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欧州の知性、ルトガー・ブレグマン氏に聞く「幸福な社会」後編

世界46カ国で翻訳されベストセラーとなった「Humankind 希望の歴史」の著者である歴史学者のルトガー・ブレグマンさんのインタビューの後編です。(前編はこちら)

なぜこの本を書こうと思ったのですか?

2つの主な理由があります。

最初の理由は、人類学、社会学、心理学、歴史学など多様な分野の多くの専門家が人間の本性について持っている見方がバラバラで、統合した大きな絵を誰かが示す必要性を感じていたことです。

専門家は小さな分野について細かく知っていますが、人間の全体像を理解しているわけではありません。

人間の真実は、より希望に満ちたものです。人類の歴史が示す大きな物語は「協力」です。 人は、まともで社会性に富んだ存在なのです。

2つ目の理由は、以前執筆した「隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働」に対して寄せられた反論への対応です。

この本の中では、ベーシックインカムなどの民主主義の新しい形式や、従業員を信頼し自分で決定できる自由の多い会社を組織する方法などを盛り込み、同様の取り組みが世界中で実現し始めた背景を受けて、意気込んでいました。

しかし、例えば北欧は昔ながらの社会民主主義者が多く、お金の得るためには必ず働かなければならないという強い信念を抱えています。そして無条件でお金を得ている人を好まない傾向があります。

こういった人たちから寄せられる多くの反論の根本には「人間は信頼に足らない存在である」という間違った考えがあることに気付きました。そのため、もう少し深く掘り下げていき、新しい民主的な方法が実際に機能する証拠を提供する必要性を感じたのです。

それは特定の会社や都市でしか通用しない実験結果ではなく、人類のスケールで適応が可能であることを論じたかったのです。

以上が、私がこの本を書こうと思った主な理由の 2つです。

伝えられることが一つだけだとしたら、何を伝えたいですか?

私が本当に気に入っているのは、私たちの行動は伝播するという社会学からのシンプルな洞察です。 

私たちは日々誰かに影響を与えながら生きています。私たちが、小さな親切な行為を行えば、その親切は社会全体に広がっていきます。文化の力を過小評価してしまいがちですが、行動が作り出す文化は最終的に世界を変えていくのです。

親切に対応したくなくなる極めて利己的な相手がいるのも事実ですが、現代社会はこういった悪意のある人たちを意識し過ぎていて、性悪説に基づいた社会制度が多く存在していますが、誰に対しても親切であるべきです。

私がお勧めするのは、自分自身の人生をどう生きたいのか考えて行動することです。時には騙されることもあるでしょうが、その代償はいか程の大きさでしょうか。日々他人を警戒しながら生きていくのと、本当はどちらが良いのでしょうか。代償は喜んで支払うべきです。

周囲の大多数はまともな人たちです。他者を信頼して人生を過ごしたいと考えることこそが、我々が持っている性質ではないでしょうか。

そして社会はどんどん良くなっています。10年前の米国では狂った思想だと思われていたベーシックインカムが、現在ではあちこちで議論されていて、複数の実験が始まっています。

献身的な比較的少数のグループによって、世界は何度も変化してきました。奴隷制度は撤廃され、女性は権利を獲得してきています。

私たちは、希望を失うべきではありません。

ルトガーさんは人類の特性に基づけば社会はもっと善く変えられるし、実際に変わってきているという確信に溢れていて、希望を強く抱ける内容でした。

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遠藤 直紀(ビービット 代表)
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