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だれもがどこでも働けるような社会へー多拠点居住は一部の人たちの特権なのか?

こんにちは、Funleashの志水です。梅雨真っ盛りですね。いつもたくさんのスキ💗ありがとうございます。とても励みになります。

さて、今回の日経Comemoのテーマは「#2拠点居住の理想スタイル とは」です。すでに多くの専門家や実際にやっていらっしゃる方々が2拠点もしくは多拠点をベースにした新しいワークスタイルを提唱されています。
こちらのマガジンにワーケーションをはじめとする多拠点居住のメリットや効果、価値などが整理されているので読んでいただくとして・・

日本にもようやく副業・兼業解禁、リモートワークの流れが活発化してきたところにコロナ過の影響もあって一気に加速しましたね。なかなか進まなかった働き方改革関連の課題改善や解決への前進にコロナが寄与したというのは皮肉なことです(やればできると確信しました笑)

上のような記事を読んでいると、私自身も数年以内に、国内外の場所を拠点とした働き方にシフトしたいという想いがますます強くなりました。サラリーマン時代から仕事と休暇を組み合わせたワーケーションをしたり、家族の事情で地元福岡で数か月仕事をする二拠点生活の経験があるため、その効果は身をもって体感しています。

以前から働き方の自由度が高い職業に就いている人や一部の富裕層が、複数の拠点で働くというスタイルはありましたが、テクノロジーの進化や多くのサブスク・サービスの登場により多拠点生活のハードルが低くなりました。地方自治体や中小企業においても、人材獲得のために、企業の高度な専門スキルを持つ人材や、個人事業主などの働く場所や時間に制限がない人材を受け入れることにより、都市と地方の二拠点生活への動きが急速に活発化しているようです。

下の記事でも副業希望者と地方企業を引き合わせるサービスの展開に伴い、DXや新規事業開発、マーケティングなどの経験を持つ人材が副業を通して地方に貢献する仕組みが整ってきていることがわかります。

新しい働き方が日本に広まることは喜ばしいこと。と同時に、天邪鬼の私にはある疑問が頭に浮かんでしまうのです。

これってフリーランスなど高度な専門スキルを持つ人材、ないしは金銭的な余裕のある一部の人だけの特権ではないのだろうか?

「特権」という言葉は厳しく感じるかもしれません。特定の人・身分・階級に与えられている権利を特権といいますが、ここで私がイメージしている特権は意味が少し異なります。(上智大学外国語学部教授の出口先生が定義されているものに近い意味です)

「マジョリティ性を持つ社会集団にいることで、労なくして得ることのできる優位性」


ここでいうマジョリティというのは数そのものではなく、他の人よりも権利優位性を多くもっていることを意味します。例えば社会的階級で言えば高所得とか低所得か、組織の中だと正社員と非正規社員か、身体的特徴だと健常者と障がいを持つ人など前者がマジョリティです。ポイントは、「労なくして得ることができる優位性」を保持していること。

二拠点生活やワーケションが拡大するにつれて、それを享受する人がいる。一方で時間で管理される一般社員あるいは工場や店舗社員など現場から離れられない人々が置いてけぼりにならないだろうかという問題意識が浮かびます。

例えばこの記事を見てみましょう。金融大手UBSがハイブリッド型の働き方を導入するそうです。優秀な外部人材のニーズが常にある欧米企業において、ハイブリッドな働き方は今後主流になると思われます。
ここで私が気になるのは、「約3分の2の従業員がハイブリッド型の働き方が可能な職種がある」という点。残りの3分の1の社員はその恩恵を受けられないのだけど何が打ち手はあるのだろうかと思います。

従業員の最大3人に2人を対象に在宅勤務と出社の「ハイブリッド(複合)型」の働き方を恒久的に認める方針だ。こうした取り組みで採用に際し、米国の金融機関より有利な立場を確保する狙いがある。(中略)
関係者によると、全世界の総勢7万2000人の従業員を対象とした社内調査で約3分の2の従業員がハイブリッド型の働き方が可能な職種にあることがわかった

職種や雇用形態が違うから仕方ないでしょうといわれればそれまでです。でも私は恩恵を受けられない人にもなんらかの代替案を考えていくべきだろうなと思うのです。

こう考えるのは、私が8割以上の非正規社員を抱える大企業で20年近く働いていたからかもしれません。機会の公平性や公正さには敏感なのです。
「恩恵を受けられない社員」に対して彼らの意欲を下げないようにどんな補填をするのか?全員一律の公平な制度を(これは無理です)提供できない中で、公平な機会が与えられていると感じてもらうためには何をすべきか。そこに思考が及ぶのです。

