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【COMEMOの視点】 携帯料金、政治介入で下げ 是か非か

坂本 英二(編集委員兼論説委員 (株)日本経済新聞社)
菅義偉官房長官が講演で日本の携帯電話の利用料について「今より4割程度下げる余地がある。競争が働いていないと言わざるを得ない」と語りました。国際比較でみた日本の通信料はかなり割高で、携帯大手は過剰な利益を上げているとの意識が背景にあります。通信料は安いに越したことはありませんが、安定したサービスや技術革新には一定の利益が必要でしょう。そもそも担当閣僚でもない政治家が携帯料金の水準にまで口出しすることの是非も論点です。ご意見をお聞かせください。
【議論のヒント】
・総務省が2017年7月に発表した「電気通信サービスにかかわる内外価格差調査」は、スマートフォン(スマホ)について毎月のデータ使用量が2ギガ(ギガは10億)バイト、5ギガバイト、20ギガバイトのプランそれぞれについて米ニューヨークや英ロンドン、韓国ソウルなど5都市と比べました。日本の携帯加入者の月当たりの使用量は現在4ギガバイト弱。一番近い5ギガバイトのプランでは、日本(東京)は3760円。ロンドンや仏パリと比べると5割ほど高い一方、6000円を上回るニューヨークなどは下回り、6都市中3番目に低い水準です。使用量が大きい20ギガバイトのプランでは上から2番目で、割高感があります。総務省の家計調査による移動電話通信料の支出は、17年は1世帯当たり年間10万250円でした。5年前より1万9000円近く高くなり、負担感が増しているのは間違いないようです。
・安倍晋三首相は2015年に「携帯料金などの家計負担の軽減は大きな課題だ」と発言しました。その後に当時の高市早苗総務相が割安プランの新設などを要請しましたが、政権内には大手3社の対応はなお不十分だという意識があります。今回の菅官房長官の発言はアベノミクスを推進しても景気が思ったように回復していかない状況への焦りが影響しているとの見方もあります。携帯料金が下がれば家計の可処分所得が増え、個人消費の拡大につながる要素はあるでしょう。国民の支持も得られると判断している模様です。

コメント 
■久子 福田(AFP)
携帯料金が安くなれば、他の消費が上向くと考えているようですが、それは有りえないです。

■小室勝裕(製薬会社 購買部 開発購買兼全社コスト改革担当)

【非】です。
法人間購買で見積取得や価格交渉に関わってきた者として、値下げについて日々考える者として強い違和感を覚えます。
海外諸国での料金体系を参考にしたとの報道がありました。法人間取引に翻訳すると同じ仕様書で見積取得しないと意味がありません。今の日本の通信環境を前提に考えるべきです。(実際、欧米先進国に行くと、都市部でも4Gでなく3G回線に繋がることがよくあります)
金額の妥当性を決めるのは自由競争の中です。新規参入者を増やしやすい施策を考えるのが行政がすべきことです。
ちなみに今回のようなアプローチを認めると、代わる代わるスケープゴートを見つけることになりやすく、業界ごとに痛みが走る一方で法体系に関係なく行政の意思決定が出来る衆愚政治に陥りかねないことも危惧の一つです。

■cometaro(会社員)
石川さんの小林政務官へのインタビューも有益ですね。

基本的には、政府が価格水準に介入すると価格形成が歪められ非効率になるので、市場メカニズムが機能するように競争環境を整備する(非競争的な行為を排除する)という方向で対応すべきかと思います。記事に書かれている通りです。

「公共の電波を利用している」という点についても、道義的責任を問うて値下げを求めるよりも価格メカニズムで対応した方が良いと思います。独占使用権の見返りとして事業者は電波料を払うことが求められているのですから、この価格を適正に決めることで、希少資源を無駄にせず最も有効に使える事業者に電波を利用させる(=事業者の儲けすぎを防ぐ)ことが可能なはずです。

店頭での手続きに関しては、良い指摘と思います。日本ではゼロリスク信仰があること、またコンプライアンスとコストのトレードオフ(この場合は消費者保護と手続きの煩雑さというトレードオフ)の視点が乏しいという傾向がありますので、そのバランスを意識させることは重要だと思います。

■奥平 和行(日本経済新聞 編集委員)
一連の議論で引っかかるのが「海外と比較して日本は高い」というポイントです。気になるので同僚の記者に協力してもらい、海外の請求書を調べてみました。

