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質問に答えられない人が増えた。なぜ?

琵琶湖の西の桂浜に、彼岸花が群生する。毎年、この風景を撮りに行くのが好きだった父が、今年は一緒に湖畔に行けない。しかし彼岸から此岸の彼岸花を観に来ているだろうか

9月に急逝した父に事後手続きのため
諸所に連絡をとっているが
気になることがある

ご愁傷様です
お悔み申しあげます

という言葉がなく
淡々と事務的に
手続きが始まることが意外に多い

とりわけ若い人が窓口に出てきたときに
その傾向が多い

ご愁傷様です
ご遺族が悲しまれている心情を
お気の毒に思っています
と対面で気持ちを伝えるときの言葉

お悔み申しあげます
故人の死を残念に思い
悲しんでいますと
口頭だけでなくメールでも使う言葉

ご愁傷様です
お悔み申しあげます
が、日常から減った

死が身近でなくなった
病院での死が増えたからか
家族葬が増えたからか

死は自分事であって
死は社会的でなくなった

しかし多死時代である
死が多くなり、死が普通になった
人の死は人知れずにすぎ去っていく
人の死が見えなくなった

あの人、死にはったそうやで。

死んだ人を見ることが減った
人の死に接する経験量が減った
人の死に無頓着になった

人の死にどうかかわればいいのかが
分からない人が増えた
知らない人が増えた

たとえば
彼岸花の別名は曼珠沙華
サンスクリット語で、天界で咲く花
この曼珠沙華を見ると
悪業が払われる
という
その花が彼岸頃に咲く

彼岸と此岸の宗教観を知らなければ
たんに赤い花が咲いているねと
思うだけ

人の死に立ち会う経験が減って
死にまつわる知識が身につかなくなった

人は亡くなると、葬儀のあと
七人の仏に逢って
四十九日間、修行する

初七日に不動明王に、過去の懺悔をして
二七日に釈迦如来に、また懺悔をして
三七日に文殊菩薩に、知恵を授かり
四七日に普賢菩薩に、慈悲心と辛抱力を授かり
五七日に地蔵菩薩に、苦を除かれ徳を授かり
六七日に弥勒菩薩に、慈愛心を授かり
七七日である四十九日に薬師如来に、
最後の確認をしてもらい、彼岸の後生が定まる

故人の四十九日の修行に
遺族も徳を積み、自分を磨け、と
仏教は、教える

そんなことが、意味が理解できなくても
知らなくても
生きていける

そんな人が増えているのは
死についての経験量が減ったから

それだけにとどまらない


ノートをとらないのは
高校生だけではない
大学生にも、企業人にも多い

文字を書かなくなった
自らの手で、文字も絵も描かなくなった

誰かの話を聴いて
誰かが書いた文字や図を見て
自らが思ったこと、感じたこと、考えたことを
ノートに手で書いた、描いた

その感覚が減っている

覚えるには
見るよりも、聞くよりも、書くがいい


50年前の、私の中学生時代の空手の達人だった恩師の言葉
先生の授業の中身はまったく覚えていないが
その言葉を今も覚えている

    大東俱楽部

黒板に板書しながらの説明や議論が
黒板が緑板になり白板になり

スクリーンにパワーポイントを映した
説明・議論となり
それをノートに書き写すようになった

しかし手で書くのは面倒くさいと
携帯でスクショする人が増えて
驚いていたが

パワーポイントの資料を
配布してよとなったが
コストダウンのため
データで配信となった

資料が手に入ると
講義・講演を聴かなくなった
会議に集中しなくなった

だんだん自らの手で
書かなくなった
描かなくなった

スクショしないだけではなく
メモを取らない人が増えた

しかし
レポートや資料を銘じられたら
パソコンどころか、スマホで、器用に作成する
資料は生成AIでさくさくとつくる

会議は、誰かが議事録を書いていた
会議の内容を記録に残したり
次のステップにつなげたり
議事録作成を通じた
人材育成の場でもあったりした

それがコロナ禍を契機に
リモート・オンライン会議が増え
会議設定が簡単になり
会議時間が限定され
時間が来たら、次はいつにしようかと
会議が次から次に増えたので
議事録を自ら作成する時間がなくなり
会議はAIが作成するようになった

手で書く時間がないんです

「手を動かして書くことで
よいアイデアも出やすくなり
手書きにこだわるプロは多いよ」

と友人の企業人が大学生にアドバイスしているようだが

意味、分かんない
手書きなんて面倒くさい

時間の無駄

といっても
プレゼンテーションさせたら
器用に語る大学生たち

知らない大人たちから見たら

スゴイね

高校でも、大学でも、就活でも、企業でも
若い人たちはとても上手に語る
とても訓練されているが

本当にそんなにすごいの?

プレゼンが終わったあと
質問してみると

対話が成り立たない

ことが増えた。なぜか?

知的基盤が浅いのだ
知識・知恵が表面的なのだ

情報は1本、1ルート
誰かひとり、なにかひとつの情報がすべてとなり
そのひとつで判断する
それがそのテーマの知識・知恵のすべてとなり
思考が一本

知識・知恵が経験にもとづいていないので
すぐに信じる、騙される

ネット情報に、嘘が交じっていることも知っているが
生成AIの情報に、嘘が交じっていることも知っているが
それを気にしないスマホ能

若者だけではない
マスコミやSNSによく登場する
カリスマ〇〇、天才の〇〇も、そう
スマホ能で、表層的で、思慮が浅い、面白くない

一方向しか応えられない
変化球に応えられない

部分最適で全体最適でもない
部分の本質を掴んでいない

「難しいことを言っているよ」
「なんでも良く知っているよ」

本当にそうなのか?

その人たちの知識や知恵は
スマホでありAIであり
生成AIである

しかし会話がつづかない
対話ができない
議論が広がらない、深まらない

どうしたらいいのか?

教養力を身につける

その教養力をあげるためには
どうしたらいいの?

知的基盤を厚くする

知的基盤を厚くするために、どうしたらいいの?

多様な人々と対話する
人の意見を否定しないで
面白がる、人の話を受けとめる、受けいれる

そして問いかける

なんで?ほんま?要はこうなの?

他からの話を広く、深く
受け入れる人とそうでない人とで
そのあとで、大きく変わる
素直な人とそうでない人で
そのあと、大きく変わる

この人の話を受け入れる器の広さと深さ

もうひとつ大事なことがある
内と外からの学びを
自分事として考える

当事者意識
他人の意見・アイデア・経験を

自分だったらどうだろう?
自分だったらどうする?

自分事として考えて
自らが主人公として行動したら
どうなるかをイメージして
行動した経験を自らの知的基盤に収納する

それをどう収納するかで、大きく変わる
見る収納するよりも、聞いて収納するよりも
書いて、描いて、収納する

自らが経験して得た知識、知恵、知見を
自らの知的基盤に収納する

多様な情報を受入れ
情報を結合して
感じたことを思ったことを
誰かに話してみる
ああでもない、こうでもないと
誰かと対話する

この対話ができているのかできていないのか

濃厚な対話を通じて
外からの、新しく、異なる、面白い情報と
自らがそれまでに蓄積してきた知的基盤に
格納している知識・知恵と融合・結合して
なにかを類推して
新たなモノ・コトを着想・発想する

この日本の方法が弱くなっている
これが日本の現在地

このプロセスを取り戻さないと
日本はもっと弱くなる


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