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「賃貸 or 持ち家」の発想から抜け出そう。

今月の日経COMEMOの投稿テーマは #それでも家を買いますか? 

そういえば先日、こんなツイートも話題になっていた。


「賃貸 or 持ち家」という議論は永遠に終わらない気もしていたが、さすがに「いつかは一軒家を」なんて発想は古くなってきたのだろう。

地方に移住して建てるならまだしも、地価の高い都心の一軒家なんて良いことが1つもない。

そんな意図が  #それでも家を買いますか というテーマ設定には込められている気がする。



ところで、



僕は今、一軒家を建てている。

しかも都心に。

ただ僕のそれは、従来の「賃貸 or 持ち家」という枠組みには当てはまらないかもしれない。

今日はそんな話。

今後、一軒家を建てようと思っている人には、結構参考になると思います。(読了まで3分くらいです)

■家にも働いてもらいたい

毎月の家賃がもったいない。

それなら資産になる持ち家を。

多くの人が、そんな発想で持ち家を検討しはじめる。

僕もうっすらはそう考えていた。ただ、具体的に検討するきっかけになったのは、もっと短期的な発想だ。

1日は24時間。しかし借りている自宅にいる時間は、その半分程度。そんな暮らしをずっとしてきた。

一人暮らしにとって、会社で働いている時間、出張中、旅行中などの外出時間は「家を使ってないのに家賃を払っている時間」ということになる。

だったら家にも働いてもらおう、と考えた。

幸い自宅はルーフバルコニーなど作り込んだこともあり、見栄えはいい。

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スペースマーケットかAirbnbで自宅を時間貸ししようとした。

しかしそこに管理規約が立ちはだかった。

管理会社に問い合わせたところ、賃貸物件を又貸しするのはNGとのこと。

詰んだ。

賃貸物件に住んでいる限り、外出時間は常に無駄な家賃を払う時間になる構造は変わらないらしい。

それならいっそホテル住まい、定額住み放題なども考えた。

ただ家具やインテリアなど、自分の好きなモノに囲まれて生活したいという思いが捨てきれず、持ち家を検討することとなった。

持ち家なら自分がいない時間をレンタルしようが、誰かにとやかく言われる筋合いはない。

PCには「不動産」というフォルダが新規作成された。

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■建ぺい率のトラップ

持ち家と言っても、検討したのは一軒家だ。

マンションは管理規約でAirbnbが禁止されていることが多い。部外者がマンションの共用部を使うとトラブルの種になるからだ。

しかし一軒家は高い

そこで考えたのがリノベーション。

中古なら比較的、安く買える。下町の古民家をおしゃれに改装した物件、なんて引きもよさそうだ。

そう考えていくつか物件を当たったが、また壁にぶち当たる。

今度は「建ぺい率」という壁だった。

建ぺい率とは、土地に対して定められた建物を建てていい割合のようなもの。

目的は防火、風通し、日当たりの確保など。要するにギュウギュウに家を敷き詰めないように、と定められた基準だ。

しかし都内の古い一軒家の多くはこの基準を満たしていない。それが現時点では、違法建築になる。

違法建築の物件を買うお金を、銀行は貸してくれない。つまり住宅ローンが組めないのだ。

このトラップにはまる人は意外と多いらしい。

こうして、一軒家リノベーションの線も消えた。

■賃貸併用住宅という発想

僕に残された道は「土地を買って、新築一軒家を建てる」の一択だった。

しかし新築は高い。

住宅ローンが通ったとしても、月々の返済額は今の賃貸よりも高くなるだろう。

だからと言って、Airbnbの収入を当てにするのは危険だ。

既に時代はコロナ禍真っ只中。リモートワークで在宅時間も増えた。出張もなくなったので、そもそもAirbnbに出すほど家を空けることもなさそうだ

そこで、発想を転換させてみた。

自宅にいる時間が増えるのなら、僕自身が物件を管理できる。

だったらいっそ、大家さんをやってみたらどうだろう。

自宅の一部を賃貸スペースとする「賃貸併用住宅」という発想に辿り着いた。

■自宅の下に、お店がある

賃貸併用住宅とは、自宅の一部を他者に提供して家賃収入を得るスタイル。
大きく居住者に(住まいとして)貸すパターンと、テナントに(お店として)貸すパターンがある。

ポイントは住宅ローンが使えることだ。

銀行によって条件は違うが、
1:ちゃんと自分が住むこと(自宅であること)
2:貸すスペースが自宅の50%以下であること(主の用途は自宅であること)
が必要とされている。

