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海外に顧客を持たないと、日本のビジネスの成長はいよいよ難しい

久しぶりにヨーロッパに滞在して感じるのは、物価の上昇とそれに追い打ちをかける円安である。

 日本のレベル以下の設備の現地のビジネスホテルの1泊が2万円以上という現状を見ると、おいそれと日本人が海外に出ることは難しくなっていると感じる。ホテル代だけを見ると日本の2~3倍という感覚だ。現に、日本の航空会社を利用して欧州との間を往復したが、ほぼ満席の機内で、乗客のうち日本人は2割にも満たないほどであり、8割がた外国人という状況は、これまでに経験のない光景でありとても不思議な感じがする。

国内だけ見ても、物価は大幅に上昇しており、賃金も多少アップしているが物価上昇を加味した実質賃金はマイナスである。

こうした状況の中で改めて思うのは、日本が今後志向するべきビジネスは、海外の顧客にお金を払ってもらうビジネスが中心でなければ伸びを期待できないだろう、ということだ。

 もちろん、今の円安はアメリカの高金利に影響された一時的なものだというのも、要因の1つとして間違いではないと思う。ただこの記事で唐鎌さんが指摘しているように、円安は構造的なものであって今後かつてのような1ドル100円とか80円といった時代には戻らないという感覚がある。少なくても長期的にはそうしたことは期待しにくいのではないだろうか。

 その点を考慮すると、日本(円)の中で閉じていると分かりにくいかもしれないが、日本は相対的には世界の中では国力が低下し貧しくなっていく、すでにそうなり始めている、というのが残念ながら現実なのだろう。そうであれば日本に閉じたビジネスをしていても、大きく経済的な利益を上げることは難しい。そこに高齢化と人口減少が追い打ちをかける。

加えて、海外のものやサービスを輸入して日本人に向けて販売するビジネスは、日本人の購買力が低下している上に人口減少も相まって、やはりビジネスを大きく伸ばすことは難しいのではないだろうか。薄利多売で大きなシェアを得るといったビジネス手法はあるかもしれないが、これには経済的な基礎体力が必要であり、一握りの大手の一人勝ちということになる可能性が高い。

 そして、投資家が同じような考え方・見通しを持っているのであれば、投資家も国内に閉じたビジネスや海外のものを日本に輸入するといったビジネスについては、一般的には将来性を認めず、投資を渋るのではないだろうか。 そういう意味でも、海外の顧客からお金を得るビジネスでないとますます日本のビジネスは先細って行ってしまうのではないかと思う。

これまで日本は、ある程度の経済規模があるがゆえに、スタートアップのビジネスを見てもあまり積極的に海外に顧客を取りに行くことに取り組んでいなかった印象だった。しかし、今後はデフォルトとして海外に顧客を持つことを考えていかないと大きな成長は一般的には期待できないであろうし、またそうした日本企業が出てこないと、先ほどの唐鎌さんの指摘にもある通り、日本人の投資資金が日本国内に向くことも期待できないだろう。

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