ドン・キホーテが提供する「出会い」と「コミュニケーション」とは?激安の殿堂が、Z世代から愛される秘訣を探ってみた
誰もが一度は買い物をしたことがあるであろう“激安の殿堂”ドン・キホーテが最近、各地に10代後半〜20代のZ世代と、10代前半のα世代をメインターゲットにした新業態の店舗をオープンしているそう。
その名も「キラキラドンキ」。食品とコスメを中心に取り扱い、白やパステルカラーを基調にした店舗を路面店だけではなくショッピングモールの中にもオープンしています。
そこで今回はZ世代目線で見た、ドン・キホーテがZ世代にとって絶好の買い物先となっている理由と、マーケティングの強さについて考えてみました。
Z世代にモノを売るなら、Z世代が売り手となれ!
まず共感したのは、徹底した同世代マーケティングへの姿勢です。
記事によると、Z世代をターゲットにした「キラキラドンキ」では店長を含め、スタッフが10代後半から20代で構成されており、仕入れ権限も持っているとのことです。
ドンキはもともと店舗に仕入れを任せているが、さすがにこの若さなので限定的な裁量かと思いきや、他の業態と同じ権限で仕入れを託されている。本部から情報提供はあっても「特定の商品を売るようには言ってこない
通常の店舗構成や売れ筋が他の店舗と大きく異なるなか、同じ目線を持った店員たちが徹底した情報収集を行い、目まぐるしく変わるトレンドに沿った商品を並べているのだそうです。
また、こちらの記事によると、「キラキラドンキ」はZ世代の社員が当初挙がっていた「ガールズドンキ」や「オトメドンキ」などの案に反対したことで名付けられたものなのだとか。
ちなみに、「キラキラドンキ」には上層部社員が反対していたそうですが、それを押し切ってでもZ世代の意見を採用したことに、ドンキの本気度が伺えますね…!
他にも店舗デザインなど、さまざまな箇所にZ世代社員の意見が取り入れられており、上層部は40〜50代の男性が中心にもかかわらず、「Z世代からZ世代に売る」姿勢が徹底されていることに驚きました。
僕の経営する僕と私と株式会社は、ほとんどがZ世代メンバーで構成されたZ世代マーケティングの会社です。
たとえ僕らが40歳、60歳になっても「Z世代(同世代)」に向けた企画を作り続けたいと考えているのですが、それは僕自身がZ世代であり「餅は餅屋」というように、Z世代のことはZ世代に聞くほうがいいと考えているからというシンプルな理由に尽きます。
なぜなら、目まぐるしく変化するZ世代のトレンドには、市場調査だけでは追いつけないからです。調査が終わったころには、トレンドはすでに移り変わり、遅れてしまう可能性が高い。
それなら、Z世代の僕が直接キーパーソンにヒアリングしたほうが、そのスピードについていけると考えています。Z世代の当事者がマーケティングをすることで、数字では表せないリアルな感覚や、同世代の起業家やマーケターたちの意見をビジネスにも生かせてきたと思います。
特に、最新のトレンドを掴むことが重要となるサービス業においては、いかに情報をキャッチしすばやく実行に移すかが勝負の分かれ目となります。
開業して30年以上の企業で、若い層が裁量権を持って進められることは非常に素晴らしいと感じますし、僕たちが「ドンキに行けば何でも揃う」と思えるのはこのような柔軟な姿勢があるからなのだと納得しました。
ドンキは「欲しいものとの偶発的な出会い」を満たしてくれる
また、さまざまな工夫によって何でも揃う店舗になっていることが、Z世代にとってAmazonや楽天にも負けない絶好の買い物先となっていると考えています。それは、「欲しいものが何でも買えるから」ではなく、「欲しいものとの出会い」があるからです。
Z世代は、簡単にクオリティの高いものが手に入るからこそ、基本的にネットを利用して欲しいものを購入しています。しかし、店舗での買い物やウィンドウショッピングを一切しないわけではありません。なぜなら、それが欲しいものと出会うきっかけになるからです。
