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『読んでいない本について堂々と語る方法』という本を読まずに語ります

読書量

読書家の方々の読まれる本の数といったら、想像を絶します。Zoomの背景にある本棚に並べられた本の数に圧倒され、その膨大な知識量に裏打ちされた発言の説得力に、なるほどと頷く日々です。

家族の中でも、僕の読む速度は極端に遅く、さらさらと読み進める妻や娘たちを見るたびに、一生に読める本の数には限界があるなあと実感します。最近は、Audibleなどの「読み聞かせ」サービスを活用しています。

そうした、読書量について、なんとなく敗北感というか、物足りなさというか、そういう感覚を持っていたところ、数ヶ月前に、素晴らしいタイトルの本と出会いました。

『読んでいない本について堂々と語る方法』ピエール・バイヤール著 大浦康介訳(筑摩書房)

読んでいない、という状態

この未読状態にも、いろいろとあるのだそうです。

未読の諸段階(「読んでいない」にも色々あって……)
1:ぜんぜん読んだことがない本
2:ざっと読んだ(流し読みした)ことがある本
3:人から聞いたことがある本
4:読んだことはあるが忘れてしまった本

『読んでいない本について堂々と語る方法』ピエール・バイヤール著 大浦康介訳(筑摩書房)

僕は、この本については、2に該当します。その上で、僕なりに大切だと思ったのは、抽象度を上げた形で対象について語ること、です。

抽象度を上げて語る相手は誰か

話は変わりますが、事業を大きく育てていく中で、メンバーを増やしていく必要が出てきます。会社を経営していても、社内で事業を推進していても、どこかで必ず、メンバーを増やしたり、入れ替えたりするタイミングが訪れます。

そのとき、仕事を任せる相手は、その仕事に対して、自分よりも実務執行力の高い人を起用することが大切だと思います。よく言われる、「自分より優秀な人を部下に持つ」ということかと思うのです。

これについては、下記にて書いた、釣り針をつくる人と釣りをする人の協力関係に近い感じだと思います。

自分が苦手なことを得意とする人と手を組むことで、双方の生産性が上がる、というものです。

この、自分が苦手なことを得意とする人と話をするとき、読んでいない本について堂々と語ることに通ずる感覚があります。

以前の仕事で、コンセプトづくりに関わる仕事をしたのち、それを具現化するための開発チームづくりも行いました。

開発チームは、サービス全体のディテールを描くディレクター、音楽やデザインなどのアートワークのディレクター、そして仕様づくりから実開発を行うプログラマーを組み合わせたチームでした。

僕はプログラムは書けないし、音楽もからっきしです。けれど、そうしたチームの人々と、さまざまな議論をしっかりと積み上げることができました。

それは、互いの仕事を尊敬し、尊重しつつ、抽象度を上げて語り合うことができたからだと思うのです。相手の背後にある、膨大な具体を、そのまま語り合うのではなく、互いに理解しえあえる粒度にまるめながら、しかし具体を共視しながら語り合う。

チームビルディングと抽象化対話

そうした姿勢こそが、多様なバックグラウンドを持つ人たちとチームをつくっていく上で大切なのではないかと思うのです。

読んだことがないからと言って臆する必要はなく、とはいえ相手の背後にあるものをざっと斜め読みすることで共通言語は持ちつつ、それらを手掛かりに、抽象度を上げ下げしながら語り合うこと。それは、チームビルディングとしても面白いのではないかと思うのです。

とはいえ、なかなか実践するのは難しく。相手と自分との間に、少しでも不和や不信があると、こうした対話は成立しません。

自分自身について語る

冒頭の本の目次に、次のようにあります。

心がまえ
1:気後れしない
2:自分の考えを押しつける
3:本をでっち上げる
4:自分自身について語る

『読んでいない本について堂々と語る方法』ピエール・バイヤール著 大浦康介訳(筑摩書房)

今回のnoteは、このうち、4をやってみました。この挑戦、うまくいったのでしょうか。

ただ、チームづくりをする上で、2はおすすめしませんが、1と4は、とても大切だということは間違いないと思います。

ここまで読んでくださった方も、ぜひ、この本を読まずに、この本について語ってみてください。失礼しました。

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