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世界で約2,000万人:オンラインニュースメディアの有料購読者数 [FIPP調査レポートより]

ロンドンに拠点を持つ業界団体のFIPP(International Federation of Periodical Publishers: 国際雑誌連合)が昨日、「Global Digital Subscriptions Snapshot - November 2019」と題した世界のオンラインニュースメディアの有料購読者数をまとめたレポートをリリースしました。過去に2018年6月2019年3月にもレポートが作成されていて、今回で3回目の発行となります。

Technology companies up the stakes as paid digital subscriptions near 20 million globally. (世界で有料デジタル購読者が2,000万人に近づきつつある中、テック企業は競争を激化させている) 

レポートの冒頭に掲げられているレポートの冒頭には、1年半前には1,000万人程度だった世界の主要メディアの有料購読者数の規模が倍増していることを受け、アップルやグーグルによるサブスクリプションビジネスへの取組も積極化していることが触れられています。

それぞれ公開されている有料購読者数(その出典のリンクも含め)がレポートの中では詳しく紹介されています。
以下のグラフは、2018年6月にリリースされた第1回のレポートの数値と今回発表されたデータをまとめたものです(主要メディアのみ抜粋。2018年6月の日本経済新聞のデータはオリジナルのレポートには含まれてなかったので2018年6月時点の公開情報を参照)。

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ニューヨーク・タイムズは280万から380万に大きく数字を伸ばし、2位のウォール・ストリート・ジャーナルは40万人増、ワシントン・ポストも50万人増と、大きな成長の様子が伺えます。

4位のフィナンシャル・タイムズと6位の日本経済新聞に関しては伸び幅は上位3社や5位のガーディアンと比較すると見劣りするかもしれないものの、月額単価が他社に比べ2〜5倍であることを考えると着実な成長路線を描いていることが分かります。先日メデイアアナリストのケン・ドクター氏が日経新聞社によるFT買収から4年を振り返り、両社トップへのインタビュー記事を掲載しています。サブスクリプション戦略、ニュースレター活用、データ活用などがよい相乗効果を生み出していることが詳細に紹介されているのでご興味ある方はぜひご覧ください。

なお、レポートの中にはニューズピックスの読者数も含まれているものの2018年Q3の数値(6万人)と古い情報のままになってます。先日発表された2019年10月末時点の最新情報によると有料課金読者は109,810人、そして11ヶ月前に有料課金を始めたクォーツの購読者数も10,438人と着実に増加している様子です。クォーツは日本語版もリリースとのことで、今後経済メディアを中心に国内でもサブスクリプションの潮流が発展していきそうです。

今回のレポートの中で、今年の6月に公開された英オックスフォード大学ロイター・ジャーナリズム研究所がまとめた調査、「Digital News Report 2019」についての言及があります。ロイターレポートの中では「サブスクリプション疲れ」という言葉を使い、悲観的な市場予測が記載されていましたが、実際には予想を覆す形でサブスク市場が広がっている、と主張しています。ただ、リソースが十分にある大手メディア以外の中小メディア、地方ニュースメディアの実態に関し、今回のレポートではあまり言及されてないことも伝えておかなければいけないと感じます。

*以下はロイターレポートの概要をまとめた記事からの抜粋

「Pivot to Paid(有料課金に舵を切れ)」とばかりに各社が期待を寄せている取り組みである一方、読者は一人でいくつものニュースメディアを購読をするわけではなく、「サブスクリプション疲れ」という言葉も生まれるほど、今後の見通しは厳しい状態にあるのが現状です。今回の調査結果から見えてきた結果は、そのような淡い期待に対する厳しい現実でした。

注目が集まるニューズレター(とポッドキャスト)

有料購読の潮流と足並みを揃えるように、大手メディアが軒並みニュースレターを始めていることにも今回とても注目しておきたい点です。先日公開されたFT CEO へのインタビューの中でも、ニュースサイト内のミニブランドとしてのニュースレター戦略を積極化させていることが強調されています。現在FTだけでなんと41種類ものニュースレターを配信しています

そしてあまりプロモーションはしていない印象ですが日経新聞でもこの春からニュースレターへの注力を進めているようです。現在11ものニュースレターが配信されています。特にFTと日経(Nikkei Asian Review)とのコラボで生まれたアジアのテクノロジートレンドをレポートする 「Tech Scroll Asia」などは意欲的な取組で、SNS経由でなくともメールでニュースを読むという習慣が今後どのように形成されていくのか、注目したいところです。昨日スタートしたばかりの日本版クォーツも「ニュースレター革命」という言葉を用いて、新しいニュース消費のスタイルに挑戦するようです。

ニューヨーク・タイムズの The Dailyのようなポッドキャストへの積極投資も含め、「ニュース消費の習慣化とエンゲージメント促進」がやはりサブスクリプションの成功に欠かせないものになりつつあることを改めて感じます。半年後、1年後、今回のようなレポートが発行される頃にはどのような変化が生まれているのか、とても楽しみです。

今回参照したレポート全文配下のリンクからダウンロード可能です。
Global Digital Subscriptions Snapshot - November 2019

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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