高い?安い? 携帯料金を海外記者に聞いてみた:日本経済新聞

詳細は本文をご覧いただければと思いますが、高い、安いの簡単な国際比較は難しくなっているというのが感想です。

確かに通信会社は、

・利益の絶対額が大きい

・派手な広告宣伝を展開している

・横並び体質

・小出しの値引き

・分かりにくい料金プラン

といった点がない交ぜになって批判を受けやすく、実際にこの一部には同意しますが、政府の本来の役割は具体的な数値を示して値下げを求めることではなく、競争促進ではないでしょうか。その結果、値段が下がりサービスもよくなるというのが本筋では、という気がします。

■たったか(事務)
部分的に【是】です。
通信料金については、各携帯会社はアンテナ等の投資に対する原資がこれだけ必要で、この料金になっているとの説明責任があると思います。
ただ、全く理解できないのは、携帯会社が同時にスマートフォン等を販売していることです。
ここは切り分けるべきでしょう。
スマートフォンが本来機能として持っている、テザリングに料金が必要なのも疑問です。
あとは楽天の参入がどう携帯会社3社に影響を与えるかでしょうね。

■村野 孝直(BSテレビ東京「日経モーニングプラス」/COMEMOスタッフ)
村上臣さんの今朝のご投稿です。
利用者からは「回線が遅い」という声もよく聞く格安スマホ。MNOとMVNOの仕組みを分かりやすく解説していただいています。

違う、そこじゃない。携帯料金政治介入の顛末。
https://comemo.io/entries/10048

■クラーク(アーリーリタイヤー)
【是】です。
生活必需品であるインフラに関わる料金については政府がコントロールしても構わないと思います。有利な条件を濫用して新規参入の障害になっているので制限がかかるのは当然です。
携帯に使われる電波は有限であり、参入障壁が高いです。数社だけで事実上のカルテルを結んでいる状態では料金は高くなるだけです。
鉄道や電気・ガスなどのインフラ提供企業も本業そっちのけで必要以上にビジネスを拡大し過ぎていませんか。インフラ整備に関わる以外の事業は法人税を高くして国民に還元すべきです。

■進 江田(リクルーター)
まずは、何よりSIMロックを禁止することでしょう。携帯電話と抱き合わせで通信回線を売ることによって、収益を上げているのだから、抱き合わせ販売を禁止することが、回線の値下げの第一歩でしょうね。そうでないと本当の意味の通信会社にはならないですよね。

■山品 知之(システムエンジニア)
競争で携帯料金が下がっていくのが望ましいと思います。しかし、現実にはそうなってないので、キャリアが横並びで行っている値下げの障壁は指導で取り除いていかなければいけないでしょう。
携帯電話以外の新規事業で、シャア拡大のためにポイントやキャッシュバックを採算度外視でばらまくのをみて、その原資はどこから?と文句を言いたい。8万円の宿泊予約をして破格の3万ポイントバックうけたり、こまめに機種変して割引を最大限受けて、損しないようにしてますが。

■風間 政輝(無職)
「是」です。
キャリア大手3社の料金形態ははいつも横並びで、互いに首を締めない程度に忖度談合しているようなもの。自由経済と言いながら自由競争が働かず1兆円もの莫大な利益を計上しているのは異常です。それこそトランプのように政治が入って修正に導くのは当然やってしかるべきことです。

また、キャリアは通信料で稼ぐのが筋であって、端末は端末メーカー販売に任せるべき。消費者は好きな端末を買い、魅力的なサービスを提供するキャリアのSIMカードを買って使うというのが有るべき姿ではないでしょうか。キャリアの言うがままの端末でガラパゴス化し国際競争力を失ったのもそれが主因ではないでしょうか。

■飯田博之(IoT Business Producer)
携帯料金が下げにつながるような、政策、たとえば電波利用料やユニバの見直しなど含めた議論はまだしも、料金下げろという政府介入は、余計なお世話である。そのための一つの政策がMVNO市場活性化でしょうと。
また、世帯当たりの携帯料金負担額が高くなった、とか絶対額だけ見た議論になっているが(敢えてそうしているのかもしれないが)、世帯当たり回線数/データ利用量/速度など享受するサービスの対価として比較してないとまったく意味がない。
ということで個人的には、表面的な部分だけ見て「携帯料金下げろ」という政府介入はあり得ない。非。
が携帯会社が見かけ上でも対応している事情が気になる。

