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リスク回避型の就活が主流に?インターンシップの形はどのように変化するのか

皆さん、こんにちは。今回は「インターンシップ」について書かせていただきます。
 
今月1日より、2023年度新卒採用が解禁されました。ただ、これは表向きのスケジュールで、実際には5月時点で選考を終えている、または学生に内々定を伝えている企業は多く、現在就職活動は佳境を迎えています。
 
コロナ禍での就活を余儀なくされてきた学生にとって、その世代が実際に入社すると、これまでとは違う傾向が少しずつ明らかになってきました。社会の変化だけでなく、日常生活でのあらゆる制約を受けてきた就活生は、オンライン採用によって企業の社員と直接的な接点が少ないまま会社を選ばなければいけなくなりました。
そのため、「入社してみたら、全くイメージと違った」「就活中に受けた説明とは違った」と、企業に対する不満や不信感を募らせる人も出ています。
また、実際に入社後、オンライン会議やチャットツールでのやり取りがメインになることで、会社や組織、チームへの帰属意識も低く、孤独感を抱える人もいます。
そんな先輩たちの姿を見て、今まさに就活中の学生も不安を募らせています。
 
こちらで、就活環境を取り巻く大きな変化について述べましたが、最近の就活生が気になること、避けたいリスクなど、今の学生の価値観の変化について、より詳しく見ていきます。

長期インターンを募集する企業が増えている。専門の求人サイト「キャリアバイト」を運営するエン・ジャパンによると、同サイトの22年4月の新規求人公開数は21年比で2倍に増加した。
以前は長期インターンというと学生を安い賃金で使い倒す『ブラックインターン』のイメージが強かった」。近年ではリモートワークの普及が進んだことでIT企業のインターンが増えている。「単純作業ではなく、営業やマーケティングなどアルバイト以上の経験ができるインターンに参加すべきだ」とアドバイスする。
就職情報サイトを運営するディスコ(東京・文京)の調査では6月1日時点の内定率は約8割に達する。井上氏は「就活が早期化する中、中小企業などでは長期インターンを活用して優秀な学生を採用しようとする動きが増えてくるのではないか」と見る。


■最近の就活生が気になる質問

2023年度新卒採用においては、最初から最後までオンライン面接という企業は減っています。当社もそうですが、最終面接は対面形式をとるなど、選考過程において、少なくとも一度は実際に対面で話す機会を作りたいと考えている企業は多い状態です。

最終面接で初めて会社に行き、「対面が初めてで緊張します」と話す学生は多く、オンライン面接が一般化したことに伴う、いわゆる企業に訪問する際のマナー、部屋を出入りする際のマナーなどが分からないという声も聞かれます。

就活生が面接やOB訪問でよく聞く質問を挙げてみると、「知りたいこと」「気になること」「企業を選ぶ基準」が透けて見えてきます。

①待遇/給与などの条件
→「仕事の報酬は仕事で」という価値観を持つ人は、少なくなってきているのかもしれません。与えられた仕事に一生懸命向き合い愚直に努力していれば、結果的に後からお金や出世がついてくる、という考え方です。
「給与不満ばかり言う人」や「労働者の権利ばかり主張する人」を積極的に採用しようという企業は少ないと思いますが、そんな企業の採用人事の思いとは裏腹に、最近の就活生は、比較的ストレートに「給与は何年目でどのくらい上がりますか?」という質問をぶつけてきます。また、「勤務時間は何時間で残業はどのくらいありますか?」など労働条件や労働環境を気にする声は予想以上に多いです。そして、「そのような質問をしただけで落とされてしまうような企業なら、こちらからお断り」と考えている学生もいます。
 
②ワークライフバランス
→従来の「就社」意識から「就職」へと転換している中、多くの就活生は、「プライベートな時間を大事に、充実した生活を送りたい」「自分の趣味など仕事以外に使える時間を犠牲にしたくない」という価値観へと確実に変化しています。
「ワークライフバランスを意識している社員の割合はどのくらいですか?」「仕事以外の時間をどのくらい持てていますか?」という質問は少なくありません。また、「自分の好きなことや個性を活かした仕事に就きたい」と考える人も多く、自分の知識やスキルの範囲で給与をもらい、スキルアップによってできるだけ多くのお金も欲しいが、なりふりかまわず仕事に打ち込みたいわけではない、というような価値観になってきているように思います。プライベートを犠牲にせずに、「好きなことをしてお金を稼ぐ」という考えを持つ人が増えています。
 
③研修/育成制度
→「どのような教育制度があるのか」、「どのような研修が用意されているのか」といった、新入社員が入社後に、既に作られたシステムや仕組みとして、どのようなガイドライン、マニュアルがあるのかを問う質問はこれまでと変わらず多いです。社会人として身に着けていくスキルや知識は、段階的に準備されていて、皆同じようにそのカリキュラムをこなしていけば、一人前になっていくものだと考える人が少なくないからです。
逆に言うと、十分な研修や育成プログラムが用意されていない会社は、よくない会社、人を大事にしない会社と思われてしまう傾向にあります。

