「休みのデザイン」を考える
男性の育休取得促進にむけた動きが、各所でみられます。厚生労働省では9/29に労働政策審議会を開き、男性の育児休業の取得促進に向けた具体案の検討を始めています。
男性の育休取得率は7%ほどです。育児休業は産後うつの抑制や少子化対策にも有効であること、そして長きに渡る場合の多い夫婦の良好なパートナーシップの醸成にも役立つとされています。
ぼく自身も、第一子のときに10ヶ月間の育休を取得しました。そして、9月に第二子が誕生し、来月から3ヶ月間の育児休業を取得予定です。もっと取得率があがるといいなと感じます。
今日は、育休をはじめとするさまざまな「休み」のかたちについて考えてみたいと思います。
育児休業、産前産後の休業… さまざまな休みのかたち
有給を取得することや、夏季・冬季休業以外にもさまざまな形の休みがあります。今注目を集めているのは、男性の「産休」です。
法律で認められている休業では、
* 産前産後の休業
* 育児休業
* 介護休業
などがあります。
よく間違われるのですが、産前産後の休業、いわゆる「産休」は生まれる前から取得することができるものです。「育休」は生まれた後から取得するものです。「産休」は女性にのみ認められています。これを男性にも認めようという動きが見られています。
ぼくも、第一子も第二子も、出産前はハラハラしました。仕事を無事減らせるだろうか?周囲に迷惑をかけないだろうか?陣痛がきたら産院に行く妻に付き添えるだろうか?と、さまざまな不安が付きまといます。予定日に生まれるとは限りませんが、前後数週間、男性にも産休がもらえるなら、その方が安心して出産を迎えられたと思います。
企業独自の休みのかたち
こうした行政による「休業」の制度的保障はもちろんのこと、企業独自の休みの制度設定も充実していると言えます。
たとえば、サイボウズでは、妊娠がわかった直後から産前休暇に入ることができたり、最長6年間の育児・介護休暇制度などもあります。また「育自分休暇」という、利用希望者は、最長6年間はサイボウズへの復帰が可能である制度なども面白いです。
メルカリでは男性も産後8週間の給与100%になるよう補償していたり、不妊治療費の負担を会社がしてくれる「merci Box」が制定されています。
リブセンスでは、保存有給制度(時効消滅翌日以降2年間保存することが可能)、有給生理休暇(1か月につき1日を上限として有給の生理休暇を取得できる)、ボランティア休暇(1年間で3日間を上限として、ボランティア活動に参加する場合に有給の休暇を取得できる)などのユニークな休暇が設定されています。
介護・出産・育児だけでなく、生理や不妊治療などへの補償、育自分休暇やボランティア休暇など学ぶための時間を守ることなど、働く人を大切にする姿勢が制度に現れていると言えます。
誰かが休むことを前提に仕事を進める
ここからは、ぼく自身がこうした休みを取得するために、大切にしたいことを考えてみました。
休業・休暇の取得は個人だけでできるものではありません。
もちろん制度なので、本質的には周りの意見は考えなくてもよいのですが、今後も気持ちよく仕事をするためにチームのメンバーとの関係性に目が向いてしまいます。「いつ誰が休業しても大丈夫な状態をチームで保てるか?」が重要になります。
ぼく自身、メンバーの休業によって臨時マネージャーを務めることになりました。今度はぼく自身が育児休業を取得するためにマネージャー業をメンバーに交代してもらう、というかたちで休業を取得しています。ぼくが安心して育休に向かえるのも、チームのみんなのおかげです。
「誰かが休む」という出来事について、誰もが心の準備ができている状態を保つことが大切です。
「休んでいる」のではなく「新しいことを学んでいる」と考える
また、休業の取得には「意味」が必要になります。ぼくは最初に育児休業をとったとき「自分だけ休んでしまっていいのだろうか」という罪悪感のようなものがありました。
しかし、実際に育児休業を取得し、育児・家事に奔走する日々を送ってみると、「休んでいる」という感覚はまったくありませんでした。あまりに育児が忙しく、「正直、仕事する方が楽だ・・・」と弱音を吐いたことも数限りありません。
たとえば、家事・育児をある種の副業のようなものだと考えてみます。
本業ではシステムエンジニアをしているけれど、副業でライティングをしている人がいるとします。仕事をしながらライティングの技術を学び、副業で仕事を作っていったとします。
しかし、1からライティングを学ぶとなったら、仕事をしながらではなかなか難しいでしょう。一定期間エンジニアの仕事を止めて、ライティングを集中して学ぶことができれば、スムーズに複業ができるようになるはずです。
育児も同様であると感じます。一定期間集中して、家事・育児のオペレーションの仕方を家族とともに考え、模索し、よりよいかたちをととのえておくことで、仕事をしながら育児するという「複業」の状態を健全に作ることができるはずです。
もちろん、ぼくも妻と子どもたちと日々試行錯誤なので、家事育児について整った状態なんてできていません。それでも、状態が絶えず変わっていくことについて、夫婦で柔軟に対応できるようになったのは育休のおかげだと思っています。
まとめ
前回の記事で「ブランド・アクティビズム」について書きました。社会問題に対してブランドがどのような姿勢を示すかが重要であるという考え方です。
企業が独自に「休み」をデザインをすることも、その企業のブランドを示す手立てになると言えるかもしれません。そして、形骸化した制度ではなく、その制度が生き生きと使われている状態をつくることが組織の構成員に求められることでしょう。