■村上 臣(電脳コラムニスト)
【非】です。政府が個別の料金にまで直接口を出すというのは自由経済の原則に反しており、市場メカニズムが阻害されます。

携帯電話事業は公共の電波を利用する事業であることから監督官庁(総務省)による許認可事業となっており、すでに事業を行う上ではその枠組に沿って進められています。これまでも行き過ぎた販売手法の見直し、窓口対応、新規参入事業者への対応等、ときの政策の要請に応えてきています。結果それが不十分ということであれば、有効な競争政策を提示すべきであり、それは個別の料金ではないと感じます。

民間企業としては利益をあげるために事業を行っているのですから、既存のルールに則って運営している以上特に問題はないと思います。政府として重要なのは料金の元になっているコストがどこからきているのか、5Gなどへの投資は適正かなど、国の通信の未来を広げるグランドデザインを明らかにし、その目標に向けて適切な方針を与えることではないでしょうか。

例えば、インフラコストを下げるために個別に投資している基地局の共用化を進める。そのためにここを第3セクター方式で分離する。大幅なコスト減が見込める代わりに未来への投資を加速させる、ないしは料金について一定の値下げを求める。このような形であれば事業者としても本気で取り組むインセンティブになるのではないでしょうか。

■Ryoichi Tokunaga(アルバイト)
携帯電話(スマホ)の料金は通話料とパケット料が大半を占める。
しかし、高すぎると感じるのはパケット料ではないだろうか?
政府が介入して携帯料金の値下げを通達するのであれば通信量に対する料金に的確なメスを入れる必要がある。
実は政府はすでに押さえていて小出しに大手キャリア3社に来年の参議院選挙に向け実行させるのであろう。
我々、庶民は安くなるのは歓迎であり自民・公明の政府に尻尾をもちろんふりますよ。

景気もほぼ回復し、景気の回復感がない庶民への有効手段に携帯が狙われたのは当然の結果だと思います。
便利な物は皆で有効に使うのがベストです。
しかし、車は高すぎます。車が安くなるような規制撤廃をお願いしますよ。税金も含めてですが。

■高橋義憲(独立系ファイナンシャルプランナー)
携帯電話の契約は分かりづらく、大手3社の料金は高いと感じますが、政府が料金を下げろということには違和感を感じますので、是か非を問われれば【非】ということになります。
消費者にとっても、格安スマホという選択肢もある訳ですから。
しかし、2年縛りとかSIMロックといった消費者の自由な選択を制約するような仕組みについては、撤廃すべきではないでしょうか。あと、携帯電話本体の購入代金とセットにした割引や携帯電話以外のサービスとの抱き合わせ商法などは、料金を分かりづらくしている原因の一つなので、見直しが必要かもしれません。
個人的には、auがライフネット生命と提携して生命保険を契約者に割引価格で提供していることには、疑問を感じています。料金が分かりづらい、不透明という批判があり、消費者センターへの苦情件数も多い生命保険と携帯電話のタッグは最悪のコンビではないでしょうか。
そうそう、家計に占める割合という意味では、携帯電話以上に大きいのが生命保険ではないでしょうか。政府は、こちらの方も何とかした方が良いのでは?

■塚崎公義(久留米大学教授)
【非】です。
政府が個別の価格にまで口出ししはじめると、統制経済になってしまい、市場メカニズムが阻害されます。
独占禁止法等に抵触するのであれば、是非とも取り締まっていただきたいですが、そうで無いならば、市場の競争に任せるべきです。

■村野 孝直(BSテレビ東京「日経モーニングプラス」/COMEMOスタッフ)
ご参考)
石川温さんの31日朝のCOMEMOのご投稿です。
菅官房長官「4割値下げせよ」にキャリアは「見せかけ値下げ」で対抗
https://comemo.io/entries/9978

■坂本 英二(編集委員兼論説委員 (株)日本経済新聞社)
通信料が高いか低いかの単純比較は難しいですね。携帯電話サービスへの不満は、複雑な料金体系も影響しているのではないでしょうか。

日本は通信料とスマホ購入代が絡み合い、「2年しばり」といった契約条件があります。そこに次々に「新プラン」が追加され、何が得で何が損なのかが簡単には分かりません。窓口で相談しようと思っても、かなり混み合っています。日本ではWi―Fiの使い勝手がいまだに悪く、通信大手と鉄道業界などの協力で改善してもらいたいものです。

