「103万円の壁」が引き上がると、どうなる?所得税、住民税
与党が手取りを増やす税金の「103万円の壁」の引き上げを提案しています。具体的には、所得税の基礎控除などの額を現在から75万円引き上げて、「178万円」にするよう求めています。
所得税の基礎控除は、多くの方に影響を与えるために、控除が引き上げられると減税効果は働いている方の手取りを増やすことにつながります。
その一方で、控除を引き上げると地方財政が圧迫されるのではないかという懸念が多くの地方から出ています。
そのため、所得税の基礎控除(48万円)を引き上げる一方で、住民税の基礎控除(43万円)を引き上げ対象から除外するという「分離案」が与党内で上がっているようです。
ここで、年収の壁についておさらいをしましょう。年収の壁に関しては、本人の手取りだけではなく、世帯で影響します。
例えば、パートタイマーの方のパートナーの企業が支給する配偶者手当の要件なども103万円で設定されている場合もあります。また、学生のバイトの場合、103万円を超えると、親が特定扶養控除を受けられなくなります。親の所得税が10%の場合、約6万円ほど所得税が増え、住民税にも影響します。
これらの対象となる要件も現在は103万円に設定されているので、合わせて引き上げの検討がされる必要があるでしょう。
税金の壁が見直されたとしても、106万円の社会保険料の壁は残ります。社会保険料は年間15万円程度なので、この分の手取りがガクンと減れば、そこで働き方の調整が出るからです。
社会保険料発生で手取りがガクンと落ちるゾーンのパート労働者に限って、雇用主側がその一部を負担できるようにする案が出ています。
社会保険料負担をパートタイマーの分だけ事業主が負担するなど公平性に欠けるという声も上がっていますが、どのような落としどころになるのか注目されます。
また、所得税の基礎控除を引き上げると、富裕層への減税が大きくなります。他方で給与所得控除の部分を引き上げると低所得者など特定の人への配慮をすることができます。
筆者が住んでいるシンガポールでは日本と同じ累進税率ですが、最初のS$2万(約220万円)までの課税所得は税率0%と低所得者への配慮があります。基礎控除は一律S$2000(約22万円)です。
今回の大改正によって、どの層を政府はどのように救うのか見守られます。いずれにせよ、税金と社会保険料と一体となって改革が行われないと意味がないと感じます。