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「同一労働同一賃金の徹底」と「無期転換ルールの徹底」を同時に進めるすべきか

16日、新しい資本主義実現会議で、「三位一体の労働市場改革の指針」が取りまとめられました。

これはこれで別途書きたいことがありますが、今回はここで示されている同一労働同一賃金の徹底について書いていきます。

同一労働同一賃金は「賃金」の待遇改善

同一労働同一賃金は、正社員と同じ仕事をしているのであれば、同じ待遇をすべきで、仕事内容が違う場合でも、違いに応じた相違を超える不合理な格差はダメだ、とする制度です(厳密には尺度が「仕事」に限らないところが難しいのですが端折ります)。

同一労働同一賃金は、賃金の点から非正規雇用の待遇を改善するものです。

「雇用期間」の待遇改善として無期転換もある

非正規用の待遇改善の施策として、もう一つ大きいのは、無期転換ルールでしょう。
これは、ざっくりいえば、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換されるルールです。

これは、雇用期間の定めについて、有期雇用から無期雇用に転換できるというもので、雇用期間の待遇改善を図る仕組みと言えます

下記記事のように、無期転換についても、企業に通知義務を課すなどし、その強化を図っています。

ちなみに、本稿とは少しずれますが、個人的には、なんでもかんでも企業に周知義務を課すことには反対で、国の制度説明義務は本来は国がなすべきと考えています。

同一労働同一賃金と無期転換は両立するのか

上記のとおり、国は、賃金については同一労働同一賃金で待遇を改善し、雇用期間の定めについては無期転換で待遇を改善するという政策を、同時に強化しています。

「無期雇用にもなって待遇もアップで良いではないか」と思われるかもしれません。

しかし、この点はよく考えてみる必要があります。

というのは、無期転換権を行使し、「無期雇用」になったとしても、それは正社員と同じ賃金になることを直ちに意味していません。
労働契約法では、無期雇用転換した後も、賃金などの雇用期間の定め以外の待遇は有期雇用の時のままということも許容しています。

「じゃあここで同一労働同一賃金の出番だな」と思われるかもしれませんが、同一労働同一賃金の規定は、「パート・有期・派遣」対「無期雇用・直接雇用」という構図であり、「無期雇用」対「無期雇用」の待遇差は問題としていないのです。

そうなると、非正規雇用の待遇改善がなされないままに無期転換権を行使すると、かえって同一労働同一賃金の適用を受けられないということになります(類推という考えはありますが)。

本来は賃金の待遇改善から進めるべきではないか

上記の考え方からすれば、非正規雇用の待遇改善がされる前に、無期転換が進められると、形式的に有期雇用という意味での「非正規雇用」は減ることにはなりますが、 「無期雇用」の間での待遇差の問題は残ることとなります。
したがって、同一労働同一賃金よりも無期転換ルールの方が先に成立していますが、本来は、まずは非正規雇用の待遇差の改善を進めてから、無期転換権の強化を図るべきではないでしょうか。

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