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「ゆるい組織」に陥らず、心理的安全性を確保するには

こんにちは、ナラティブベースのハルです。様々な組織に『ナラティブな(各々自分を語る)場』を持つことや慣習化を提案しています。そのときに初期によく出てくるのが「それぞれの事情を聞いたら収拾がつかなくならないか」「そんなパンドラの箱をあけるようなことをして大丈夫か」といった問いです。同じように『心理的安全性』をつくることは同時に「そんなことをしてゆるい組織にならないか?」「緊張感があってこその成果では」という問いがついてまわります。

今回、日経COMEMOの「#心理的安全性を確保するには」のお題に答えて、ナラティブベースが行なっているチームビルディングをヒントに、この「大事なのはわかっているが不安だし疑問」という問いについて答えていきたいと思います!ぜひ参考になさってみてください。

心的にフラットな組織は成果が循環し成長する

ナラティブベースはもともとプロジェクトベースで人がアサインされ、チームが上下関係や評価制度を持たない組織のため心的にフラットな状態が作りやすい環境にありました。その分、マネジメントのし辛さやアウトプットクオリティの担保が大変な時期もありましたが、この「フラットであること」を武器に、成果に直結するコミュニケーションのクオリティをどう上げていくかにこだわり続けてきました。その結果、心的にフラットであること=心理的安全性があること が、組織が成長する循環には欠かせないことに気づきました。わたしは『心理的安全性』の専門家ではありませんが、実践の中で気づいたその循環を図にしてみると以下のような感じです。

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心的にフラットで相手に心を許せる状態(良い意味でのリラックス状態、自分を必要以上によく見せたり、悪くみせないように頑張らなくていい状態)を生み出せていると、自然と「本音」「集中」という二つが生まれます。

「本音」を包み隠さず言える環境は、その人が行動する(もしくは行動しない)理由や、得意(もしくは不得意)の相互理解につながり、関係性を深めながら、適材適所、働きがいの創出、人材定着といった組織成長=中長期の成果にもつながっていきます。

「集中」は、何かをよく見せたり隠したりといった余分なことに気持ちや時間を費やすことなく、本来集中しなければならない方向で仕事に集中できている状態です。これもまた心的にフラットであることでぐっと生まれやすくなります。上記の相互理解とも相まって、チーム感でより不必要な気遣いが削ぎ落とされスピードが上がっていくことが実感できたら、図のサークルはもう十分に回り始めています。そしてこちらは比較的、実感が得やすく、短期の成果にもつながっていきます。分からないことを分からないと言えたり、理解が浅くても遠慮なく問題が提起できたりすることで、特に、新人や異動者の立ち上がりが早くなります。

そしてチームとして成果が上がっていくと、各々の自己効力感(自分が場に影響を与えられる存在であるという感覚)が高まり、また相互尊重の(リスペクトしあう)関係が生まれ、結果的により心的にフラット=心理的安全性の高い組織になっていくという循環が生まれます。

わたしも自社のチーム運営の経験から、心理的安全性をベースにこのサークルが回りだすと、組織はより成果を上げやすく、チームとして成長しやすくなっていくことを実感しています。

「本音」を生み出すには?

本音が言い合える心的にフラットな状態を作り出すためには「気持ちや感情を口にすることを厭わない冷静な場」をもつことが不可欠です。1on1でも、何度かご紹介している「対話型会議」でもよいですが、それぞれが感じていること、その背景・理由などをじっくり聴きあい、お互いになぜ行動しているのか(行動していないのか)、何を大切に思っているのか(何を無駄だとおもっているのか)などを話せる場をもつことを習慣化しましょう。「対話型会議」の必要性や、手法については以下の記事でもご紹介しているのここでは割愛したいと思います。ご興味のある方はぜひ以下の記事をご覧ください。

「集中」を生み出すには?

 「本音」を言い合えるのはいいけれど…「そんな個別の事情を聞くのはえらく時間がかかりませんか」「それを聞いたところで配慮できることも少ないので逆に不満につながりませんか」といった声をよく聞きます。
心的にフラットである状態を作り出すと、「ゆるい組織」=緊張感のない甘い考えの組織 になってしまうのでしょうか?

もちろん大前提として「本音」を言い合っているだけでは成果は上がりません。本音交換で相互理解を深めつつ、「集中」は仕事のゴールである「目的は何か?」「成果とは何か?」に結びつけていくことができないと意味がありません。そのため、本音を言い合う習慣と並行し、目的や成果と関係のないことに時間を費やさないためには?を徹底して考え行動する習慣が必要となるのです。この部分が抜け落ちてしまうといわゆる「ゆるい」「甘い」が横行します。

先ほど、循環サークルの解説の中で「(集中が生まれると)相互理解とも相まって、チーム感でより不必要な気遣いが削ぎ落とされスピードが上がっていく」と書きました。まさに、コミュニケーションが互いの「集中」のために無駄を削ぎ落とす方向に向かっていく、つまり「お互いの時間を無駄に奪わない=相手の集中を大切にする」という価値観を大切にできると、対話をして遠回りした分をショートカットする効率化が進むこととなりよりよい循環が生まれます。

では、そのコミュニケーションのコツはどんなものがあるでしょうか?

「察してほしい」「察しています」を排除する

ナラティブベースでは成果に直結するコミュニケーションのコツを「パターンランゲージ」という手法でまとめています。チームメンバーがもっている様々な体験談や問題解決のエピソードを対話から表出させ、「こうやるとうまくいく」というコツをパターン抽出し、名付け(わかりやすいタイトルをつける)を行いイラストでわかりやすくしたもので、メンバー間で共有し、「ルール」ではなく「ヒント」として活用しています。この中にもコミュニケーションの無駄を削ぎ落とすためのパターンがいくつかあります。

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例えば「文面通り受け取る」というパターンランゲージは、メールやビジネスチャットなど、テキストの文面の行間を必要以上に読みすぎて疑心暗鬼になったり要らない心配をしないためのコツです。チーム間のコミュニケーションでよくある無駄は「察してほしい」という気持ちを持ちすぎたり、もしくは「察していますよ」(というのをわかってほしい)という関係性強化や評価を気にしたコミュニケーションです。そういった属人化業務ならぬ属関係性化コミュニケーションを避けていくことで、すっきりとした効率的なやりとりができるようになります。

また「宣言してから話す」というパターンランゲージは、相手の時間を奪わないコミュニケーションのコツです。会話ひとつとっても目的を持たせ、それを言葉にして(宣言して)共有することで、その会話のゴールを意識した時間が過ごせ、互いにモヤモヤしたり、業務上非効率になったりが防げます。

ナラティブベースのパターンランゲージは全部で19パターンありますが、そのうち5つをNotionで公開していますので、よろしければヒントにしてみてください。(以下のインデックスをクリックすると公開ページに飛びます)

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目的に立ち戻る「合言葉」を流通させる

こういった、目的に立ち戻る「合言葉」のようなもの(共通言語とも言えると思います)をうまく組織内で流通させることで、心理的安全性と無駄のないコミュニケーションを両立させ、いわゆる「ゆるい組織」に陥らずに心理的安全性を確保することが可能だと考えています。

ナラティブベースでは、このパターンランゲージをつくる工程自体も連続する対話型会議として扱い、チームビルディングを目的にした組織の公式な活動として実施することで共通言語を作ってきました。

リモートワークが当たり前になる中、企業文化を可視化し伝承するのはなかなか難しいことですが、このパターンランゲージを使ったやり方も、心理的安全性を保ちつつ成果を上げる手法として大変有意義であると考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


#日経COMEMO #心理的安全性を確保するには


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