■就活生が避けたい5つのリスク

就活生にとって、就活初期にすることと言えば、自己分析や企業分析、そして、企業選びの軸を定めることなどが挙げられます。

企業選びの際、「将来の目標などから逆算して、自分のやりたいことが実現できる場所を選定する」「興味のある業界や業種をまずは選定する」という考え方が一般的でしたが、最近は「やりたいこと」や「興味のあること」を決めるだけでなく、あらゆる「リスクを避けられる」ことに重きを置く学生も増えています

就活生が避けたいリスクとは、大きく以下5つです。
 
①ミスマッチリスク
→ミスマッチが発生しやすい要因は、「表面的な面接」と「入社前と入社後の企業イメージの乖離」にあります。面接だけでは、お互い十分な見極めができず、さらに、企業が発信している採用情報と、実際の現場の雰囲気や社風、業務内容などが違ったということも往々にして起こります。ミスマッチには、“スキル”のミスマッチ、“マインド”や“スタンス”のミスマッチ、“価値観”のミスマッチ、“人間関係”のミスマッチなど、様々な種類があると思いますが、自分に合わない可能性がある要素を極力排除したいというのが就活生の本音ではないでしょうか。

②配属リスク
→特に大企業に内定をもらった内定者の間でよく使われる言葉に、「配属リスク」というものがあります。大企業ほど、希望していない部署や地域などに配属される可能性が大いにあるからです。配属を「リスク」と捉え、希望が通らなければ辞めるという人も少なくない中、「配属確約(内定段階で配属部署を確約すること)」を掲げる企業も出てきているのが実態です。

③転勤リスク

→こちらの記事にも

社員に希望しない転勤を求める雇用慣行の見直しが進まない共働きが増え、介護など事情を抱える社員もおり、時代にそぐわなくなりつつある。新型コロナウイルス禍でのリモートワーク普及を追い風に脱転勤に動く企業もある。人生設計やキャリアを優先し転職も当たり前の時代。必要性を吟味しなければ、社員の心は離れていく。

とありますが、育児や介護との両立を行う共働き世帯が増えている今、「転勤」が退職や転職のきっかけになってしまうくらい大きな問題に発展しています。就活生にとっても転勤は、避けたいリスクの一つであることは明らかです。転勤制度を全廃しなくとも、リモートワークの普及とともに転勤縮小の動きを取り入れる企業は今後も増えていくように思います。

④健康リスク
→学生時代からコロナ禍を経験してきた今の就活生は、健康リスクに対する意識が高い点が特徴です。「感染すると学校に行けない」「周りに迷惑をかける」という意識で日常生活を過ごしてきたため、健康リスクを避けたいという気持ちが強く、過労死やメンタルヘルス不調にも敏感です。「健康を害してまで働きたくない」、「社員の健康に対する意識が低い会社には就職したくない」と思っている人は多いです。

⑤働き方を選べないリスク
→例えば、最近はリモートワークができる企業が人気になる傾向にありますが、それも学生の「リスク回避志向」が高まっていることからくるものだと思います。出社したくないのではなく、これから先、いつどんなことが起こっても、働き方の選択肢は多ければ多いほど良いと考えているのです。
働き方に限らず、先行き不透明な時代において、「選択肢を複数持てる会社に行きたい」、「選択肢が少ない会社はリスクが大きい」と捉えられています。

ワークライフバランスを重視する働き手が増え、男性の間でも地域を限定する働き方が広がってきた。かつて男性は全国転勤が前提で地域限定職は女性が選ぶことが多かった。共働きや介護をしながら働く人の増加に伴い、柔軟な働き方を求める声が高まっている。

働き方に対して様々な価値観が生まれている中、働きやすさを向上させるために選択肢を広げ、社員にとって納得感のある制度や仕組み作りを再構築するなど、企業側の柔軟な対応が必要なのです。


■インターンシップはどのように変わっていくのか

こちらの記事の通り、2024年度以降、企業がインターンシップで得た学生の情報を採用活動で利用できるようになっていきます。(※5日間以上の日程で半分超を職場の就業体験にあてる場合などに限り、学生情報を採用活動に使えます。)

欧米で長期のインターンシップが根付いているのは、職務を明確に定める「ジョブ型」雇用を基本としているためだ。入社に必要なスキルがはっきりしており、インターンはその有無を確かめる場になる。
日本の新卒採用は学生の潜在能力を期待した選考で、入社後に育てれば良いという考え方だった。長期インターンの増加は、スキル重視の採用へと変わるきっかけになる

インターンシップで得た学生の情報を採用活動で利用するには、短期のものは5日間以上、専門性を踏まえた長期のものは2週間以上実施した上で、その半分を超える日数を職場での就業体験に充てたインターンシップを対象とするようです。

