見出し画像

8回の転職を通じて分かったこと、思い知ったこと

今回のCOMEMOのお題はこちら。

あまり人に自慢できることはないが、転職経験であれば人後に落ちない。
フルタイムとしては都合8回転職し、現在9社目のPreferred Networks社でお世話になっている。
なんなら副業として色々な企業・官公庁の支援もしており、このテーマについて駄文を記す資格くらいはあるのではないか、と考えてNOTEを立ち上げた。

・・・ものの、何を書こうかとしばし考えたのだが、なまじ8回も転職していると色々エピソードがありすぎる。
そこで、経験そのものを記す、というよりは、多くの企業での勤務・支援経験を通じて分かったこと、または思い知ったことを言語化する、という方針で、以下の記事をまとめていくことにする。

分かったこと(1):職掌は必ずしも業務内容を表さない

筆者は今まで
コダックジャパン
WebTV Networks
日本コカ・コーラ
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン
ソラーレホテルズアンドリゾーツ
西友
ドミノ・ピザジャパン
イトーヨーカ堂
Preferred Networks
でそれぞれフルタイムで仕事をしてきている。メーカー3社、リテール3社、IT2社、ホテル1社と業界はバラバラだが、担当は一貫してマーケティングで、直近の5つでは、チーフマーケティングオフィサーか、それに相当する仕事を拝命してきた。
また副業では今まで都合10社以上に企業や官公庁機関に対してマーケティング、コミュニケーション、人事などのサービスを提供してきた。

(*マーケターが人事コンサル?と疑問に思われた方は、以下の記事をご参照いただけると多少は腹落ち感をお感じいただけるかもしれません。)

これらを通じていろいろな組織での「マーケティング」に関わってきたわけだが、とても面白いことは、組織によって「マーケティング」という名前がついた職掌が指し示す内容が全く違うことだ。

ある組織では、マーケティング=広報を含む顧客コミュニケーションだったし、別のある組織では広報とマーケティングは全く別物として扱われていた。ちなみに広報という職掌が指し示す範囲やその重みも、マーケティング同様に組織によって違う。

大抵の組織では、広告宣伝を通じた顧客コミュニケーションはマーケティング部門の担当であったが、いくつかの組織ではそうでなく、その一つではマーケティング部門は調査・分析のみやっていた。

ところ変われば言葉の使い方も変わる、ということであるが、このとき転職者が「正しい定義」を振り翳しても意味はない。言葉の意味は、それを使う人たちの用法により移ろい、進化するからだ。企業というある種のボーダーラインで守られた集団の中で、特定の言葉が特定の使い方をされ、ユニークな意味を持つことは十分にあり得るし、その中ではその使い方こそが正解となる。

ので、転職者側はそれに合わせるしかない。

転職者が、自身が持っているスキルを活かす形で貢献したいと思うのであれば、不毛かつ分が悪い定義論争をするのではなく、

転職者が考えるマーケティングその組織でいうマーケティングその組織でいうマーケティング以外の業務

という方程式を立て、転職者が考えるマーケティングの方に「経営企画」とか「営業推進」とか、つまりは「マーケティング」以外の新しい名前をつけるなりするのが良いのではないかと思う。
そして、その新しく名付けた業務が一つの組織のオペレーションとしてこなれてきた頃に「これからはこの組織を新たにマーケティング本部とします」などとやれば良いのだ。

分かったこと(2):オペレーションの機序を理解することは本当に大事である

プロパーとして企業の中でローテーションを重ねていると、自然と理解できることが、その企業の中にはどんな組織があり、それぞれがどんな関係にあり、全体がどんな機序で動いているか、ということだ。

これが理解できると、前項で記した、例えば『「マーケティング」の意味がガラパゴス的にユニークな内容となっている』、といった事態の背景や組織内での正当性も理解できるわけだが、これは実際に色々な部門を経験するか、少なくともそれら部門の人々と相当きちんとコミュニケーションしないと難しい。

また、組織の中には、どの部門の誰に言えば何が動く、というような「スイッチ」「レバー」「ボタン」的な機構がある。これは上記機序の中でも重要な要素の一つである。

これらはそこに勤める人にとっては、空気のような当たり前なことであり、ほとんど疑われることがない当たり前のことである。
しかし、転職者にとってはそうではない。

転職者は特定の職掌技能を持ったものとして採用されることが多く、ローテーションの対象にはならないし、企業側も(マーケティングならマーケティングの)即戦力として採用する。

転職者は「専門屋」であるという殻にこもって、自部門に関連する会議にだけ出席し、自部門に関連する人とだけやりとりしていると、上記の機序を理解できないので、組織全体をうまく動かすことができない。

これを避けるためには、呼ばれている、声がけされているかどうかなど全く関係なく、広く色々な部門・人と話をして、一刻も早い機序理解に臨むことが枢要である。

もう一点。組織の中でも特に重要なのが、いわゆる現場、メーカーで言えば工場や営業、小売で言えば店舗のような、その企業のオペレーションが具体的に回っているところである。

なぜ現場が特に大事なのか?

