コミュニティ思考を体現する「芋煮会」が生む自然なつながり:成功に導く4つのポイント
『芋煮でつながっていいとも!』――名前に込められいる通り、軽井沢ラーニングフェスティバル2024(通称 ラーフェス) に集まった、たくさんの参加者が温かな芋煮鍋を囲み、見知らぬ人々と共に笑顔を交わしながらつながりを深めていく、そんな時間が広がりました。初めての試みでもあるこの芋煮会では、参加者を8チームに分け、参加者同士が協力し合いながら芋煮を作り、そして皆で味わうというプロセスを通じて、自然と生まれる会話や笑いが場を包みました。
料理の役割分担をしながら、『どうすればおいしい芋煮ができるだろうか』と試行錯誤する中で、会話が次第に打ち解けていく。そこには、ただの共同作業以上の意味がありました。みんなで一つの芋煮鍋を囲むことで、初対面の相手に対しても親しみがわき、つながりが生まれ、深まっていきます。
この芋煮会は、ただ美味しい食事を楽しむだけではなく、一緒につくる、そしてシェアするというプロセスを入れることで、心の距離を近づけ、相手を知り合うための時間となりました。その結果、鍋の温かさだけでなく、互いの存在がもたらす温もりが場を満たし、イベント終了後も心に残る新たなつながりが芽生えたのです。
今回は、ラーフェスで開催した「芋煮でつながっていいとも!」の運営を通じて感じた「つながり方の本質」について考えていきたいと思います。
「芋煮でつながっていいとも!」開催の背景
軽井沢ラーニングフェスティバルとは
今回「芋煮でつながっていいとも!」を開催した軽井沢ラーニングフェスティバル(通称ラーフェス)は、軽井沢にあるライジングフィールドで3日間に渡って学びのフェスティバルです。ラーフェスは最初は白紙のタイムテーブルを参加者がセッションを開催することで埋めていきます。感情や直感と向き合う様々なジャンルの体験型ラーニングセッションを、誰でもいつでもどこでも開催でき、与え合い楽しみ尽くせる学びのフェスティバルで、2018年から軽井沢のライジングフィールドで開催されています。
以前、ラーフェスについての記事を書いたのでよろしければご覧ください。
私は今回6回目の参加となるのですが、昨年まではラーフェスで最初に参加者同士がつながる「きっかけ」をつくる「ラーフェスでつながっていいとも!」というセッションを初日に開催していました。
ラーフェスでは、いつもたくさんの素敵な出会いがあるのですが、そうしたラーフェスでの出会いは“ちょっとしたこと“がきっかけではじまります。“偏愛“と”つながり“をテーマに、参加者の中にある“偏愛“を自然な流れでシェアしてもらい、30-40分後には一緒に話したメンバーの大事にしていること、価値観に共感している状態になります。ラーフェスの最初のセッションで共感できる仲間が出来ることで、それからの3日間歩いている時にすれ違ったり、他のセッションで会った時に安心して話すことができる「つながり」が生まれます。そんな「つながり」にきっかけとなるセッションを開催していました。
ラーフェスの課題と「芋煮でつながっていいとも!」開催の経緯
ラーフェスでは毎年2日目の夕方からラーフェススタッフが美味しいバーベキューを振る舞ってくださる「キャンプファイヤーBBQの会」が開催されてました。バーベキューはとても美味しく、素敵な場で食べる時間は本当に素晴らしかったのですが、参加者はどうしても知り合い同士で固まってしまってしまい、たくさんの交流が生まれるラーフェスの中で、珍しく交流が生まれにくい時間になっているという課題があったのです。私自身も毎回BBQの会に参加していましたが、確かにその時間に新たに知り合いでない人と交流することはあまり無かったと記憶しています。
そこで、今回、ラーフェス実行委員長のウッチーさんこと内田 成男さんに、「これまでのBBQの会ではなく、ラーフェスらしく参加者同士がつながっていく、そんな時間にしたい」とお声がけいただき、これまで私がラーフェスの初日に開催していたラーフェスの参加者のつながりを生む「ラーフェスでつながっていいとも!」というセッションと、参加者みんなに役割がありチームで美味しい芋煮をつくること中でたくさんのコミュニケーションが生まれ、つながりを深めることができる芋煮会を掛け算させてもらい、「芋煮でつながっていいとも!」を開催させていただくことになったのです。
芋煮会とコミュニティ思考の関係