Z世代は情報に溢れた社会に生きるからこそ、アイテムとの偶発的な出会いを楽しみたい世代でもあります。
以前、ぼくわたでファッションアイテムの情報収集に関する調査を行ったところ、SNSで情報収集する派に次いで、「情報収集はしない」という意見が多く、一目惚れで購入する人も一定数いることがわかりました。
アルゴリズムがおすすめの動画を判断し、下にスクロールすれば新しい動画が出てくるTikTokがZ世代から人気を集めているのも、こうした偶発性が理由なのでしょう。
ドンキには「歯ブラシ」「ネイル用の爪やすり」など、1つのジャンルをとっても本当にたくさんのアイテムが並んでいます。
ズラリと並んだアイテムのなかから、自分だけのお気に入りを見つける楽しみがあることはドンキの最大の強みであり、Z世代がオフラインの店舗に強く求めることなのです。
誰かを想像して「ニヤッ」とできる。ドンキはみんなのために買い物をする場所
Z世代がドンキで買い物をする理由としてもう1つ考えられるのは、ドンキが「誰かを想像して」買い物することに強みを持っているからです。
僕は、ドンキが「自分の私生活のために買い物をする場所」ではなく、パーティや宅飲み、プレゼント用など「みんなのために買い物をする場所」としてZ世代に認知されているのではないかと考えています。
皆さんも1度は大量のお菓子や飲み物、飾り付け用のバルーンなどを買いにドン・キホーテに行ったことがあるのではないでしょうか。
「みんなのために買い物をする場所」は、Z世代と非常に相性の良い場所です。
…というのも、いいものが簡単に手に入り、どんなことにでも挑戦しやすい時代に生まれたZ世代は、モノ本来の価値でも、そのときにしかできない経験でもなく、自分が商品を手に取ったときに自身のまわりに「エモ」な世界が生まれるような商品を好みます。
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大人数用のお菓子やお酒、パーティグッズ、プレゼントなどに強みを持ったドンキは、まさに人との「コミュニケーション」を想像するのにぴったり。
「このお酒を持って行ったら〇〇さんは喜ぶだろうな」「今度のパーティーであの人にこれを着てもらおう!」など、商品を見ながら誰かの顔を思い浮かべてニヤッとした経験のある方は、少なくないのではないでしょうか。
Z世代は、そんな「ニヤッ」が大好きだからこそ「みんなのために買い物をする場所」を訪れるのです。
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もちろん、他にもパーティや飲み会用の買い出しができる場所やプレゼントを購入できるお店は数多くあります。
しかし、ドン・キホーテは「激安の殿堂」として、行けば何でも揃うというイメージが世間に染み付いているため、Z世代が「人と集まるときの買い物先」として真っ先に思いつく場所となっています。
このようなブランディングもまた、ネット通販が主流となった今でも愛されつづけるブランドを支えるカギとなっているのではないでしょうか。
このnoteでは、Z世代経営者の僕がZ世代の最新事情や日常で感じたことを発信しています。2024年も経営者やZ世代の皆さんの役に立てる情報をお話したいと考えていますので、ぜひスキやコメントお願いいたします!
※このnoteは個人の見解です。
今瀧健登について
1997年生まれ。SNSネイティブへのマーケティング・企画UXを専門とし、メンズも通えるネイルサロン『KANGOL NAIL』、食べられるお茶『咲茶』、お酒とすごらくを掛け合わせた『ウェイウェイらんど!』などを企画。
Z世代代表として多数のメディアに出演し、"サウナ採用"や地方へのワーケーション制度など、ユニークな働き方を提案するZ世代のコメンテーター。
日経COMEMOではZ目線でnoteを綴り、日経クロストレンドでは、「今瀧健登のZ世代マーケティング」を連載中。
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