き方が激変したように感じます。また、ハイブリッドな職場の実現、二拠点生活やワーケションなど新しい働き方についての記事や発信を見ることが増えました。テレワークが日本ですっかり浸透したような印象さえ受けます。
確かに緊急事態宣言中は一部の業種を除いては多くの企業がテレワーク導入に舵を切りましたが、緊急事態が解除されたとたんに「出社してほしい」と職場への復帰を指示されたという話を聞きます(一部の産業や企業はそもそも緊急事態宣言中も通常勤務でした)

自宅や公共施設など勤務先以外で働く「テレワーク」を導入した企業やテレワーカーは広がっているのでしょうか?

下記の記事では、テレワークなどの新しい働き方を「常時運用したい」とい回答した企業が8割に達しているにも関わらず、第5派が収束を迎えた時期(21年10月)の調査結果から、金融・保険・製造業を除いた産業ではおおむね、在宅勤務率が軒並み低下しており、産業間で継続・維持の程度に差がうまれていることを指摘しています。

昨年の夏にパーソル総合研究所が行ったテレワーク実態調査でも、「正社員のテレワーク実施率(全国平均)が27.5%であり、過去調査結果とほぼ変わらなかった。2020年4月に発令された1回目の緊急事態宣言時と比べると「やや減少していた」とあり、同様の傾向が他の調査でもわかっています。
これらを踏まえると、実際にはテレワークの広まりはいまひとつと言わざるを得ません。

個人のテレワーク実施意向はどうでしょう。上記の実態調査から、2020年11月から大きな変化は見られないもの、その時点でテレワーク実施者はコロナ収束後も78.8%が1週間に1日以上のテレワークを希望しているそうです。テレワークを実施していない人(非テレワーク実施者)においても、1週間に1日以上のテレワークを希望している人は33.0%いることが分かっています。チャットツールの大手スラックが行った調査では、オフィスにフルタイム勤務で復帰したい知識労働者は10%前後だったそうです。

年末から再び新型コロナの変異ウィルスオミクロンが猛威を振るい、感染者が急激に増加する中で、ふたたび企業は事業活動の継続と社員の健康維持という困難な課題に直面しています。働き手の大半がテレワークを望んでいる中、ここで以下の問いが浮かびます。

・果たしてテレワークに移行する準備が私たちにできているのでしょうか?
・欧米のように日本でもテレワークは定着するのでしょうか?

テレワークは業績に効果があることが多くの研究からわかっています。米国では、すでに1970年代にはテレワークという概念が提唱されています。この波が変わったのが2013年、当時のヤフーCEOだったマリッサ・メイヤーが業務のスピードと品質に懸念があるという理由で自社のテレワークプログラムを廃止したとき。その後大手企業が続いで廃止したのは記憶に新しい。(その大半がコロナでテレワークに戻りましたが)創造性、コラボレーション、コミュニケーション不足の懸念からこの決断をしたようです。

ご存じのようにテレワークには生産性の向上、通勤時間とそれに伴うストレスの解消、家族との時間の増加、いつ何をやるのか自分で決定できるというメリットがあります。

デメリットとしては、仕事とプライベートの境界の難しさ、変化のない単調な生活、孤立化、過重労働、メンタルヘルスの増加などが挙げられます。(私の場合はキッチンにある食品にいつでも手を伸ばせることも)
中でも、企業側が一番懸念しているのは、「目の前にいない人たちとのコミュニケーション」が著しく損なわれることでしょう。

実際、クライアントから相談を受ける場合には下記のようなものがトップにきます。

・オンラインだとコミュニケーションがとりづらい
・目の前にいない社員の仕事ぶりがわからない(評価が難しい)
・社員がサボっているのかもしれないので監視したい

このような懸念はとってもよく理解できます。多くの人にとって、「仕事=出社する」、あるいは「同じ場所で皆でいっしょに行動する」「仕事は時間がかかる」なんですね。これは前時代的な発想だといえるでしょう。

以前のnoteに書きましたが、15年前に「スーパーフレックス」制度を自社に導入しました。「自律」「時間から成果へ」というスローガンを掲げたのですが、効果は半信半疑でした。それでも、信念をもって進めました。
「サボる社員は会社にいてもサボります。社員を信じて任せてみたい。信頼して自由と責任を与えれば、期待に応えて成果を出してくれる」
反対するリーダーや管理部門の責任者に何度も説明し、実現しました。

「社員はサボる」という妄想に取りつかれた管理職は、不要な業務連絡や過度な報告書を求めて生産性を下げます。自宅で働く様子をリモートで監視したいと言い出します。

ちょっと待って!それは社員のモチベーション低下を招くばかりか、プライバシー・個人情報保護の観点からも問題あります。

管理するためのルールを厳しくすればするほど、システムや制度が複雑になって余計な管理コストがかり、社員の自主性と創造性を奪います。

それではどうすればいいのでしょうか?