例えば、10年ほど前に前職で「サマーアワーズ」というプログラムを入れたとき。この制度は猛暑で疲れがたまって、体調を壊しがちな夏の期間中(7-9月)毎週金曜日の午後は仕事をせずに休息に充てたり、旅行などリフレッシュして生産性を高めるという趣旨で全社に導入しました(不就労分は給与から引かない、いわば特別半日有給のようなイメージ)最初に提案したときは経営や現場マネジメントから猛反対を受けました。一番の理由は、本社の社員は恩恵を受けるけれども、お客様が目の前にいらっしゃる店舗の社員を金曜日午後に帰宅させるわけにはいかない。一部の社員しか活用できないのは不公平だという指摘です。もっともですよね。
どんな対策を講じたのか詳細は割愛しますが、さんざん頭をひねって店舗の社員に対しても同様の(少し内容は異なるもの)「選択肢」を与えることによって最終的には受け入れられました。
1人でも多くの社員が活用できるようにできる限り障害を排除する。制度にちょっとした工夫をする。その結果、他の優れた制度よりも、このサマーアワーズが最も社員から支持される人気の高いプログラムになりました。経営や人事は同じ会社内で分断するような制度を作ってはいけません。

「特権を与えられた社員」が「そうでない社員」がいることを認識し、彼らの声を届けてくれたこと、また、その声に耳を傾けて内容を改善し続けたので支持されたと思っています。同じチームに「特権が与えられた社員」と「それ以外の社員」が混在すると、不公平感や分断が生まれる。そうすると士気も効果も下がります。
一部の社員がワーケーションで創造性があがったとか、リフレッシュしたとかSNSに投稿しているのをコロナ過で出勤を余儀なくされた社員が見たらどう思うでしょう。腹が立ちますよね、恐らく。

この例は組織内のことですが、「特権がある人たち」がそのことを自覚する、そうでない人たちがいることを認識する。この視点は社会の中でも大事だと思っています。特権があることに無自覚のままだと(より大きな影響力を持つことが多いため)そうでない人たちに気づかず、配慮のない政策・施策や法律を創ったりしてしまうことが往々にしてあります。不毛な対立、格差、差別を生んでしまったりすることさえありますよね。

では、より多くの人が「どこでも働けるようにする」にはどうしたらいいのでしょうか。 

まずは個人の観点。とにかく自分の専門性を高めることが不可欠です。本業での能力開発はもちろん、自身の専門以外の領域でスキルや知識を獲得することが求められます。そのために副業・兼業の道を探す方法があるでしょう。本業で報酬が保証されていれば、未経験のことに思い切って挑戦できます。自身の能力開発、スキルアップができれば、人材を欲しているところとのマッチング確率も高くなります。ぜひ手伝ってほしい!という人材になりましょう。

人手不足が深刻な地方の産業(農業をはじめ飲食や観光)では未経験者でも受け入れ先がたくさんあります。高度な専門人材だから自分はダメとあきらめずに自分のできることをやってみる。可能性を拡げる機会を積極的に模索していくことがより重要になります。

次に会社の観点。「どこでも働ける」の制約要因が実は会社の仕組みだったりします。副業申請した友人が「就業時間の月160時間は自社で勤務してほしい。それ以外の時間を使った副業は可能です」そう会社から言われたそうです。育児も家事もあるし、本業も忙しい。それは無理だわと諦めたそうです。(ちなみにこの方は残業支給されないエグゼンプト。厳密にいえば法律違反です)厳格な「時間管理」の制度がある場合、多拠点生活やワーケーションを社員が利用するのは現実的に難しいでしょう。

そこで提言したいのは「裁量労働制」の見直しです。18年の働き方改革関連法が成立した時に問題が発覚して先送りされたまま放置されているテーマです。そもそも1947年に制定された労働基準法は労働時間に比例する工場労働をモデルとして設計されてます。明らかに時代遅れ、これが元凶です。この法律により、現在のホワイトカラーの多くが今だ労働時間に応じて報酬が決まるという状況。ここを変えていくことは喫緊の課題です。裁量労働制の対象者の8割が「満足」「やや満足」している事実を考えると、適用される職種を拡大して柔軟性の高い働き方にシフトすべきなのです。

とはいえ、法律が制定されても施行は先になります。日本全体がこの方向に向かっていることは明らかです。もはや待ったなし。
法律の改定を待たずに見直し、オリジナルな制度を導入することで他社との優位性を確保することができます(このあたりはこちらを(このあたりはたくさん方法があるので困ったらご相談ください)

個人の価値観が多様化し、社会が急激に進化する日本。一部の人の特権ではなく、だれもがどこでも働ける社会へ

手始めにこれを読んだ方から自分ができることをやってみましょう!

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