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「4種類の雑談」を使い分けてチームのコミュニケーションを変えよう

 Potage代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。コミュニティづくりを仕事にする中で、ファシリテーションをする機会が数多くあります。話し合いの結果、組織や個人の可能性をすっと引き出していくのが仕事です。コロナ禍になり、職場でのコミュニケーション機会が限定される中で、いかに「話す機会」をつくっていくかがより重要になっていて、ニーズの高まりを感じている昨今です。

 サイバーエージェントさんでは、「決める会議」と「雑談の機会」を明確に分けるかたちで、会議の仕組みを見直しているそうです。対面出社日も設定することで、チーム感の醸成を促していて、なるほどと頷かされます。これはあくまで一例ですが、各社それぞれ「雑談づくり」に試行錯誤しているようです。

 コロナ禍になってから、雑談が大事だ!という声を多く聞くようになりました。家でリモートワークしていると、孤独感を感じて、チームとのつながりを求めるようになるんですね。そんな声を数多く聞く中で、そうだよな、雑談大事だよなと色々考えて記事やコラムをあさっていたのですが、その過程で気づいたことがありました。雑談の大事さを主張する方の「雑談」の定義が、それぞれ微妙にずれていたのです。

 そこで自分なりに整理してみたら「雑談には4種類ある」という気づきにつながりました。今日はその気づきをシェアできればと思います。

 上の図が解説になります。この図を見るとだいたい全部伝わるのでこの後の説明は蛇足かもしれませんが、補足説明が欲しい方はぜひお読みくださいませ。

 横軸(X軸)は「はじめて会う人⇔よく知っている人」で線を引きます。初対面の人は左端、何度かあってるけどどういう人かあまりよくわかっていない人は真ん中からちょっと左、職場の同僚は右、という塩梅です。

 縦軸(Y軸)は「テーマ重視⇔関係性重視」で線を引いています。上にいくと「何らかのテーマについて話してコミュニケーションをとる」状態で、下にいくと「フリーテーマで相手の状況や考え方を知るためにコミュニケーションをとる」状態という塩梅になります。

 この「はじめて会う人⇔よく知っている人」「テーマ重視⇔関係性重視」の組み合わせで、雑談の種類を4種類定義してみました。

1. 関係性重視×知らない人~ネットワーキングの時間~

 (ほぼ)初対面の人と関係性をつくるための雑談です。人のつながりを広げるための雑談で、お互いの興味や価値観のさわりを知るための時間になります。

 いろんなイベントにいったときに「はじめまして」と名刺交換をして「私はこんなことをやっているんですよー」という自己紹介をしあうお話が、この「ネットワーキングの時間」の雑談に該当します。

 比較的苦手意識を持つ方が多い雑談でもあります。短い時間で自分のことを伝えるのって本当に難しいですよね。まして、他人のことを理解するのはなお難しいです。しかし、このコミュニケーションで、お互いの興味や価値観のさわりの部分を知ることで、その後の活動につながる意味のある出会いが生まれることだってあるわけです。

 コロナ禍になってイベントが減り、機会が減った雑談の1つでもあります。オンラインのイベントだとなかなかこの「カジュアルな自己紹介時間」をつくるのは難しいのです。ファシリテーターとしても工夫してデザインをする必要がある雑談になります。

2. テーマ重視×知らない人~気づきの時間~

 はじめて会う人、はじめて長時間話す人とじっくりあるテーマについて話す雑談です。この雑談は、テーマに関する新しいものの観方(気づき)を自身にもたらし、思考をアップデートするために非常に有効です。

 僕は職業柄、パネルトークを企画して聞き手(ファシリテーター)にまわることが多いのですが、このような「テーマトークのステージ」もこの「気づくの時間」に含まれます。

 この「気づき」は、本を読んだりコンテンツ学習したりといった「インプット」から生まれるものと似ています。ただし、ただのインプットとは違う部分が1つあります。何かと言うと「インプットとアウトプットを同時にできること」です。相手からは相手の気づきを提供してもらい、自分からは自身の気づきを提供することで、お互いの思考のアップデートにつなげていく。それがこの雑談において大事なプロセスなのです。

 これは「機会をつくる人が少ない」雑談です。ある専門家を招いて特定のテーマでだらっと話すことに対して、プレッシャーを感じる人も多いでしょう。しかし実は、この雑談はオンラインで非常につくりやすくなったものでもあります。モデレーション、ファシリテーションのスキルを身に着けて、自分で場を用意しさえすれば、低いコストで、すぐにでも増やすことのできる雑談の場なのです。

