文理の枠を超えたキャリア教育を推進しよう
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
私たちの働き方が大きく変化している中で、特に注目されているのがジョブ型雇用への移行に伴う専門性をどう身につけるかという話です。専門性を高めるにはスキルと経験が必要ですので、リスキリング(学びなおして新しいスキルを身につける)の重要性がクローズアップされています。
ではこれまでの日本型雇用における総合職が悪いのかというと、そうではありません。何ごとにもメリット・デメリットがあります。両方を経験した立場で言わせてもらうのであれば、総合職のメリットとして大きいのは未経験でも違う職種にチャレンジができるということでしょう。
特にこれは若い方々、キャリア形成の途上にある場合には有効です。まだ自分の強みを認識できず、どの職種で一番パフォーマンスが出せるのか。そのために必要なスキルをどう伸ばせばいいのかもわからないからです。安定した雇用(つまり容易にクビにならない)の中で、OJTなどの実践を通じて探索できるメリットが非常に大きいです。
一方でこのメリットは、主に新卒入社の正社員だけが享受できる恩恵であることも指摘したいです。我々のような就職氷河期世代は、社会全体において新卒のタイミングで正社員になるチャンスが大きく減りました。非正規雇用では実はかなり前からジョブ型であり、雇い止めのような契約満了の形で雇用契約も終了します。日本は雇用流動性が低い、日本型雇用のせいだというのはある側面では正しいのですが、6000万人超の労働市場全体における2000万人程度の話です。
また、学生の早い段階からキャリア形成をどうすればよいかという教育が不足していることも課題です。多くの方は就職活動の1年前になって初めて、この教育を受けます。業界研究、自己分析、入社後のキャリア等々、急に知らない世界が目の前に広がり始めます。しかし、そのために必要なスキルや検討のための情報がわかったところで、時既に遅しという感覚も持つことでしょう。
企業型も新規事業やイノベーション、つまりこれまでの延長線上にないものを求めており、特に若手にそれを期待しています。そのためには専門性はもちろんのこと、企業が持つ資産を理解しながら新しい世の中の課題を解決するための提案力が必要です。実行するためには広く浅い教養と、深い専門性を持った人々のチームが必須です。
東京工業大学に限らず、多くの大学で類似の取り組みが始まっています。ビジネスの世界では各領域にとらわれない越境型の研究やパートナーシップによるイノベーションのための仕組みが多くつくられています。それを担う人材を早いうちから育成することは、非常に有効な施策のひとつでしょう。
似たような話で、文系・理系という旧来のくくりを見直すことも必要でしょう。この区分は実は日本特有のものであると言われており、その起源は旧制高校の制度にあるようです。旧制大学では文科甲・乙類、理科甲・乙類などに分けられており、プラス外国語(主に英語かドイツ語)が必要でした。その予備校としての旧制高校は文科・理科に分けられていたため、今もなお高校時に文理の選択をする習慣が残っているのではないかという説があります。
現在社会においてはテクノロジーをどう使いこなすかが非常に重要であり、そのための基礎スキルというのは文理の別を問わないものです。
そろそろ、明治時代にできた制度を引きずるのは限界があるのではないでしょうか(民法の一部もそうかもしれませんが)。
また、起業家精神を学ぶ機会がないということも指摘されています。
これから日本は課題先進国として、他の国ではまだ経験したことのない大きな社会課題に立ち向かわなければなりません。そのときに有効なのが、ゼロからコトを起こす、起業家たちです。その担い手をどう社会全体で育成していくのか、イノベーションの種は中長期的な人材育成と教育にあると考えています。
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タイトル画像提供:Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)