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2つのソーシャルインパクト

インパクト投資という言葉も根付いてきました。ソーシャルインパクトボンドも、10年ほど前に某学会等で発表した際には、まだほとんど流通していなかった言葉ですが、こちらも一般的になってきました。今回は、2種類のソーシャルインパクトについて気づいたことを書いてみます。

ベンチャーとしてのチャレンジ

先日、「Edvation Open Lab」という経済産業省委託事業のイベントにてパネルディスカッションに参加する機会を得ました。そこで、話しながら気づいたことをまとめてみたいと思います。

大手企業が真っ白なことしかチャレンジできないとするならば、ベンチャーはそこから踏み出し、黒になる手前までを探っていく役割があるように考えています。

領域の拡張だったり、未踏の開拓だったり、行ったり来たりするマージナルな動きだったり、そうしたある種の逸脱を含む活動そのものを事業として展開することが期待され、ある意味で優遇されている立場だと思うのです。

ゲームチェンジャーとしての期待値

この逸脱があるからこそ、その活動の結果として、ゲームチェンジという状況が結果として社会にもたらされる。そのきっかけの一助となる動きになるのではないでしょうか。

既存のルールの中で収まっていては、ゲームのルールを変えることはできないのだと思うのです。構造の中から生まれたものは、その構造を変えることが難しい、という構造主義とポスト構造主義などでくり返されてきた議論ではありますが、そういうことなのかなと思うのです。

もちろん、資本主義のルールの中で動いている以上、そのルールの中かもしれませんが。少なくとも、ビジネスのフィールドとしてとらえている領域の中のルールに対しては、その構造の外側に逸脱していくことが期待されている部分があると思うのです。実際にインパクト投資の資金も大きくなってきています。

ブリーフセラピーのシステム論

ルールとはシステムと言い換えてもいいかもしれません。どのような仕組みが出来上がっているのか。その仕組みが深く浸透し、馴染んでいる状況が、その業界における古くからのしきたりと呼ばれるようなものだと思います。それが明文化されたものが、ルールです。

ルールを変えることはシステムを変えること。僕がよく取り上げるブリーフセラピーという心理臨床の手法に、人間関係をコミュニケーションシステムとして見立てるというものがあります。課題行動が起こっている状況全体を俯瞰し、その課題が発生している状況における関係者のコミュニケーションの状況をシステムとして見立て、捉えます。その上で、システムを変化させやすい部分に介入します。それにより、システム全体が変化を起こし、課題が起こらなくなればよい、という考え方です。

ロボットなどの人ならざる者が人とのコミュニケーションに介在する時代において、極めて重要な心理臨床の手法であり、コミュニケーションデザインに必須の知見がそこにはあると考えています。

システムを変える異物

上記のシステムに対する考え方は、ベンチャーにとっての社会課題も同じように捉えられると思うのです。

社会課題が発生している状況をとりまくシステム(ルール)は、どうなっているのか。それを見立てた上で、介入していく。その結果として、ルールが変わり、ゲームチェンジが起こることで、課題が解決していく。

これこそが、ソーシャルインパクトそのものかもしれません。見立てと介入は、人の個人の課題だけではなく、社会全体に対しても、同じように考えられそうです。

ミクロとマクロは相似形なのかもしれません。

直接インパクトと間接インパクト

課題に対して直接的に介入し、課題そのものを解決していく。これは、直接インパクトと呼べるかもしれません。

しかし、上記のようなものは、システム全体に作用することで、間接的に課題が解決されていくため、間接インパクトとでも呼べる形なのかもしれません。

この間接インパクトの貢献度評価は、とても難しそうです。人事評価でもそうですが、直接的な活動は評価対象として見出しやすいのですが、間接的なものは、実際のところ、それが欠かせない分水嶺になったものだとしても、その後の様々な活動に埋没して見えなくなってしまいます。

この辺りの直接インパクト活動か、間接インパクト活動かによって、調達する資金の形も変わってくるのかもしれませんし、組織のあり方も異なるのかもしれません。

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