性悪説を一切捨てて社員を信じることが重要になります。
「縛りつける」から「繋がり」を通して創造性やコラボレーションを生み出すにはどんなコミュニケーションが効果的かと発想の転換が大事。

①業務の報告ではなく共有へ:公式な資料作成や業務報告は廃止。チームミーティングやスラックなどのツールを活用し、短いアップデートを発信するようにする。クラウドに資料を保存し、どこからでもアクセスできる環境にして業務を「見える化」。不安なことや相談があればチャットや電話でちょこちょこやりとりをし、同僚や上司はそれに反応する。(文章が長くて不要な文章が入るメールは相手が反応しづらいのでやめる)
②雑談から感情共有へ:雑談をすれば心理的安全性が高まるという誤解が蔓延してます。自分の弱みや失敗をさらだけだせる場こそ心理的安全性が高いといえます。メンバーが好きなこと、もやもやすること、悲しい、つらいなど「感情を共有する場」を意図的に作る。会議のオーナーや上司が自分の失敗談やエピソードを率先して話し、自己開示することから始める。
仕事・プライベートに関わらず、「個人の感情」を共有する、「良かったね」「つらかったよね」とお互いに耳を傾ける、共感する、思いやりを示すことがチームの成果を高めます。人は自分を理解してくれる居場所があることで安ど感を得ることができますし、お互いに褒めあうことでさらにチーム力がさらに強まります。

③日々の仕事ではなく未来に目を向ける時間を:毎朝起きて仕事をして寝る・・単調な生活が続くと心身ともに疲労困憊。そうなると誰もが目の前のことをやるだけで長期的な視点を持てなくなります。散歩、音楽を聴くというような仕事に支配されないルーティンを個人で取り入れることで防げます。最も効果があるのは、組織やチームのミッション、パーパス、共通の目標について対話ができる場を創る。ばらばらの場所で働くメンバーが繋がるには、共通の目標、果たす役割、コラボレーションを促進するアイデアをみんなで考える時間を持つ。無意味な報告だけのミーティングよりも確実に効果があります。未来の姿を描くことができれば日々の仕事との関連性や意義がわかり、気持ちが上向きになります。

余談ですが、私の場合はミーティングの最初や最後に「チェックイン」「チェックアウト」を行ってメンバー一人一人の気持ちをシェアしてもらうのです。外部研修やワークショップでも必ずこれを実行します。
好きな食べ物、旅行したい場所などの軽いトピックを投げると期待以上に盛り上がりるのでおすすめです。顔が曇っていたり、コメントの内容から心配を感じるメンバーには個別メッセージを送ったり、ミーティングを設けてフォローアップをします。

グループ全体の対話の場を創る、心配なサインがみられるメンバーにフォローアップを行う。成果がでているメンバーにはチャレンジを与え、苦戦しているメンバーはきめ細やかに支援する。多様なメンバーが共に前進するには共通の目標(目的地)を示しつつも、異なる方法で個別に支援する。
離れている場所にいる多様なメンバーをまとめることが新しい時代のリーダーに求められます。

デジタル化が進み、オフィスや工場の環境が整備され、私たちの働き方はここ数十年に劇的に変化しました。けれども法律が追いついていません。
現在の労基法が生まれた背景は、「場所や時間が拘束され、厳格な管理・監督下に置かれた工場労働者の管理と職場で生じる労働問題の解決」であると神戸大の大内先生も指摘されています。


時間や場所に捕らわれず仕事を通じて顧客に価値を創出する高度プロフェッショナル人材を増やす。
育児や介護など事情を抱えた多様な人材が仕事を継続する。

テレワーク効果を高めるために不可欠なのは、「縛る」から「繋がる」へ。
会社まかせにせず、ひとり一人が意識して行動すればテレワークの定着が可能になると信じています。

テレワーク (1)