日本が発展途上国のビジネススタイルに学ぶべき理由
この記事を読んで感じたのは、残念ながら日本のビジネスが目に見える形で下降線をたどり始める兆しではないか、ということだ。
新型コロナウィルスがもたらす変化は、時計の早回し・早送りであって、特別な予想外のことが起きているわけではなさそうだ、ということは新型コロナウイルスが流行り始めた昨年3月に書いた。それから1年半以上が経つ。
もちろん新型コロナウイルス特有の事情もあるだろうが、冒頭の記事に書かれていることは、人口が減少し、インバウンドの来訪も思うようにいかず、新しいお客が増えない環境下で受け入れられるビジネスとは何かを、象徴的に表す先行事例のように思う。
飲食店に限らず、人口が減る中で日本のビジネスが新たなお客様を獲得するには、同業他社から奪ってくるゼロサムゲームを戦うか、あるいは海外にマーケットを見つけるかしかない。飲食店に関連するビジネスであれば、インバウンドのような海外旅行客を獲得するのでない限り、日本国内の中では他店との顧客の奪い合いになっていくし、総客数は減っていくので業界全体としてはゼロサムどころかマイナスサムのゲームになる。日本人の収入が伸びていない中ではなおさらだ。
言うまでもなく、売上・収入が減少すればその分だけ毎月の定額の支払いは重たくなっていく。それを「サブスク」といった目新しい言葉に置き換えても現実は変わらない。これは toBのビジネスも toCでも本質的には同じだ。
こうしたビジネス環境でも通用する売り方は何か、と考えると、いわゆる BOP ビジネスの手法が思い当たる。具体的な例としては、たとえばインスタントコーヒーなら、大きな瓶にまとまった量を入れ売価は高いがグラム単価では割安という日本ではそれが普通の仕立て方ではなく、ホテルの客室に無料で置いてあるような1杯分だけを小分けにパックしたものを、グラム単価は割高だが少額の売価で買ってもらうやり方である。
実際に途上国のスーパーなどに行くとこうした売り方がみられるが、日本では、1杯分のコーヒーは10パック入りなどにまとめられていて、1パックだけを売っていることはまずない。
日本でそれに近い売り方をしているのは、チロルチョコがそういうものかもしれない。コンビニでも見かけるが、1個20~30円という価格は、最も販売単価が安い商品の一つではないだろうか。だが、そのチロルチョコも、さらに小さいものはまとめて一包みで売られているところは興味深い。
冒頭の記事で取り上げられている ぐるなび のビジネスモデルが瓶単位で売られているインスタントコーヒーだとするならば、食べログのビジネスはBOPタイプの商売、1杯分のインスタントコーヒーのばら売りになぞらえることができるのではないか、と思った。
KDDIが今年から提供をはじめた定額料ゼロの料金プランpovo2.0にも、そうしたBOPビジネス的な要素を見て取ることが出来る。
今後、こうした観点でビジネスを再考する必要が出てくる業界は少なくないのではないだろうか。
その意味でも、日本の企業がアフリカなど BOP ビジネスの場に学ぶことは少なくない。一人一人の所得が決して高くない国で、どのようにしてモノやサービスが売り買いされているか、よく見て活かしていくことが今後の日本でビジネスをしていく上で重要なことだと感じている。
途上国は、これから経済発展する国であれば発展途上国であるが、一方でこのまま経済の衰退を止められなければ衰退途上国になっていく。そして、坂を上る発展途上国と坂を下る衰退途上国は、同じ坂の途中ですれ違うことになる。衰退途上国の未来は、発展途上国の現在ないし過去に重なる部分があるだろう。
日本は果たして衰退せずにいられるか。もしそれが不可避なのであれば、これからの日本のビジネスモデルを考える時に、日本が発展途上国から学べることは多い。
もっとも、発展途上国のビジネスモデルから学べるほどに海外に目を向けることができれば、海外進出したり、海外のお客様を日本に取り込んでいくことによって衰退を回避したり緩やかにすることも期待できる。
その意味で、日本はいずれにしても発展途上国のビジネスにもっと注目する必要があると思っている。
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