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マイクロマネジメントは逆効果?リモートワーク時代に成果を生み出すマネジメントとは。


皆さん、こんにちは。
今回は「リモートワークにおけるマネジメント」について書かせていただきます。

――中高年の管理職を中心に、在宅勤務への否定的な声が目立つ。
「昨春の緊急事態宣言で強制的に始まった在宅勤務だが、明らかになったのはデジタル化やペーパーレス化といった在宅勤務に必要なインフラや制度を整えていた企業と、そうでない企業で進展に大差があったことだ。宣言解除後、コロナ前に対応が進んでいた企業の実施比率はそう下がらなかったが、急ごしらえの企業はコロナ以前に戻ってしまった」「若い世代は、在宅勤務を生産性が上がるシステムとして受け入れている。問題は、理屈抜きにテレワークを嫌う中高年管理職。若い頃から親しんだ(一同に集う)大部屋方式、対面主義、長時間残業が当然で、こうした日本的システムから離れることに抵抗する。これは世代間問題だ」
「中高年管理職は『リモートでは部下の管理ができない』としがちだが、デジタル技術の進歩は、4~5年前の段階でこの議論を無意味にしている。『全部リモートでできる』と答えたい」
(中略)
――在宅勤務を、職務を明確にして契約するジョブ型雇用や成果主義など、従来の働き方の見直し策とひとまとめに考える議論が多い。
「最近、ジョブ型やテレワークを推進してきた労働分野の専門家は皆、この誤解を解かねばならないと動いている。ジョブ型雇用は日本的雇用システムの見直しのためには不可欠だが、ひとまとめの議論は(推進したい立場にとって)ひいきの引き倒しになっている」
「成果主義や、実労働時間にかかわらず労働時間を一定とみなす裁量労働を導入しなければ、テレワークはうまくいかないとの考え方は古い議論だ。目の前にいない社員の働きぶりはモニタリングできないとの前提があるからだ」
「今のテクノロジーをもってすれば社員の働きぶりや労働時間は、大部屋管理以上に正確に把握できる。こうなると裁量労働制の必要性さえ薄くなる。ホワイトカラーのインプット、アウトプットの『見える化』を徹底することで評価はできるはずだ。企業は問題点を言う前にデジタル化を進め、社員もプライバシーを守りながら自分の仕事ぶりをアピールするよう発想を変えるべきだ」
テレワークとジョブ型の親和性が高いことは否定しないが、職務を限定しないと在宅勤務がしづらいとの発想も古いと感じる。営業なども含め、ホワイトカラーの仕事はかなりの部分テレワークでできている」
――在宅勤務やジョブ型雇用ばかりでは、若者が能力を磨けないのでは。
「大学1年生が友人をつくれない、新社会人が誰に仕事の仕方を聞いたらよいかわからない。こうした話を聞くたび、在宅勤務で社会の新しい環境になじむことの難しさを感じる。だが、対策もある」
在宅勤務が浸透している企業でも、新人はあえてオフィスに出社させているところがある。テレワークマネジメントの田沢由利社長は若手を自分の『かばん持ち』と称して、他社とのネット上の会合に同席させ、業務を教える工夫をしていた。リモートで任意参加の雑談会を開き、ネット上の分身のアバターを通じて社員同士の親近感を高めるなど、できる工夫から始めてほしい」


記事の中には、「中高年管理職の意識改革が必要」とあります。
一般的には、年齢が高く、従来の日本的な働き方、日本的なマネジメントに慣れている人ほどコロナ以前の働き方に戻したくなる傾向にあるのかもしれません。
ですが、当社のような比較的若い管理職が多い職場においても、「リモートでは部下の管理がしにくい」と感じる人が多いこともまた事実です。

リモートでの管理ができないわけではありませんが、しにくい、やりにくいと感じる中、どんな工夫が必要なのでしょうか。
“意識改革”ありきではありますが、意識とともに変えていかなければいけないポイントを整理してみます。

■リモートマネジメントで直面する課題

多くの管理職が直面している課題は、以下の通りです。

目標管理
→目標設定があいまいだと、成果も中途半端になる。リモート環境下で評価もあいまいになる。
業務の進捗管理
→上司が見ていないと自分で業務を進められない人がいる。何がどこまで進捗しているか把握しづらい。
業務で困っていること、業務が進まない理由の把握
→何が原因で困っているかなど、状況を見ながら指導することが難しい。
チームの連携
→他人への関与が減り、困っている人、進捗が遅い人がいる時に、チームで助け合えない。
業務のアップデート
→自分のやり方でしか業務が進められず、隣の人のやり方を見よう見まねで吸収することが減る。
信頼関係の構築
→コミュニケーションの機会が減り、信頼関係を築くこと、相互尊重することが難しくなっている。
抜擢の機会
→個人の成長を見逃しやすく、抜擢機会を創出しにくくなっている。

このような課題に直面している中、ただでさえ忙しい管理職層に対して、さらに「今の働き方に合わせたマネジメント手法にアップデートしよう」と言っても、なかなか酷な話です。何をどう変えていけばいいのか分からないまま、やりづらさを感じながらも今までのマネジメントスタイルをそのまま続けている人も多いと思います。

