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【ハイスキルから北朝鮮まで】フリーランスが多様化して来たので分類してみた

2021年のコロナ禍に一気に増加したと言われるフリーランスですが、実に色々な思惑でフリーランスになっておられる方が居られます。正社員ITエンジニアだけでなく、フリーランスの書類選考や面接にも関わってきたこともあり、様々な方にお会いしてきましたのですが「フリーランス」と一語にくくるのは厳しく、主語が大き過ぎるようになっていると感じています。

特に近年では就職せずにフリーランスになる「新卒フリーランス」も見かけるようになりました。在学中からフリーランスとして働く人は昔から居たので違和感はありませんが、未経験の人達が就職の代わりになるようなものではなく、危うさも感じます。フリーターと同じです。

今回は多様化するフリーランスが意味するものを整理していきます。特に企業がフリーランスと契約する際の理解の一助になればと思います。


フリーランスを分類してみた

早速ですがフリーランスを分類したものが下記になります。縦軸にはスキルの高低があります。そして横軸は仕事優先(とにかく売り上げを上げたい)かプライベート優先(稼働時間を削減し、他のことに時間を使いたい)を取りました。副業については属性が異なるため除外としています。

現状、フリーランスエージェントに欲しい人物像を伝えたり、スカウト媒体で検索をすると下記のすべての人材が紹介される状態です。

ITエンジニアフリーランスの分類(副業を除く)

A) 従来の業務委託

老舗日系企業でも見られる形態であり、「能力が逸脱しており、どうしても自社に貢献して欲しいが、給与制度が見合わない」というスペシャリスト人材に対しての特例的存在です。

B) ご隠居

元々高給取りだった人材や、EXITした企業の役員などである程度お金に余裕があるタイプです。稼働時間を減らし、程々のペースで社会と繋がりを持ちつつ働くタイプです。顧問やアドバイザーなどにも見られます。

C) 2010年代中盤に増加したWeb系フリーランス

2010年代中盤よりフリーランスが一般化して行きました。必ずしもA群のようなハイスキルとは限らず、メンバークラスの人材が増え始めたのもこの頃です。

A群に馴染みのある企業からは「フリーランスなのに普通の人が来たのですが」と質問を頂くこともあります。

2024年現在ではエンジニアバブル下のリモートワーク全盛期に正社員のまま地方移住した後、レイオフされた方も居られます。フルリモートでの転職先が見つかりにくいため、正社員転職を断念してフリーランス化する方も含まれるようになりました。

D) フリーランスで年収(年商の誤り)イッセンマン

2018年頃に流行したプログラミングスクールや、「ITエンジニアになろう系情報商材」の影響を受けてフリーランスになった方々です。このnoteでも何度か取り上げましたが、プログラミングスクールや情報商材にとって「エンジニア転職」を掲げると「内定を得る」というハードルがあります。フリーランスであれば開業届を出せば誰でもなれる上、「フリーランス」という言葉から連想される自由さから「いつでもどこからでも働ける」というキャッチフレーズと合わせて急速に広がりました。

情報商材やフリーランスエージェントが正社員で発生する福利厚生費用や有給休暇、営業・バックオフィス費用をすっ飛ばして「手取りが良い」と広報したことで、その一派が「フリーランスで年収イッセンマン。」「正社員よりコスパが良い。」と謳ったことでD群が出来上がりました。フリーランスになることが目的ですが、後述するF層と違って稼ぎたい気持ちはあるため稼働はします。

年収(年商の誤り)イッセンマンを目指すために、スキル不相応の単価提示や、週3案件の2本目受注などで営業をしているため短期契約終了なども多く、持続可能な働き方とは言い難い状況です。

E) 事情ありのフリーランス

家庭の事情などにより時短が余儀なくされるものの、正社員としてのポジションが見つからないためにフリーランスになる人たちです。

エンジニアの人数が重視されたエンジニアバブル下では比較的許容されましたが、今では案件の選択肢が低い傾向にあります。

F) 最初から働きたくない未経験・微経験フリーランス

先立ってエンジニアを志す人に向けてのメッセージとして下記のような投稿をしたところ、未経験・微経験フリーランスと書いてあるアカウントから「無理」という引用RPが届きました。

そのやり取りで改めて気付いたのですが、「フルタイムで働くのが嫌なのでフリーランスになった」方が一定居られるようです。フリーランスエージェントのLPなどを見ても『週2、週3案件多数』などと呼びかけるところが多く見られます。企業側を見ていると、「フリーランスエージェントが週2、3でもOKとするといい人が来るからしぶしぶOKにしている」くらいの温度感であり、別段歓迎されている企業ばかりではないことに注意が必要です。

実際問題としてB群程度にスキルセットが突き抜けていたり、顧問のようなスポットの話であれば需要はありますが、ロースキルで限定的に来られてもより断片的なタスクしか渡せないためスキルアップは望めません。中にはコーダー業務、HTML・CSS修正のみを何年かやってこられた方も居られます。指示がしっかりと必要な末端作業は生成AIに代替されつつあります。フリーランス本人の目線からしても、フリーランスエージェントのマージンを考えると手取りも低く、持続可能なキャリアとは言い難いものです。

G) 経歴詐称外国籍・北朝鮮のエージェント

先だって下記のようなnoteを書きました。海外在住の人材が経歴を偽ってスカウト媒体やクラウドソーシングサービスに登録しているというものです。

その後、関連するニュースと思われるのですが北朝鮮の人材が関わっているということが外務省、警察庁、財務省、経済産業省によって注意喚起されました。

https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240326002/20240326002.html

2022年には既にこの問題は話題になっており、兵庫県の防災アプリに身分を偽った北朝鮮のITエンジニアがコミットしていたという話がありました。

お金のないスタートアップやSMBだけでなく、お金にシビアな大手企業などでも「合い見積もりの上でとにかく安い開発者に投げる」ということをやりがちです(そしてお金だけ消えて失敗する)。値段だけ見て発注したら北朝鮮にお金が流れていた、ということが起き始めているわけです。

再委託条項を盛り込む場合は再委託先の精査なども求められるでしょう。SIerやSESの再委託先にいるフリーランスが北朝鮮だったということもあるでしょう。これらは国を巻き込んでの問題になっていくものと考えられます。

今後のフリーランスは「腕」と「身元の確からしさ」が求められる時代に

フリーランスが増加していることに加え、些末な実装であれば生成AIで良いかとなりつつある今、フリーランスに求められることはスキルレベルです。加えてG群のような「身元の確からしさ」が求められるようになっていくでしょう。

パートナーを探すマッチングサービスの場合、メッセージのやり取りをする際は身分証明書の提出が求められます。加えてサクラの混入を防ぐため、プロフィールや画像、一通目のメッセージの検閲を人力で行っています。多くの場合、外部企業に委託していますが、ここまで実施すると結構な出費になります。

一方で免許が不要で、フリーランスエージェントは免許もエンジニア正社員採用も必要がなく、低コストでサービス開始ができるために無数に存在しています。マージンに依存した薄利多売の人材ビジネスであるため、パートナーマッチングサービスのようにコストをかけてチェックすることもしないでしょう。こうした取り組みが必須になった場合、撤退する企業も増えてくると考えられます。

そして発注元企業の各位につきましても、しっかりと確認の上で発注しないと企業リスクに繋がる可能性が明確になってきました。まずは再委託条項の見直しなどからやっていく必要があるでしょう。


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