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現実から仮想空間に移行したイベントは現実に戻れるのか=ドイツの事例「ディギコミ」から考える

小鳥遊キアラさんなど海外のVtuberを広くキャスティングしたドイツのオンラインフェス「ディギコミ」が同時接続数で8000人を超え、昨年の記録を更新しました。

今回は前回の投稿「リアルイベントの代替にとどまらないオンラインフェス=海外VTuber編」の続きとして、開催が終了した「ディギコミ」について改めて考えてみます。

日本ではオンラインイベントは「トキ消費」と呼ばれるようなライブエンタメをうまく取り込みつつ成果が現れているようです。

欧米におけるアニメやマンガのファンや日本ファンが多く集まるいわゆるアニメコンベンションというイベント形式は、ゲストによるステージパフォーマンスやクリエターブースを一方的に消費するだけでなく、趣味が同じひとたちと交流ができるコミュニティとしての側面も強く、比較が難しい面もあります。

まずは、ドイツで5月22日に開催された「ディギコミ」を振り返ってみます。

先の公式ツイートで報告された開催実績は以下の通りです。

・仮想空間「MixUp」の利用者→2500人(うち常時利用者は200人ほど)
・Twitchの配信視聴者→6万2000人(英語、ドイツ語2チャンネルの合計)
・最大同時接続数→英語チャンネル8025人、ドイツ語チャンネル6300人
・Discord参加者→5500人

ネットで活躍するVtuberに特化したことで、Twitchで配信されたプログラムは、欧米の有名Vtuberの人気にあやかり視聴者を伸ばしましたといってよいでしょう。一方で、ドイツ国内のVtuberも多数参加し、全体としてVtuberという界隈の盛り上げに貢献したようです。

仮想空間「MixUp」での交流も界隈の盛り上がりに一役買ったと言えると思います。

ここで気付かされたのは、有名ゲストや現地のアーティストを巻き込み、参加者同士の交流まで可能にすることで、界隈を盛り上げていこうというコンセプトの存在です。これはアニメコンベンションの本質でもあり、「ディギコミ」の主催者であるドイツ最大のアニメコンベンション「ドコミ」がまさにそのリアルイベントで実施してきたものに共通しています。

一方で気になるのは、リアルイベントのオンライン化を推し進めた努力はどのような実を結ぶのかという点です。

ワクチン接種が行き渡り感染が収束し、リアルイベントが再開されると、こういった努力は無駄になるのでしょうか?

ヒントは過去の「ドコミ」にあるかもしれません。「ドコミ」は2019年に日本から音楽プロデューサーの中田ヤスタカさんを招待しました。このとき、自身が楽曲を提供したVtuberのキズナアイも「ドコミ」の会場に「現れて」います。その様子は来場者と思われる人が投稿した動画で確認できます。

また、そもそも「ドコミ」はマンガやアニメだけでなく、ボカロ文化の紹介にも注力してきました。近年では初音ミクの公式コンサート映像の公式上映会が会場内で実施されています。

つまり、リアルイベントの「ドコミ」はそもそもバーチャルアイドルとも親和性が高いわけです。そして今回の「ディギコミ」で盛り上がりを証明してみせたVtuberは、今後はリアルイベントの「ドコミ」にも進出するかもしれません。

こう考えると、リアルからオンラインに移行したイベントは、オンラインで醸成した企画を引っさげて、リアルイベントに戻ってきそうだという見立ても成立しそうです。

オンラインイベントに注力した結果、リアルイベントの充実につながるという見通しを「ドコミ」は見せてくれたような気がしました。そしてその先にはコロナ以前に注目されていたアニメ文化のライブエンタメの復活があるのかもしれません。

(2022/4/22修正:タイトルの漢字ミスを訂正。「以降」→「移行」)

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タイトル画像:「ディギコミ」の仮想空間のログイン画面のスクリーンショット。



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