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「好きを仕事に」を可能にするクリエーターエコノミーの到来

「シェアリング・エコノミー」、「ギグ・エコノミー」、「サーキュラー・エコノミー」など、時代とともに常に「〇〇・エコノミー」と呼ばれるバズワードが誕生しますが、どうやら2020年から2021年にかけて大きく注目を集めそうな新しい「〇〇エコノミー」の1つとして、「クリエーターエコノミー」が急速に浮上しているようです。

約1年前のCOMEMOでの投稿では当時「パッションエコノミー」が話題になりつつあることについて触れましたが、それから一年が経ち、新型コロナウィルスをきっかけとしたデジタル化が更に加速され、改めて個人による「好きを仕事にする」ことが可能になる世界が広がっていることを感じます。

パッション・エコノミーのパッションは「情熱」。自分が情熱を持っていることを「クリエーター」としてYouTube動画やブログ、ポッドキャスト、ニュースレターなどで表現し、コンテンツを創造する人が増えていることを報じる記事を最近よく目にします。またそうした形で収益を得ることを容易にする決済機能を備えたプラットフォームサービス、アプリなどによるエコシステム全体の成長を捉え、「クリエーターエコノミー」という言葉に注目が寄せられています。

先日YouTube のスーザン・ウォシッキー(Susan Wojcicki)CEOが公開した2021年に向けての戦略を綴るブログ投稿によると、過去3年間でクリエーター、アーティスト、メディア企業にYouTube・パートナー・プログラムを通じて支払った報酬額は300億ドル(約3兆1,400億円)で、2021年の最優先テーマの筆頭として「クリエーターエコノミーの成長」が掲げられてます。

課金が可能なメールニュースレターのSubstack、ブログプラットフォームのMedium、近くIPOを予定しているパトロンサービスのPatreon、日本でも話題沸騰中のClubhouse

その他にもアメリカのメディア業界で急成長中の課金可能なニュースレター(メルマガ)配信サービスの「Substack」には多くの著名ジャーナリストが大手メディアを離れて有料ニュースレターを開設し、昨年末の時点で合計25万人の有料購読者を有するまでに成長しています。トップ10位に入るパブリッシャーの売上の合計が1,000万ドル(約10.4億円)を超えていることも以下のAxiosのレポートで報じられてます。

日本におけるnoteに近い課金可能なブログ・パブリッシング・プラットフォームの「Medium」もコンテンツの閲覧やClap(いいね)などの評価に応じて対価を得ることができるパートナープログラムへの登録者数が2020年の間に106%も増加したそうです。実際にその中で初めての投稿を書いた人が65,187人、Mediumがクリエーターに支払った報酬額の合計が1,100万ドルであることも報じられてます。

投げ銭感覚でクリエイターを支援できるクラウドファンディングサービス「Patreon」は既に時価総額が12億ドル(約1,256億円)との評価を受け、近くIPOが予定されています。ちなみに以下の記事を公開した有力テック系ニュースサイト「The Information」では「クリエーター・エコノミー」担当のレポーターを募集している程です。

今日本でも急速に話題になりつつある音声SNSの「Clubhouseも近い将来、投げ銭(Tip)やチケット販売などの課金プログラムを計画中と報じられてます

極端な例かもしれませんが世界で最も稼ぐユーチューバーは現在9歳のライアン・カジくん、なんと今年で3年連連続の首位で年収2,950万ドル(約30億5,000万円)だそうです。

ただ、こうした記事だけ見ると収益を上げることができるのは一部のユーチューバー、セレブ、有名人だけなのではないか、という印象を持つ人もいるかもしれません。

セレブ・著名人だけではなく、「普通の人」でも恩恵を受けることが出来るクリエーターエコノミーの可能性

「パッション・エコノミー」についての記事を執筆し、著名VCのアンドリーセン・ホロウィッツにてプラットフォームのスタートアップ等への投資に携わり、昨年の夏に独立をしたLi Jinさんがタイムリーに公開している記事のタイトルには、『クリエーター・エコノミーのミドルクラス(中流階級)の構築』と掲げられています。

一部の著名人だけでなく、100人、1,000人のファンに対して自分の好きなこと、得意なことを表現・発信することでインターネットの強みであるロングテール効果を活かし、多くの人にも「好きを仕事に」の恩恵が広がることを予測・期待している論考を寄せています。

コロナ禍で急速に加速したデジタル化を踏まえ、新しい取り組みに挑戦しようとしている人にとって、2021年はこうした「好きを仕事に」について考えるよい機会になるのではないかと思います。

もちろん誰もがYouTuberになることを推奨している訳ではなく、医療従事者、教育者、介護や福祉に取り組む人、地域活動、伝統工芸に取り組む人であったとしても、大事な、自分が思い入れを持って取り組んでいる活動、或いは趣味の活動が届くべき人にきちんと届き、そこで繋がり、やりがい、対価、報酬等が発生するような日々の営みに、もっとが光があたることを期待しています。

*AngelListの創業者で著名エンジェル投資家のNaval Ravikant(ナバル・ラヴィカント)氏のツイートも意味深でとても印象的です。

・Bitcoinは連邦準備銀行からの離脱
・DeFi [Decentralized Finance(分散型金融)]はウォール・ストリートからの離脱
・ソーシャルメディアはマスメディアからの離脱
・ホームスクールは産業教育からの離脱
・リモートワークは9時-5時勤務からの離脱
クリエーターエコノミーは雇用からの離脱
・組織を離れつつある個人

cover image: YouTube CEO Susan Wojcicki : January 2021 Community Letter | Our 2021 Priorities


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