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能と演劇から、日本人の身体とイノベーションを考える。「アート思考×ビジネス #02」イベントレポ

uni'que代表 若宮和男さんプロデュースのCOMEMOシリーズイベント「アート思考×ビジネス」。第2弾のテーマは「日本流イノベーションの可能性 アート思考と身体」です。東京・原宿のTOT STUDIOで23日、能楽師の安田登さんと演劇家の藤原佳奈さんをお招きし、日本人の身体とは、日本独自のイノベーションとは……について熱い議論が繰り広げられました。すべてはお伝えできませんが、ハイライトをお伝えします。

今回登壇したのはこのお三方

起業家でuni'que代表の若宮和男さん

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建築士としてキャリをスタート、その後、アート研究者、モバイルIT業界を経てuni'queを創業。uni'queは「全員複業」というユニークな会社です。

続いて能楽師の安田登さん

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下掛宝生流キ方能楽師。ワキ方の重鎮、鏑木岑男の謡に衝撃を受け、27歳のときに入門。国内外を問わず舞台をつとめ、能ワークショップ、能のメソッドを採り入れた朗読ライブも公演、指導しています。

そして、演劇家の藤原佳奈さん

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mizhen主宰。京都大学文学部卒業。2012年、演劇創作ユニットmizhen旗揚げ。以後、全作品の脚本や構成、演出を担当。新作『小町花伝』は、『卒塔婆小町』から着想を得て書き上げたそうです。

アート思考とは

若宮さん これからはキーワードとして「分からない」ことが大事になってくるのではないか。デジタル思考は、「理解」。分かるものの中で考える。説明文のようなもの。読めばわかる。デザイン思考は、そこに感覚的なものが入る。「共感」。キャッチコピーみたいな感じ。

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アート思考は、もっと「情動」的なものと僕は考えています。詩、みたいなものはみんな、わかんないと言い出す。でも、わからないものを、わからないからといって切り捨ててしまっては、新しいイノベーションの種はなかなかできません。「身体」も、自分自身なんだけど、わかるようでわからない。よく考えると日本人は頭だけで考えて行動してきたわけでなないと思いますが、ビジネスの現場では「説明がつくこと」のほうに振れていると思うので、改めてこういう話をしたい。

伝統と初心

安田さん 能が現在まで650年も続いたのは、つまらないから。江戸時代にはもうつまらなかった。能楽師は観客を起こしたい欲求にかられたはずだが、踏みとどまった。マーケティングをし出すと、観客中心主義になってしまう。観客は「ありがたい」が当たり前になってしまう。そして「もっと」となる。映画がまさにそうなっている。

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「伝統」と「初心」も能が続いた理由だ。伝統とは誰でも継いでいけるシステムをつくること。天才に依存していたら、昔だったら戦争などで多くの若者が亡くなる時点で終わってしまう。例えば、能では、鼓のポンという音、「よ~」という掛け声の間に「コミ」があります。舞台ではほとんど聞こえませんが、もっと大事なのがコミ。このコミによって次の掛け声が決まり、拍子が決まるんです。指揮者もいないなか、呼吸を感じる力が大事。呼吸を感じる力を残すことで、完全にマニュアル化、ルーチン化しない。世阿弥はこんな伝統の仕組みをつくった。

観阿弥がいった「初心、忘るべからず」。もとの意味は、自分が次の段階に進むときに、かつての自分を切り刻みなさい、という意味。能は、4回の大きな初心、ドラスティックな変化があった。最初は豊臣秀吉の時代。それまでは気楽な恰好で舞っていたが、いまの能装束がこの時代にできた。動きも制限された。第2は江戸時代初期。能が突然ゆっくりになった。それまでは今の2倍から3倍の速さだった。次は明治時代。能の公演は必ず外でだったが、能楽堂でやるようになった。続いて、戦後。それまでのパトロンではなく、お客さんから入場料をもらう通常の興行形態になった。これらが受け入れられたのは、能楽師の体に初心的身体があったから。稽古の過程で、「初心」を見に染みて味わわせる。これがいままで能が続いてきた大きな理由だ。能をしている限り、初心、変化する身体を要求される。

見えないけど感じる

藤原さん 私は、可視化できないものを信じる。「目には見えないけれども、感じ取るものを感じる」作品をつくりたいと思っている。使っている言語によって、世界のとらえ方や思考は変わると思う。日本語は、英語と比べてどこに落ちるかわからない、あいまいさがある言語。そういう日本語の感覚を持っているからこそ、能みたいな、ないところにあるものを信じる、あいまいな美学が生まれたのだと思う。「日本語脳」が大きなヒントになるのではないか。

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演劇では、役者がただ立っていても、役者が何を想像しているかとか、体内で何が起きているかなどで、それが空間に影響し、観客が感じる体感は違ってくる。体感する実験をやってみましょう。片手に玉をイメージして持ってみてください。野球ボールぐらいの重さをイメージしてみてください。手を動かさずに、ただ重さがあると想像してください。続いて、このボールが、めっちゃ熱いと思ってボールを持ち続けてください。次に、熱い球を持ち続けるのが時給2000円だと思って持ってください。さらに、30分後に爆発してしまう球だと思ってみてください。外からみていると、ビジュアルという意味では変化がわからない。でも、その人の体内では何かが起こっていて、それは人によって違うと思うが、それが空間に影響するのが面白いと思う。

「分からない」とは

若宮さん イノベーションについていえば、そもそも自分の頭で思いついたことを、あるゴールに向かってやっているということは、イノベーションじゃないことをやってる可能性がある。そうじゃないところへ「跳ぶ」ときに、運とか縁を研究してサイエンスになると、「ほうほう」ということになるかもしれない。いま見えているところじゃないところへ行くことが大事かなと思います。

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「分からない」というのは、考えるのをやめましょうとか、論理は意味がないとかいうことではなくて、論理ではとらえらえないところに入っていかなくてはいけない。イノベーションとは、そもそも自分に見えている軸を変えることだとすると、計画的にできることではなくて、事故みたいなところもある。このイベントが一つの縁になればいいな、と思います。

今回は山野元樹さんがグラフィックレコーディングを手掛けてくれました!

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ご参加いただいた方からすでにレポートが上がっていますのでご紹介します。


こちらは第1弾のリポートです。今回、興味を持たれたかたはどうぞお読み下さい。

最後に、次回、第3弾のお知らせです。5/8とまもなくですので申し込みはお早めに。TOT STUDIOでまたお会いしましょう!



 


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