石川様から政治の口先介入に関して「キャリアは見せかけ値下げで対抗」するのでは、との投稿をいただきました。同感です。通信大手3社は料金制度を分かりやすくし、利用者の潜在的な不満を解消していく努力をすべきでしょう。通信大手3社の連結純利益や売上高営業利益率が高水準なのは明らかですから、値下げに限らず企業努力の余地はありそうです。

■市原 俊亮(米国Pegara, Inc. 共同創業者兼最高経営責任者)
【非】です。

政府は国民生活を第一に考えての値下げを意図していることでしょう。なるほど、それはわからない話でもありません。しかし、最新の情報通信白書によればトラフィックは今後も益々増え続けることが予測されます。機械が益々インターネットへ接続するためです。これらの事業を推進していく役割の一旦を担うのは通信会社です。

あらゆるものがインターネットへ接続する時代、不確実性の高い投資案件へも積極的に参加する必要があります。これらの投資の源泉の一部は営業利益です。日本国は技術領域に対する投資金額の総量が米中とは比較にならないくらい小さいため、企業が自分自身で投資しなくてはなりません。

経済感覚を持たない政治家の人気取りのためのリップサービスにしか聞こえませんね。
国際競争力を奪うような行為は断固反対です。

■永濱利廣(第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト)
条件付で【是】です。

といいますのも、一律的な値下げとなると、家計部門への直接的な恩恵はあるでしょうが、通信会社の売り上げは値下げ分減少することが想定されますので、それに伴う設備投資や雇用等への悪影響も考慮しなければならないでしょう。

このため、携帯料金引き下げ策は、いかに移動通信事業者の競争環境の整備を図るかという観点で議論を進めるのであれば【是】ですが、家計支援策として議論を進めるのであれば【非】だと思います。

■後藤((^^;)
【是】でもなくば【非】でもなく、スルーします

菅官房長官様は、与党として国民の注目を浴びる”リップサービス”をされたのだと思います。総裁選挙前ですので。
「このくらいのリップサービスは、大手企業の伸び縮みの範囲内」という判断からだろうと思います。
今、国民の人気を取ることを優先し、永劫の通信料値下げを狙っているわけではないのでしょう。ずいぶん前から、なにがしかの選挙前に「通信料値下げ」案件を広げる傾向が何度もありましたから。
大手も心得ています。政府関連から「通信料値下げ圧力」が掛かったという理由から、”しぶしぶ”値下げ”をして、契約数の増加を狙い、その後、値下げ案件が注目され無くなれば、様々な商品を開発して通信料を”ジワリ”上げてきます。
この”ジワリ上げる”頃に、メディアが比較論評で”通信料が一番高い企業”を発表すれば、値上がりの勢いはなくなるでしょう。市場の競争とは、そうしたモノではないでしょうか。ただし、通信会社がメディアの”パトロン”でないところしか、発表できないでしょうけれど。
日本ではできない通信料金の値下げですが、海外から「通信料金の黒船」がやってくれば、一気に”開国”することになるでしょう。ただし、政府・行政の規制という”いやがらせ”が無ければの条件付きです。この際は、通信業者とスクラムを組んで黒船を海の向こうへ押し返す”政治的判断”が働きますので。
日本では、このように政治・企業・メディアが複雑に絡んで、「〇〇料金の値下げ」は実行段階で足踏みしてしまうのです。消費者・利用者は、文句は言えますが改革には手が届きにくいですね。

あいかわらず、「改革は難しいなぁ」、と思った次第。

■吟遊詩人(世捨て人)
【是】です。
そもそも民間の競争に国が口出しすべきではないのでしょうが、通信各社の過当競争のツケを消費者に廻すようなら、国の指導で、ぎゅっとお灸をすえても良いのではないかと思うからです。

全くの想像ですが、
柔らかい銀行さんが、新規参入し、地位を確立するために、大手に局地戦を挑んできたのが始まりではないでしょうか。毎度、毎度仕掛けてくるゲリラ戦に既存の通信会社は、陣地を取られないように布陣しなければならず。最終的に、その戦費調達を民間人に負わせてきた。だから、通信費が割高になってしまったのだと理解しています。

もしそうであるならば、
激しい競争環境にあるはずなので、暴利を貪っているとは思いませんが、戦費調達の兵站を思いっきり絞って、休戦して貰いたいものです。よそ様の戦いに他人様の財布の中に手を突っ込まれるのは、不快です。

基本的な意見は、すでに
https://comemo.io/entries/9900
で、述べさせていただいております。

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