今回、私が主催してきた「ラーフェスでつながっていいとも!」は芋煮会とコラボレーションさせていただいたのですが、そもそも芋煮会とはどういう会なのかを説明させていただきます。(郷土料理としてこれまでに芋煮を食べてこられてきた方にとっては説明不要だとは思いますが)
芋煮会について
皆さまも秋になるとメディアなどで山形で開催される巨大な鍋で芋煮がつくられる芋煮フェスティバルの様子などをご覧になったことがあるのではないでしょうか。
芋煮会は山形県や宮城県、福島県など東北地方を中心に秋に開催される伝統的な野外イベントで、大鍋で「芋煮」と呼ばれる郷土料理を作り、みんなで囲んで楽しむ集まりです。芋煮は、里芋や野菜、肉を使った温かい汁物で、地域によって味付けや具材が異なります。芋煮会は、地元の人々が集い、秋の訪れを祝いながら交流を深める場として親しまれています。
芋煮会の本質
今回イベントをご一緒させていただいたイモニスト、アンディさんこと 黒沼 篤さんが代表を務める全日本芋煮会同好会のサイトの説明を引用させていただきたいと思います。
また、最近では「ぼうさい芋煮」として「災害時に栄養のあるあったかいスープをみんなでつくり分け合う」「カセットコンロがあれば手軽に作れる」「災害時の72時間の食を確保する」という観点で、災害への備えに組み込むことを啓発する取り組みもおこなわれており、芋煮会の時の炊き出し訓練が山形県の自主防災組織のカバー率の高さの要因の1つになっていると言われています。
芋煮会の本質は「持ち寄る」「自分達でつくる」「分け合う」というシェアとGiveの精神が軸にあり、フラットな関係で、1つの思いを実現するために能動的に動く「コミュニティ思考」の考えと同じでした。
芋煮会はコミュニケーションイベントであり、コミュニティ醸成のプロセスが盛り込まれた会だったのです。
コミュニティ思考について以前書いた記事がこちらです。
「芋煮会」と「ラーフェスでつながっていいとも!」の融合が生み出したものと4つのポイント
私はこれまでラーフェスが掲げるGive&Funの精神のもと、参加者がフラットな関係でつながり、能動的に動いていくという「コミュニティ思考」を始動させるきっかけづくりとして「ラーフェスでつながっていいとも!」を開催してきました。上述の通り、根幹に流れる考えが同じである芋煮会との融合は必然であったのかもしれません。
1. 場をほぐすチーム分け - 「共通項をつくる」
今回開催した「芋煮でつながっていいとも!」では、まず初めに参加者を8つのチームに分けたのですが、チーム分けは下記のように進めました。
このプロセスによって、各チームには4つのエリアの人が必ずいる状態になります。郷土料理をみんなでつくって食べる芋煮会だからこそ、それぞれのチームメンバーの郷土の話もつながりを深めるきっかけになればと思い、そのようなチーム分けをさせてもらいました。実際、移動しながら相手の色を確認したりすることで、少しずつ緊張もほぐれ、ちょっとしたハプニングも笑顔になるきっかけとなり、場が和んでいきました。
そして、出身エリアという共通項があることで、初めましての状態でもコミュニケーションを取ることが難しくなく、お互いのつながりを生み出しやすくなったのです。
このチーム分けの後で、チームごとにお互いを違った角度で知る偏愛ワークを予定していましたが、日没時間の関係(日没すると芋煮の調理が大変になる)で今回はチームメンバー同士の簡単な挨拶ワークだけ実施しました。こうしたプロセスを経て、芋煮をつくり始める前に、体を動かし、参加者同士でコミュニケーションを取り、初めましてな方同士も気持ちがほぐれた状態になりました。
そして、芋煮会のコンセプトである「持ち寄る」「自分達でつくる」「分け合う」のもと会は進んでいきました。
2. コミュニケーションのきっかけづくり - 「持ち寄る」
イベントの告知の段階から、参加者の地元(マイ産地)のご自慢のお酒や飲み物、おつまみなども持ち寄っていただくようお願いしていました。当日は、日本酒や焼酎、おつまみなどの持ち寄った品にどのようなルーツやストーリーがあるかなどをチームのメンバーに話すことで、新しい切り口のコミュニケーションのきっかけが生まれ、盛り上がりました。
3. 全員に役割がある芋煮づくり - 「自分達でつくる」
そして、ここから、いよいよ芋煮会が始まります。今回は下記4種類の芋煮(各種類を2チームずつがつくる)のレシピと材料が用意され、チームごとにつくる芋煮が決まっていきました。