3. テーマ重視×よく知っている人~メンタリングの時間~

 自分がよく知っている人と、あるテーマについてじっくりと話す雑談です。この雑談は、自分の悩みや課題について話して、相手からそれに対する別の視点を提供してもらい、その結果、行動をアップデートするのに有効な「メンタリングの時間」と定義できます。

 例えば、パーソルキャリアさんが進めている「タニモク」というプロジェクトがあります。「他人に目標を決めてもらうワークショップ」略して「タニモク」なのですが、この会は最大4人のグループを組んで、一人が自分の今の状況について説明をし、その後に残り3人が相手の次の目標を提案していくというフォーマットになっています。僕も共著者のPeatix藤田祐司さん、uni'que CEOの若宮和男さん(お2人ともKOL仲間でもありますね)と3人で不定期でまわしていて、お互いの行動を支援し合う関係性をつくることができています。

 これは実は、オンラインで実施するのに非常に適した雑談です。対面よりも客観的な視点が発生しやすく、相手へのフィードバックが的を射たものになりやすいのです。オンラインでのミーティングはアジェンダを設定することがより大事だと言われているのですが、「相手の悩みに答える」などの明確なテーマがあると、いい雑談を産み出す触媒となるのです。

4. 関係性重視×よく知っている人~カルチャー共有の時間~

 すでによく知っている人、つまり会社の同僚や家族や友人などと、お互いの今の思考や状況を理解するために行われる雑談です。これは、場や組織、コミュニティへの帰属意識を高めたり、メンバー間の相互支援の文化を醸成するのに有効となります。

 これが「コロナ禍で最も失われた雑談」とも言えるでしょう。それまでは同じオフィスで集まって、「最近育児大変でさ」とか「夜眠れなくてさ」とか、さりげなく交換出来ていた同僚の状態も、今はなかなか共有する術がありません。正確に言うと「術はある」のですが、オンラインコミュニケーションは「わざわざ設定してまで不要不急の会話はしようとしない」というアジェンダ先行の傾向が強いので、このコミュニケーションの優先度を落としがちなのです。

 先ほどのサイバーエージェントさんの記事の「雑談をうながす仕組み」の「雑談」は、同僚との関係性を維持していく「カルチャー共有」の時間だという風に考えられます。様々な企業や組織がつくるのに苦労し、試行錯誤している領域になっています。

4種類の雑談を使い分ければコミュニケーション上手になれる

 整理する中で、プロのファシリテーターでもある自分は、この4種類の雑談を状況に応じて使い分けて、コミュニケーションのスタイルやフォーマットづくりを変えていっていることに気づきました。

 同じ「雑談」でも特性が違いますし、目指すゴールも違います。ゴールと特性が違えば、デザインするプロセスも変わってきます。自分が今、どのような「雑談」をつくろうとしているかを踏まえて、雑談を促す仕組みづくりをしていく必要があるのです。

 この4種類の雑談は、どれもとても大事なものです。自分のチーム、組織、コミュニティを見渡した時に、今不足している雑談はどれなのかを、しっかりと把握し、意識して増やしていく必要があります。

 好きな食べ物ばかり食べていると栄養が偏るのと一緒です。「今は野菜が足りていないな、結果ビタミンが不足してしまうから、ちゃんとサラダをランチに食べるようにしよう」という対処をみなさんされますよね?同じように「この雑談が足りないから、こんな風に手当てをしていこう」と決めて臨めばいいのです。

 オンライン上だと不足しがちという意見も聞かれます。確かにそのような側面はありますが、ちゃんと意識的にデザインしていけば、オンラインでも十分に雑談をつくれたりします。大事なのは、自分たちの状況をしっかり整理して、棚卸をした上で、どんな雑談をつくることが必要なのかを意識して補完していくことではないでしょうか。

 自分たちで難しければ、僕のようなプロに依頼して、雑談の機会づくり、設計、カルチャーづくりへの接続を促していくのも一つの手です。もしご興味ある方いらっしゃれば、いつでもご連絡いただけましたら幸いです。

 こちらの記事は「#その会議必要ですか」というCOMEMO編集部からのお題に絡めて執筆されました。

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