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自己効力感と組織効力感 価値の交換と貢献

自己効力感は、私たちの仕事や人生において重要な役割を果たします。しかし、これが強すぎると、思わぬ弊害が生じることもあります。自己効力感を保ちつつ、他者との健全な関係を築くためのバランスについて、自戒を込めて。


自己効力感と自己中心性

自己効力感が高い人は、しばしば「自分がいなければ組織は機能しない」と考えがちです。これは、自分以外の人材を軽視する危険な思考へとつながります。プロジェクトベースでテンポラリなタスクフォースチームを組んで仕事をしていたときには、全員が、そのマインドを持って、ぐいぐい進めていくようなものもありました。これはこれで、とても気持ちの良い集団でした。ただ、これが成立していたのは、目的および目標が明確で、短期間の成果重視の小規模組織だったからとも思えます。

もう少し長い、中長期の活動で、チームへの所属という形で、温度感の違うメンバーとの連携が必要となる場合、この個人に依存する自己効力感は、マイナスに働きそうです。たとえば、プロジェクトが成功した際、自分の貢献だけを強調し、他者の努力を見過ごす、もしくは意図的に低く見ることが起こります。これは自己中心的な考えの一例ですが、このようなバランスの欠如は、チームの士気に悪影響を及ぼすことがあります。

この場合、健全な効力感は、個人ではなく、組織に依存するものではないか、と思います。このチームにいるからこそ成し遂げられるのだ、という組織効力間です。

これを考えるとき、下記の価値の交換と貢献について思い出します。

価値の交換と貢献

上記にて、下記のような内容に触れました。

AさんとBさんが、釣り針をつくり、魚を釣った場合。 それぞれ自給自足で手に入る1匹の魚と、必要な労働時間。 Aさんは、釣り針1本を3時間でつくり、1匹釣るのに4時間かかる。 Bさんは、釣り針1本を2時間でつくり、1匹釣るのに1時間かかる。
Aさんは、釣り針づくりが得意なので3時間×2=6時間で2本つくる。 Bさんは、釣りが得意なので、2時間×2=2時間で2匹つる。 Aさんの釣り針1本とBさんの魚1匹を交換すれば、双方1匹ずつ魚が手に入る。 さらに、自給自足よりも、双方1時間ずつ余暇が生まれている。

ここで注目したいのは、AさんとBさんとをみたとき、Bさんは、釣り針づくりも魚釣りもAさんより優れている、という点です。

僕がAさんだったとしたら、かなり引け目を感じる関係です。が、それでも、自分が得意なことで相手と取引すると、双方がプラスになれるのです。

これは、僕にとって、大きな救いになりました。

見回せば、自分より優秀な人だらけ。何をどうやってもかなわない。そんな厳しい環境に身を置くことは、そう珍しいことでもありません。不安になります。

しかし、そんな中でも、自分が最も得意することで価値を提供すれば、全体がプラスに働くのです。

「リスキリングとポジショニング 世界一じゃなくとも社会に価値を提供できる」より

他者への批判とのバランス

このように、自分ができないことができる人への尊敬は当たり前として、仮に自分ができることであっても、そこを相手に委ねることで全体としての効力が増すのであれば、そこには敬意を払うのが当然だと思うのです。能力の高低によって、相手を低く見る姿勢は、チームを崩壊させます。他者への批判は、尊敬と共感に基づいていなければ、破壊的なものとなりかねません。

自己効力感と他者への尊重との間のバランスは、組織の成功の鍵となるものではないでしょうか。自分がいなければ組織が成り立たない。それは、逆説的に、組織があって初めて成立する言葉です。組織には、さまざまな要があり、それぞれの要は、他の要と連携し、また要同士をつなぐことで機能します。自分が重要な要のひとつであったとしても、その要としての効力は、組織全体の力となってようやく意味を持ちます。

下記の記事でも、「セルフエフィカシー(自己効力感)」としながらも「私たちはなんとかうまく乗り越えられる」と、「私」ではなく「私たち」という複数形となっています。これは、個人ではなく、チームとしての効力感を示していると思います。

自己効力感と組織効力感は、似て非なるものであり、驕らずに謙虚に、ひとつひとつの課題に向き合い、未来に向かっていきたいと思います。

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