■リモートマネジメントに必要な3つのポイント

では、どうやってマネジメントの仕方を変えていけば良いのでしょうか。
まずは最低限、意識すべきことを挙げてみます。

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①チームが「自走できる目標」を設定する

リモートワークの環境下では、各個人の業務目標を明確にすることの重要性が増している点は説明するまでもないですが、それだけでは不十分です。
以前、こちらにも投稿させていただきましたが、目標設定や、それに伴う評価制度のアップデートはもちろんのこと、個人目標だけでなく、チーム全体の目標を今まで以上に明確化していく方が良いと思います。
チームの目標をしっかり設定すると、個人だけでなく、チームとしての動きが出てきます。
そもそものチーム目標を考えるところからチームメンバー全員を巻き込み、チーム目標を皆で設定し、皆で達成に向けてのアクション計画を練り、皆で足りない動きを補い合う、というような「チームの自走」を生み出すマネジメントが必要です。

リモートでマネジメントするというと、今まで以上にマイクロマネジメントが必要であると考える人が多いかもしれません。業務をしている姿が見えなくなったことが不安で、必要以上にこまめなホウレンソウを求める人も多いと聞きます。
ですが、リモートマネジメントを機能させるには、信頼する、思いきって任せる、権限移譲するといった、自律を促すスタイルが有効で、メンバーのセルフマネジメント力を向上させるためのサポートをしていく、という発想に切り替えることが大事です。

その上で、上述したような「個人の自走」にとどまらず、「チームの自走」を生み出すマネジメントの工夫は、リモートワークにおいてはなくてはならないものだと思います。

②チームの「共有/共感/共創」を生み出す

対面でのコミュニケーションの量が減り、情報の伝達量が少なくなっている分、今までと同じやり方ではニュアンスも伝わらず、意思疎通に誤解が生まれやすくなるなど、情報伝達の仕方や指示の出し方を変えなければいけないと感じている人も多いと思いますが、一言で言うと「コミュニケーションの量と質を向上させる」ことが重要です。
オンラインで顔を見ながら話すこともありますが、チャットツールなどでのテキストコミュニケーションの頻度が格段に上がり、少ない情報量で、人を動かすことのできるマネジメントの価値そのものも上がってきていると思います。

その中で、業務遂行上、必要不可欠な情報を共有し合い、チームの目標やビジョンに対して共感を生み、チームで協働しながら新しい価値を共創していくことは、リモートワークという同じ場所にいない時間が増えるからこそ、より重要性が増しているのです。

具体的に「共有/共感/共創」の質を高めるためには、
・チーム全員が顔を合わせる場を定期的に作る
・業務以外のコミュニケーションも大事にする
・うまくいったことを共有し、チーム内の他者の成果に興味関心を持つ
・うまくいかなかったことを共有し、チーム内での助け合いを促す
・「これができるといいよね」というワクワクするビジョンを提示し、その実現に皆を巻き込む
などの取り組みが必要だと思います。

③チームの「可能性に投資」する

リモートワークになって以降、あらゆる場面で、「今までの信頼関係があり、コミュニケーションコストをかけなくても仕事を依頼できる社員に業務が集中してしまっている」という状況は増えていると思います。
また、マネジメントしている範囲が広い人や、部下の人数が多い人ほど、リモートワークによって一部のメンバーにコミュニケーションが偏ってしまうという状況も多発しているのではないでしょうか。

入社間もない新入社員や中途社員に一から説明するよりも、既に動き方が分かっているベテラン社員に仕事を任せる方がカンタンであることは事実ですが、そうすると人も育たず、一部の社員に業務が集中して不満が出やすくなるなど、負のスパイラルが起こってしまいます。

そんな中、チームの「可能性」に投資する、という考え方は重要で、育成コストがまだまだかかってしまう社員に対して、個人の強みを見つけ、引き出し、期待をかけ、重要な仕事をどんどん任せていくというフローを確立できると、マネジメントレベルとしては非常に高いものになります。

「入ったばかりの人を抜擢するなんて」と思われる方もいるかもしれません。
ですが、“抜擢”とは、役職や肩書きをつけることではなく、何かの責任分掌を持ってもらうことで、そのサイズ感は人の能力や実績に合わせて変えていけば良いのだと思います。

たとえば、1年目の社員にも「あなたは●●責任者ね」といって、一つの役割を責任者として任せると、メキメキと頭角を現し、自分なりに考え、自発的に行動するようになり、自他ともに成長を実感できるといった事例を何度も見てきました。これはリモートワークの環境下でも十分遂行できることで、むしろリモートワークで人の成長がお互いに見えにくくなり抜擢機会が減りがちな状況でもどんどん人の抜擢ができるチームや組織は今まで以上に強くなると思います。


■リモートワーク時代のマネジメントを機能させるカギ

これまで、リモートワークの環境下では、従来のマネジメントでは通じなくなっている部分をアップデートしなければいけないという話をしてきましたが、そうすると更にマネジメント層の管理コストが高まるように思えると思います。
ですが、リモートマネジメントをうまく機能させられれば、結果的にマネジメントの負荷軽減につながる可能性も十分秘めています。

繰り返しになりますが、従来の対面型の“指導”や“管理”から、リモートワーク時代のマネジメントにスムーズにシフトしていくためのカギは、一人ひとりに対するマイクロマネジメントを強めるのではなく、『チームを信頼し、チームの自走を生み出し、お互いの状況を理解・尊重し、協働し合える環境を構築する』ことです。

そのためのチームの雰囲気を作ったり、その環境作りに巻き込む人を自然と増やしたりする、というような場作り・風土作りという“演出”の仕方にこそ、これからのマネジメントのあり方のヒントが隠されているのではないでしょうか。


#日経COMEMO #NIKKEI

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