これを満たせば、住宅ローンで買った物件の一部から家賃収入を得ることができる。

ちなみに賃貸物件を保有すると言っても、いわゆる不動産投資・アパート経営とは少し違う。

自宅とは関係ない場所にあるマンションの1室や、アパート1棟を購入して、賃貸物件として収入を得る手法は、サラリーマンの投資でよくある形。

ただ僕は、この手の投資が少し苦手だった。

自分の購入した物件が、資産運用会社や管理会社の手に渡る。そこに見知らぬ入居者が入り、その賃料の一部が自分の懐に入ってくるのは楽かもしれない。

でもその収入には手触り手応えがない。なんだか冷たい収入に思えて、手を出せていなかった。

しかし、今回提供するのは「自宅の一部」だ。自分自身のコミットメント度合いが、だいぶ違う。

だったら貸す相手は、居住者ではなく店舗にしよう。

自分の家のことだから、自分も一緒になって、お店のことや街のことを考えたい。そんな関係を自分の建物で築けたらと思った。

賃貸併用住宅の中でも、店舗併用住宅という種類らしい。

■パワポ資料で値引き交渉

そうと決まれば、土地選びは絞られてくる。住宅街でもあり、店舗物件としても機能しそうなエリア。

こうして辿り着いたのが清澄白河だ。

実は今住んでいる場所もその隣接エリアで、そもそも土地勘がある。店舗の出店エリアとしても人気で、需要はありそうだ。

いくつかの候補を比較検討し、パワポにまとめて値引き交渉をした。

その後、不動産屋からは連絡があり交渉は成功。

ついに土地の購入が決まった。

■店舗候補には自分でプレゼン

さて、次は購入した土地に出店する店舗を見つけなくては。

「このエリアは人気ですから、すぐに見つけますよ」

不動産屋はそう言ってくれたが、その申し出はお断りした。

なんせ自宅の1階に入る店舗だ。他人任せにできない。

家賃収入が滞りなく入れば誰でもいい、というわけではないのだ。

そこでまずは自分で「入ってほしい店」を考えることにした。
大事なのはジャンルだ。

例えば美容院が入ったとしても、僕は使わないだろう。

自分に必要なお店で、この街に足りないお店。自分が1番の常連になるつもりで考えた。

結論。酒屋だ。


清澄白河は現代美術館とブルーボトルの本社があることから、アートとコーヒーの街と言われている。

週末は若いカップルが散歩を楽しんでおり、最近ではカフェやパン屋、ナチュールワインを扱う飲食店も増えてきた。

そんな街で「酒屋」のあり方を考えたいと思った。

単純にお酒を飲むことが好きなことが1番の理由だが、これを機にもっと深く、文化としてのお酒を知りたいと思った。

若者のお酒離れは進む一方な今だからこそ、これを機に新しい酒屋をつくろうとしている人はいないだろうか。

まずはデスクリサーチ。都内の酒屋をリストアップ。
次に現場リサーチ。何店舗かを回って店舗に足を運び、雰囲気を確認した。

こうして「出店のご相談」というパワポ資料が完成。

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初めて送付したのは、昨年8月のことだった。

3ヶ月後、なんとアプローチした1店舗目で出店が決まった。
(詳しい経緯はまた今度書きます)

こうして今、僕は自分の自宅と、酒屋を同時に企画している(あくまで大家として)。不動産フォルダは、そんな2種類の企画書で溢れかえっている。

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■賃貸or持ち家という議論

話を本題に戻そう。

日経COMEMOのテーマは「#それでも家を買いますか 」だった。

それでも家を買った僕のエピソードは参考になっただろうか。

というか、僕のケースは「賃貸 or 持ち家」の議論に当てはまるのだろうか。

確かに特殊なケースかもしれない。ただ僕は特別な人間ではない。普通のサラリーマンだ。

ただ、普通のサラリーマンでも「賃貸 or 持ち家」という思考フレームから脱却すれば、これだけの選択肢が生まれる。

僕は思う。



持ち家を選ぶことが古いわけじゃない。「賃貸 or 持ち家」という議論の根底にある「正解を選ぼう」「不正解を選びたくない」という発想が古いのだ。

住み方に正解なんてない。不正解なんてない。
生き方にも、働き方にも、正解なんてない。不正解なんてない。

これから家を検討する人には、そんな自由な発想で考えて楽しんでもらいたい。


そしてお店ができたら、是非遊びにきてもらいたい。

オープンは今年の7月を予定しています。詳細は追って酒屋さんの方から発信します。(写真は蛍光灯の配置がアートな清澄白河駅のA1出口)




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