各チームはそれぞれのメンバーが食材を洗ったり、カットしたり、水を汲んだり、炊いたり、応援したりと、必ず全員が何かの役割を持ち、芋煮を作り上げていきました。そうすることで、自然とコミュニケーションが生まれ、
一体感が高まっていったのです。
また、作る過程で皆でシェアしている料理酒などを、他チームが持っている場合、取りに行ったり、全体にアナウンスすることでも、コミュニケーションやちょっとしたつながりが生まれていました。
そして、作っている途中で歌を皆で歌ったり、踊ったりするチームもあり、大いに盛り上がっていたのがとても印象的でした。
4. 他チームとの交流 - 「分け合う」
芋煮が完成し、記念写真を撮り、より一体感と達成感を感じてもらったら、いよいよ自分たちで作った美味しい芋煮を食べます。作った芋煮を堪能しながらチームメンバーで感想を伝え合うことで、チームのつながりもより深まっていきます。
その後は、他のチームの人たちに芋煮を振る舞ったり、自分たちが食べに行ったりと、お互いの作った芋煮をシェアする時間となります。今回は4種類の芋煮があったので、どんなレシピだったか、素材などについても他チームのメンバーと話したり、持ち寄ったお酒などをシェアすることで他チームとのつながりも深まっていったのです。
「芋煮でつながっていいとも!」の会を経て生まれたもの
会の最後には皆で片付けも行います。フードロスも意識し、出来る限りゴミが出ないように皆さんが芋煮会を楽しんだことによって140人もの参加者がいたにも関わらず、出たゴミはなんとゴミ袋2つ分ほどでした。この結果は、参加者皆にシェアされ、参加者全体に新たな達成感が生まれ、会場の参加者が1つになりました。
こうして、会を通じて、初めましての状態から、様々な角度でのコミュニケーションを設計し、少しずつお互いのつながりを紡いでいくことで、まずはチームメンバー同士のことを知り、仲良くなっていきました。そして、作った芋煮をシェアし合う中で参加者全体のつながりを生み出していきました。最後に、全体でゴミを極端に少ない状態に出来たという達成感が参加者全体を1つにしたのです。
まとめ
今回ラーフェスで開催した「芋煮でつながっていいとも!」には、140名が参加し、8チームに分かれて芋煮を共同で作り上げました。各チームのメンバーは、調理の過程で全てのメンバーで役割分担を行い、協力しながら美味しい芋煮を完成させることで、一体感と達成感が共有されました。また、持ち寄りの食材や飲み物を通じても自然な会話が生まれていきました。
出来上がった芋煮を他チームにもシェアする時間では、参加者全体の交流が深まり、新たなつながりが生まれていったのです。また、環境に配慮した取り組みにより、出たゴミを最小限に抑えることにも成功し、そのことも参加者全体の一体感に寄与しました。
また、普段はなかなかお会いすることが出来ないような方も一緒に混ざって調理していて、芋煮会では、地位や役職などは関係なく、美味しい芋煮を作るという目的のために、フラットな関係で、お互いが能動的に動いていく、まさにコミュニティ思考を体現していたのも印象的でした。
このイベントを通じて、参加者同士の距離が縮まり、芋煮会のテーマである「持ち寄る」「作る」「分け合う」の精神と、コミュニティ思考が実践されていました。
初対面の人々も温かな雰囲気の中で親しみを感じ、一つの目標に向かって協力し、作り上げ、シェアする喜びを体験する場となりました。結果として、イベント終了後も心に残る新たなつながりが多数生まれ、コミュニティの絆が強化されたのではないかと思います。
そして、イベント終了後に、たくさんの参加者の方から「とても楽しかった!」「めちゃ美味しかった!」「すごく良い時間だった!」「色々な人と話すことができた!」「また是非やってほしい!」という数多くのポジティブなフィードバックをいただけたのは本当に嬉しかったです。今回の「芋煮でつながっていいとも!」は第一回。まだまだ進化の余地を感じてもいるので、また機会があれば是非開催したいと思います。
参加者、支えてくださったボランティアスタッフの皆様、会場であるライジングフィールドのスタッフの皆さま、そして主催の運営チームの皆さまに心より感謝です!ありがとうございました!またやりましょう!イモニー!!
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