見出し画像

若者が投票に行かないっていうけど若者以外も行ってない

今月末には衆議院総選挙があるらしいが、若者は選挙に、というか政治に無関心だという。

ワイドナショーに出演した笠松将という俳優が、言った言葉が話題になった。

「結局、入れたい人に入れたって、やってくれないでしょ。で、期限も決まってないし。言いたい放題だし、誰になっても同じだし。変わんないもん、だって。“次は変わるかも、次はできるかも。今回のこれ越えたら”って。何回やるの?」

非常に正直な感想だろうと思う。個人的には、そういう人がいたっていいと思う。自分だって40代になるまで選挙なんて興味なかったし(今もあるとは言えないが)。

ところが、これを「恥知らず」と罵倒した某シンガーソングライターがいたようだが、

政治や選挙に興味を持てないこと=恥ではないし、別に全員が政治に興味もたなければいけないという法があるわけでもないし。むしろ、そうした人を罵倒するような人間がいることの方が問題だと思う。
そして、「政治に興味関心のある私はちゃんとしているのよ。ちゃんとしている私は正しいのよ」のような考え方は往々にして「だから私と違う意見の奴は間違っているのよ、辺境不足で恥知らずなのよ、そういうのは社会の害悪だから排除してやる」というフランス革命のロベスピエールみたいになりがち。

でも、そうして政治に関心を持たない人間が増えれば、政治家の思うツボ。愚かな民は何も考えずにぼーっとしていればいいのという女王の教室の天海祐希の台詞の言わんとすることもまたわかる。

「日本という国は、そういう特権階級の人たちが楽しく幸せに暮らせるように、あなたたち凡人が安い給料で働き、高い税金を払うことで成り立っているんです。 そういう特権階級の人たちが、あなたたちに何を望んでいるか知ってる? 今のままずーっと愚かでいてくれればいいの。 世の中のしくみや、不公平なんかに気づかず、テレビや漫画でもぼーっと見て何も考えず、会社に入ったら、上司の言うことを大人しく聞いて、 戦争が始まったら、真っ先に危険な所に行って戦ってくればいいの」

んじゃ、選挙行けば何かが変わるかといえば、結論から言えば「別に何も変わっていない」。だから冒頭の俳優のように若者が思うのも当然である。

そもそもいつの時代でも、若者は選挙なんて行かない。

長期的な推移をみると、おもしろいのは昭和42年から平成2年くらいまでは、各年代とも投票率はあまり減っていなかったこと。

https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/index.html

「失われた30年」以降、投票率は各年代とも低下し、あの民主党政権が誕生した際に復活したが、「政権交代したら余計最悪じゃん」となってまた低下。なぜか、平成29年からわずかに上昇となっている。

逆に言えば、「投票したって何も変わんないじゃん」という強烈なトラウマを植え付けたのはあの民主党政権だったと言っていいのではないか?

若者を投票させるために「若者は選挙に行くな」という挑発広告を作ったのもいたが、逆に世代間対立を煽るだけと炎上した。

そもそも、あれは、外国で制作されたものの丸パクリで、かつ、パクリ元と比べてもクオリティが低いもので、ちょっと見るに堪えない。

大体、若者が投票に行かないというが、前述した年代別投票率の通り、若者以外もみんな投票率下がっている。

アルコール飲料の売れない原因を「若者の酒離れ」とマスコミがいうが、その実態は40-50代以上の飲酒量が減っていることが元凶だったりするわけで、いつもいつも若者のせいにするんじゃないと思う。

「投票に行ったって何も変わらない」って実際心の奥ではみんな思っていたりすることなんじゃないだろうか。

今回の選挙の党首討論を聞いたって、まあ、相変わらず選挙の前だから、守るつもりもない公約を適当に言ってるなとしか思えないし。どの道議席の少ない野党は無責任なこと言っておけばいいと思ってるし。自民党は相変わらずだし。
もっとも「政治家は選挙の時だけいいことをいう」のを図らずももっとも端的に示しちゃったのが石破総理の総裁選だしね。

これなんか本当に意味わからない。
自分が初代地方創生大臣としてやってきた間違いを繰り返して、地方だけではなく今度は日本全体をダメにする気?

こっちに至っては、単なる手段の目的化でしかなくて、政権交代して何をやるのさってことが見えないし、信用ならない。

これも、自分たちを変えた方がいいんじゃないの?と思ったり。

唯一賛同できるのはこれくらいかな?

「若者をつぶすな」という表現に対し「んじゃあ、高齢者は潰してもいいのか」というわけのわからない批判をする奴がいる。それは「世代間対立を煽るだけだ」と。玉木氏はそんなことは一言も言っていないのだが、どうも世界を対立軸でしかとらえられない人が多すぎて困る。


加えて、相変わらずマスコミは、今度の選挙の争点を「政治とカネ」にしたがるけど、実際一般人にとってそれよりも今の暮らしや将来の経済的不安をどうしてくれんの?って事の方が重大でさ。

政敵への悪口の言い合いや足の引っ張り合いばっか見せられても呆れるだけなんだけど。

誰かを応援するよりも、気に食わない誰かを落選させることの方に熱狂してるよね。結局、やってることは都知事選の時の「つばさの党」のやってたことと大差ない。その先に一体何があるのさ。

投票率をあげたいなら、「誰に投票しますか?」というのではなく「誰を落としたいですか?」という落選させる権利の投票形式にした方が投票率あがるんじゃないの?→思い切り皮肉です。

ちなみに、古代ギリシャのアテナイでは、直接民主制がとられていたが、その制度のひとつに「陶片追放」というのがあった。この政治家はダメだと思た場合、陶器の欠片にその名前を書いて投票し、一定数集まったら都市から追放処分できるというものだ。弾劾投票みたいなもの。

で、結局何が起きたかというと、ポリス(都市)のために意見を言ったり、リーダーシップを発揮し、皆もそれに賛同したにもかかわらず、その政策がうまくいかなかった場合に、片っ端から追放しまくった。そうなると誰も怖くて何も言わなくなる。もしくは、怖いから、誰も自分に逆らわないように恐怖政治を敷いて、反対意見を言いそうなやつを事前に粛清していくということが起きた。そうしてアテナイは没落していった。

コンプラが厳しくて誰も面白い事にチャレンジしなくなったり、ポリコレが怖くて正しい事実を誰も指摘しなくなったりも同様だろう。

同じようなことを人間は本当に繰り返す。

投票に行かないことを恥だのと言う前に、大人たちも自らの行動が恥ずかしいものかどうかを自問した方がいいんじゃないの?


長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。