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「集中か分散か、それが問題だ」 どんな時にどう使い分ける?

お疲れ様です。メタバースクリエイターズ若宮です。

今日は「集中か?分散か?」というテーマで書いてみます。


集中と分散、どちらもメリデメがある

集中するか?分散するか?

「集中」と「分散」、どちらもそれぞれに利点と欠点があります。

注意力が散漫になるとうっかりしてしまったりしますし、なにか一つのコトに集中する方が物事は早く進みます。しかしその一方で、集中しすぎると視野が狭くなってしまったり、近視眼的になりすぎて中長期的にはマイナスにつながることもあります。


なので、「時には集中」を、「時には分散」を心がけるべきなわけですが、そのバランスというか、使い分け方みたいなのがある気もします。

僕は長い間企業の新規事業にも携わってきましたし、自身も今は経営者です。「経営」で大事なのは、リソースの適切な分配です。時に「選択と集中」をし、時に多角化したりリスク「分散」をしたり…その「舵取り」こそが経営と言っていいかもしれません。

ではどんな場合には「分散」したほうがよいのでしょうか?


「他者主体」のときは「分散」

一つは主体が自分にあるのか、それとも他者にあるのか、という観点があるかもしれません。

「分散」した方がいい場合というのはどういう場合でしょうか?

「分散」といえば「リスク分散」という言葉が真っ先に思いつくかもしれません。

一つに集中してしまうとリスクが高く、何か問題が起きた場合には、全てが影響を受けてしまう。そういう場合に一つに依存しないようにすることが「リスク分散」です。


例えば、株式投資をする際には「分散投資」という戦略が有効です。また、インターネットサービスではサーバの負荷やトラフィックを分散する構成や冗長化が重要でした。昨今はそもそもが「クラウド」なのでサーバの分散を気にすることは減っていますが、それでも他サービスとのアカウント連携をしているGAFAに障害が出たりすると大きな影響がでてしまったりします。「分散」によって、障害が発生してもサービス全体に影響が出るのを防ぐことができるわけです。


ここで「分散」を考える上で重要なのは「依存」です。依存度が高まると、そこに不具合が生じた時に影響が大きくなってしまうからです。

「自立とは依存先を増やすこと」という熊谷普一郎さんの言葉をよく引用します。

熊谷さんは障害の当事者研究をされている方ですが、障害者が家族に依存しすぎてしまうとかえって社会から孤立し、自立から遠のくと指摘しています。「自立」して見える人は実は周りの人や社会の中にある記号や装置など頼れる先が多いからであって、障害者はそうした頼れる先が少ないので、親がつきっきりで世話をしたりすることになりがちです。しかしそうすると依存度が上がってしまい、もし親がいなくなったら生きていけないようなことになってしまう。

依存先を増やしておくことで、一箇所に頼り切るのではなく、リスクが分散できるのです。


これは主体が他者にある場合は、依存してしまうと共倒れのリスクがある、ということではないでしょうか。「主体が他者」というのは自分がそれをコントロールできない、ということです。自分がコントロールできないことを誰かに頼るときに「集中」してしまうとリスクが高まります。

サーバーがダウンする、株価が暴落するなど、自らコントロールできないこと、つまりいわば他力に頼る場合には、分散を心がけることが賢明だと思います。


「自分主体」でコトを起こすときは「集中」

反対に、自分が主体でコトを起こす場合には、「集中」が重要かもしれません。

特に新しいことを始めるとき、企業が新事業を立ち上げる場合など、0から1を生み出す際には、車の発進時と同様、大きな力が必要です。

自ら何かを成し遂げたいと思った時、その力を分散させてしまうと、中途半端な結果に終わってしまうことが多いですよね。二兎を追うものは一兎をも得ず。ですから、自分が何かを成し遂げる時は、「集中」が大事だと僕は思います。

これは事業でも同様で、以前、こちらの記事でも書いたことがありますが、とりわけ0→1フェーズでは分散せずに一点に集中することが必要です。

今まだ世の中に新しい価値を生み出すことを「世の中に風穴を開ける」と表現しますが、大きな穴を開けたいからといって、太い丸太で紙に穴を開けようとしても、うまくいきません。最終的に大きな穴を開けたいとしても、まずは細く尖らせた先端で小さな穴をまず開けることから始め、そこからぐりぐりと徐々に大きくしていく必要があります。


なぜ丸太では穴が開かないかというと圧力が分散するからです。最初からあれもこれもと大きなプランを掲げても、力が分散してしまい、結局何も成し遂げられないということになりかねません。また、新しいことを始める場合は抵抗や摩擦もありますから面が大きいほど抵抗も大きくなるわけです。

主体が他者にある場合とは違い、自ら何か新しいことを始める時は自らの力で状況を変えていかなければならないので、集中した方が良いわけです。


時間軸とともにまた「分散」も

自力で新たなことを始める時には集中が大事だと述べましたが、これはまたフェーズで変化するところもあります。

企業でも一つの事業がある程度育ったら、集中から分散へのフェーズに移行することがあります。立ち上げ時は集中的に力を入れる必要がありますが、事業が一定立ち上がるとそうした集中的な力はそれほど必要ではなくなります。車を動かす時も、最初は力が必要ですが、一度動き出してからは一定慣性の力で力を抑えることができます。

そして、どんな優れた事業でも永遠に成長し続けるわけではありません。事業は成熟し、いずれ衰退期を迎えます。事業の衰退は人の老衰と同じようなもので、基本的には時間の変化であり、コントロールできるものではありません。

するとここで、「集中」のままでいるとまた、「依存」の問題が発生してしまいます。


なので、立ち上げ期を経て一定力がかからなくなった段階で、また別の新しい事業を立ち上げる必要があります。いわば時間軸を「分散」させるのです。

これはよく「プロダクトポートフォリオ」ともいわれるもので、こうして時間軸の異なる複数の事業を組み合わせることで、会社全体としては「分散」を図ることができます。


以上みたように、「集中か?分散か?」というのは時と場合によってどちらも必要です。自力か他力かという観点や、フェーズを考慮し切り替えることの重要性を過去の事業立ち上げの経験から学びました。

逆にいえば、他力に一極集中で依存してしまったり、何かを立ち上げる際に散漫になってしまったり、フェーズを考えずにずっと集中しかしないとあまりうまくいかないので注意しましょう。

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