一つ目の理由は「自分の仕事が現場のオペレーションにどのようなインパクトを及ぼすのか」という思考実験なしに施策を回しても、それは現場の支持を得られないのでうまく日の目を見ないからだ。いくら良いPOPを作っても、お店の人が実際につけてくれなければ、何の意味もない。

二つ目。言葉の使われ方と同様に、現場のオペレーションは時間と共にガラパゴス的に進化する。するとだんだんと部分最適や非合理が蓄積してくるわけだが、当の現場ではこれがやはり空気のようなものなので、なかなか気付けない。そんな中に転職者の、空気を吸うようにではなく、真新しいものを観察するように現場を見られる目が投入されると、改善のヒントを多数発見できる、という次第である。

分かったこと(3):興味の向くままに行動してみることと、周りに期待にまずは応えることは、どちらも大事である

筆者がキャリアの話をすると、高い頻度で聞かれることが、なぜ現職のPreferred Networks(PFN)に入ったのか、ということである。
聞いてくる人に逆に聞いてみると、直近の3社が西友だドミノ・ピザだC向けリテールが中心だったところに、B向け色が強く、また技術色が極めて強い先端スタートアップへ飛び込む、というのがものすごく一貫性に欠けた意思決定に見えるらしい。そこで筆者が答えるのは、

めちゃくちゃ面白そうだったから

である。
筆者とPFNの出会いは、6年前。かつての同僚であり、当時PFNのCFOをやっていた友人が、同社がお片づけロボットを出展していた展示会に呼んでくれたのだ。
そこでは、未来が動き回っており、そしてその未来を動かしている若者たちとのコミュニケーションは衝撃的に高速で、かつ楽しかった。

入社してみたら、それはもちろん今までのC向けマーケティングとは全く勝手が違うが、若い人たちの中で、ちょっとうるさいおじさん役をやるのも楽しいし、数少ないC向け機会として、ロボットのマーケティングをやるのも楽しい。(カチャカというプロダクトです。よかったら以下をご覧になってみてください)


あと、まだ詳細は記せないが、エンジニアの超先端的な高い技術と筆者の知識を組み合わせて、ある産業のオペレーション効率やコスト構造を根本的に変えられるプロジェクトのオーナーもやっており、これも非常に楽しい。
こちらは近々発表できそうなところまで来ているので、その暁にはご注目いただけたら光栄である。

何が言いたいかというと、一貫性や連続性がないように見えても、「面白そう!」という強い衝動に駆られたら、動いてみるのも一法なのではないか、ということである。

こういうこともあった。

西友ではマーケティング本部の業務は、顧客コミュニケーションと調査分析の二軸だった。そんな中プライベートブランド(PB)の管掌をやらないか、という打診をいただいたことがあった。
これは「PBをよりユニークな、西友ならではの強みになるように文字通りブランド育成していくためには、マーケティングに強い部門がリードすべき」という論法でいただいたお話であり、チームへの高い期待を反映した話でもあった。
一方で伝統的に小売ではPBは商品本部(=品揃え・棚割・値付けを担当する、小売の心臓部的部門)がやるものであるという、それこそ空気があり、当時の商品本部責任者の方はマーケティング本部への移管に賛同してくれたいたものの、全体がそのような機序で動くのかどうかは保証の限りではなかった。

のであるが、せっかくの周りから頂いた期待、まずはやってみようということで、PBをマーケティング本部に移管し、コンセプト開発から商品開発プロセスまで作ってみた。品質管理など、普通に小売でマーケティングをやっていたのではまず縁がなかったであろうチームを預かり、その専門家と深い交流ができたりもした。
こうして生まれたのが「みなさまのお墨付き」「きほんのき」という2つのブランドである。

何が言いたいかというと、「面白そう」という心の声に従うことも大事だし、周りからの期待に応えることも大事だ、ということだ。これらはトレードオフではない。両方大切だと筆者は強く思う。

思い知ったこと:選択肢を選ぶときは、振れ幅が大きい方がいい

以前、自分の前に現れる選択肢は、畢竟現在の実力の合わせ鏡なのだから、より振れ幅は大きいを選ばなければ、短い人生、もったいない、という駄文をしたためたことがある。
転職すること、がより振れ幅が大きいとは限らないが、転職するかどうか、という意思決定を行う際には、この原則が有用であると思うので、ここに再掲する。

8回転職したから、などと偉そうに書いたが、読み返してみると転職の参考になることはほとんど書いていなかった。が、せめて読者がお楽しみいただけたら幸いである。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?