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「お酒飲めない=かわいそう」という差別を反省します。

自宅の1階に酒屋さんが入って3ヶ月。

僕の突拍子もない提案を拾ってくれた専務も、よくお店に顔を出してくれる。そんな専務が、ある日突然こんなことを言い出した。

「小島くん、私最近気づいたことがあるの。私、今までお酒を飲めない人のことを差別していたのかもしれない。「かわいそう」とか「もったいない」とか、勝手に思ってたんだよね。なんで今まで気づかなかったんだろう。すごく反省した。」

発言の背景には、1階にある酒屋さんのコンセプトがある。

1階の酒屋さん(いまでや 清澄白河)のコンセプトは「はじめの100本」。お酒に明るくない人でも、気軽に楽しめる酒屋を目指している。

「お酒に明るくない人」には当然、お酒が体質的に得意でない人も含まれる。

だからお店にはノンアルコールも充実させて、飲める人も飲めない人も同じ様に楽しめる空間を目指している。

この流れは、世の中的にも加速していくだろう。

こうした背景の中で「飲めない人」について考える時間が多くなった専務は、自分の中で無意識に抱いていた差別とも言える固定観念に気付いたようだ。

そして僕も、気づかされた。

今日はそんな話。

■かわいそう、が差別の温床になる。

僕から補足すると、専務はとてもフラットな方だ。相手の立場が偉くても不自然におだてたりしない。

このツイートだって彼女の発言だし、専務という立場で妙に偉ぶったりもしない。

だからそんな彼女の「私は差別をしていたのかもしれない」という発言は衝撃的だった。

ただ確かに、一緒に飲んでいる時に「お酒っていいよね。飲めない人はもったいないね」的な発言はあったような気もする。

そしてその時、僕は「そうですね」と返したし、僕もお酒が好きなので「飲めない人はかわいそう」と心のどこかで思っていた。

ただ今回、この無意識の思い込みこそが、無意識の差別につながっていくことに気付かされた。

■普通、の基準が自分になっている怖さ。

まず、今回の事象を構造にしてみる。おそらくこういうことだったと思う。

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お酒が飲めない(体質的に合わない)人はもともとそうで、別にそれについて悩んでいるわけでもない。

「好きで飲める人は飲んだらいいじゃん。俺はそもそも飲めないから、好きでも嫌いでもないよ

と、僕の飲まない友人も言っていた。

ただその友人も、唯一お酒を嫌いになるのは「好き」を強要される時だと言う。

「お酒飲めないの?こんなに美味しいのに」と言われたり、
「酔うの気持ちいいよ。一度味わってごらん」と言われたり。

お酒を好きで、飲めることが「普通」とされ、嫌いだったり、飲めないことが「普通じゃない」とされる。

自分にとっては飲めないことが普通なのに、相手の普通を押し付けられるとお酒(に罪はないけど)嫌いになりそう、とのこと。

確かにそうだ。

相手の価値観を押し付けられるのは、僕も(おそらく専務も)大っ嫌いだ。

それなのに僕も(専務も)気づかないうちに、それをやっていたのだろう。

2人で一緒に、反省した。

■マイノリティーだって、普通なんだ

この「かわいそう」からはじまる無意識の差別は、お酒だけの問題ではない。

例えば僕は息子がいて、離婚をしているが、自分の子供が他人から「離婚してて、かわいそう」というレッテルを貼られた時、なんとも言えない心境になる。

彼にとっては、両親が離婚していた時間の方が長い。

それでもたまに3人で食事や旅行に行ったり、週末僕の家に泊まりに来るのが彼の日常だと思う。

しかしそれでも、数の上でのマジョリティーを「普通」とされ、マイノリティーを「普通じゃない」とされる。
そして「普通じゃない=かわいそう」と変換されるのは納得がいかない。

マイノリティーだって、普通なんだ。

そうでなければ、

・マジョリティー側であることが「正しい」こと
・マジョリティー側であることが「誇らしい」こと
・マジョリティー側であることが「上である」こと

そんな思想につながっていくだろう。

マイノリティーであることを「普通じゃない」と定義して、勝手に蔑まないでほしい。

おそらく障害だって、同じことだ。

このコピーを見た時も、同じ感情になった。

■固定観念は、暴力になる

お酒にしても、離婚にしても、障害にしても、「○○はかわいそう」という一方的な決め付けは、社会に対する無意識の固定観念につながっていく。

本人は普通にしているつもりなのに、社会に勝手に蔑まれる現象こそかわいそうだ。

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繰り返しになるが、本当の意味で「かわいそうな人」を減らすには、

1.「普通」をマジョリティー or マイノリティーで捉えないこと
2.「マイノリティー = 普通じゃない」と変換しないこと
3.「マイノリティー = かわいそう」という思い込みをやめること

○○だなんて、かわいそう。

その発言が無意識の差別を増幅させる危険性を、今一度認識したい。


改めて、反省します。


乾杯(飲める人も、飲めない人も)。


サポートいただけたらグリーンラベルを買います。飲むと筆が進みます。