企業側にとっては、インターンシップで学生のポテンシャルも踏まえた情報を活用することで、採用活動をより効率的に行うことができ学生側にとっても、実務を通じて自分の適性を知ることができ、自分に合った就職先を検討できるため、双方にメリットがあります。

実際には、夏に本番を迎えるインターンシップを選考の一環として行う企業は既に増えており、インターンシップだけで合否がつくことはありませんが、そこでの高評価は内定獲得への近道となります。そうなると、ただでさえコロナ禍で「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」を探すことに苦労している学生にとって、インターンシップに参加したかどうかは、重要なアピール材料になるはずです。

インターンシップの重要度が企業、学生双方にとってこれまで以上に増していくことは明らかですが、その背景には、以下のようなポイントが挙げられます。


●面接だけの選考でミスマッチが生まれている
→学生のスキルや能力、自社に合った人材かどうかを、面接だけで見極めるには限界があります。

●新卒採用の“中途採用化”が進んでいる
→新卒採用が中途採用と同じように、即戦力人材を求め、スキルや職種ごとのマッチングを重視する傾向が強まっています。

●売り手市場で優秀な学生の採用に苦戦している
→人材獲得競争が激化する中、これまでは成功していた採用手法であっても、時代背景や学生のニーズに合わせて新たな採用手法にチャレンジしなければ、優秀な学生を採用できなくなっています。

通年採用や第二新卒採用、既卒者採用、職種別採用など様々な採用手法を取り入れる企業が年々増加しており、日本型の新卒一括採用は今、大きな転換期を迎えています。


■これからのインターンシップの在り方

これまで述べてきた通り、インターンシップに関するルールは形骸化していましたが、実態に合わせてルールが改正されると採用におけるインターンシップの位置づけはこれから更に高まっていきます

現在の企業のインターンシップは、実施期間が短かったり、事業説明やグループディスカッションのみに終始するケースがあったりと内容が乏しく、本来提供すべき“就業体験”の機会を本質的に作られていないことがあります。今後は、半日やワンデーの超短期型のインターンシップが減っていき、1週間~1ヶ月程度の、ある程度の日数をかけた実践的なインターンシップを導入する企業が増えていくことが予想されます。
 
学生に職業体験の機会を提供し、キャリアを考える上での判断材料を増やすことが目的のインターンシップ。

インターンシップを経て志望度が高まり、その企業にそのまま入社をすることを選択する学生もいれば、逆に「自分が求めているのはこういう環境ではなかった」と、インターンシップをきっかけに、それまでの企業選定軸を考え直す人もいます。
 
学生がインターンシップで経験したいことは、

  • 会社の雰囲気や社風を知りたい

  • 実際に働く人がどんな人たちか、自分の目で見たい

  • リアルに近い仕事を体験することで、自分に合った環境かどうかを見たい

などですが、実際に職場体験をすることで、

  • 思ったよりも、ギスギスした人間関係が多く見られた(=職場の雰囲気が良くない)

  • 先輩社員が全くフォローしてくれなかった(=育成環境がない)

  • 学生や若手社員に任される仕事の範囲が極端に小さかった(=成長環境がない)

など、インターンシップの実施が裏目に出て、企業評価を下げてしまうことにもなりかねません

企業側は、インターンシップをはじめとした、職場の“リアル”を体験できる場の提供を積極的に行うと同時に、実施する場合は、想像以上に学生からあらゆる面を“常に見られている”という点を意識しなければなりません。
 

インターンシップを実施しないと、入社後のミスマッチは生まれやすく、また、インターンシップを実施する場合も本来の自分たちを偽り、取り繕って良い面だけ見せようとしてしまうと、その後のミスマッチは生まれやすいはずです。
 
当社でインターンシップを経験してくれた学生は、

  • 「社員が本気で自分の成長に向き合ってくれた」

  • 「人を大事にする文化が伝わってきた」

  • 「若手社員の裁量が大きく、入社後すぐに成長できる環境があると確信した」

などと言ってくれることが多いですが、それは、

  • もともとそのような文化を、長い時間をかけて醸成してきた

  • インターンシップを、ただの「職場体験の場」としてではなく、「職場体験を通じて成長できる場」として位置付けている

  • ミスマッチを極力なくすために、嘘偽りなく、ありのままの姿(社員や職場の雰囲気/業務内容など)を見てもらうようにしている

というような点を意識しているからです。
 

学生にとって、インターンシップはこれから、これまでの「“就業体験”の機会」から、「自分の適性やスキルのマッチングを行う機会」、「“ガクチカ”の一つとしてアピール材料を増やす機会」、「将来やりたいことを実現できる環境かどうかを見極める機会」、「あらゆるリスクを極力排除してファーストキャリアを積む場所として適切かどうかを見極める機会」へと大きく変化していくのではないかと思います。



#日経COMEMO #NIKKEI


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