「キャラを生きる」から始める新たなキャリア形成術『物語思考』
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
日頃からキャリアに関する記事を多く書いているわたしですが、最近出版された本でとても興味深い考え方がありましたので紹介したいと思います。
X(Twitter)でもnoteでも非常に人気のある「けんすう」さんが上梓した『物語思考』という本です。すでに10冊くらい本を出していると思っていましたが、実はこれが1冊目なんですね。びっくりしました。
彼は以前「nanapi」というハウツー(ノウハウ)を共有する会社を経営していたくらいハウツーが好きなのですが、本書も一貫して「やりたいことを見つけて、行動できるようになりたい人」向けのレシピです。ですので、たぶん読み終わっても「よし!やるぞ!」みたいにモチベーションがあがったり、テンションがあがったりはしません。いわゆるキャリア本というと多少なりとも自己啓発要素が入ってくるのが常なのですが、そういうのとは無縁なのがとても面白いです。
わたしが約2年前に上梓した『転職2.0』を書く際に同ジャンルのものをリサーチしたときにも、キャリアについて書いてある本は多くあれど、実際に「使えるメソッド」を提供しているものが少ないなと思いました。結果、かなり具体的なステップ・バイ・ステップで、再現性があるだろう行動指針をまとめた次第です。
また、世の中に多くある成功者による自伝のようなものも、再現性があるかと言われると「いやー、これはイーロン・マスクだからでは?」と思ってしまうようなものも多いです。ロールモデルとしては参考になる点があるかもしれませんが、そもそもキャリアというのは十人十色。成功の定義も人それぞれという時代です。いまでもよく読まれている以前の記事でも、キャリアというのは一直線に駆け上がるハシゴではなく、わりと自由に動けるジャングルジムに例えるほうがいいのでは?という指摘をしました。
本書では「成功者ではなく、幸せな人を増やす」というビジョンが一貫しており、幸せとは「今が充実している状態」と定義しています。つまり、「やりたいこと」を必死に見つけようとするのではなく、「なりたい状態」をしっかりと考えることが重要であると説いています。
言い換えるのであれば、DoingではなくBeing。まさに「Well-Being」の本流を捉えたものであり、その状態を見つけ出すための具体的なハウツーも提供されています。
ちょうど今日の日経電子版を読んでいたら、COMEMOで活躍する野村恭彦さんが、仕事のポリシーを紹介していました。それは「ファスト(仕事ができる人)を超えて、スロー(人生を楽しむ人)になる」というものです。
なりたい状態が定義できたら、その理想の状態に向かう一番良い「キャラ」を設定して、そのキャラとして行動する。ということをおすすめしています。本書でも触れられていますが、キャラとして行動している著名人に矢沢永吉さんやデーモン閣下がいると思いますが、矢沢さんの名言と呼ばれるものに、
「おれはいいけど、YAZAWAはなんて言うかな?」
があります。YAZAWAは言うまでもなく、ロック界のスーパースターです。聴く人を魅了するだけでなく、その思考、生活スタイルすべてが憧れの存在です。だからこそ、スーパースターなわけです。矢沢さんはひょっとしたらエコノミークラスで移動して、ビジネスホテルに泊まったとしても気にならないのかもしれませんが、YAZAWAは違います。ファーストクラスで颯爽と移動して、当然のごとくスイートに泊まっていなくてはならないのです。
よくキャリアを客観視すると良いと言われます。それは、自身の市場価値を正しく把握するためには、一歩引いた目で、採用者のような視点で自分を評価するような姿勢が大事だからです。そういう意味では「キャラを設定する」ことは、半ば強制的に主観を排除することになり、冷静に客観視できるようになります。まさに「YAZAWAなら?」ということです。
キャリア本としては非常に異色の内容だと思います。が、やりたいことが見つからなくて悩んでいる人や、キャリアについてもやもやしている人には非常におすすめできる本だと思います。ぜひ、興味を持った方は一読してみてください。
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※ タイトル画像は筆者撮影
※ 献本ではなく自分で購入していますので、Disclaimerはありません(笑)