グローバルで通じるスタートアップ・エコシステムをいかに構築するか
FUSE vol.2のカンファレンスが2022年1月20日に開催され、3,000名以上が参加(登録ベース)されて大盛況だったようですね〜。
私自身は、オープニング後の一つ目のセッションにモデレーターとして登壇させていただきました。
「グローバルで通じる、スタートアップ・エコシステムの構築に向けた官民の戦略」をテーマに、経済産業省の亀山さん、JETROの島田さん、リアルテックホールディングスの藤井さんからお話しをお伺いしました。
一つ目のセッションということもあって、日本のスタートアップ・エコシステムの課題を踏まえつつ、官民でどういった取り組みを進めてゆくべきかを国の目線で俯瞰する論点の幅の広いセッションとなりました。
今年は、岸田政権が「スタートアップ創出元年」と掲げておられて、2022年1月17日の施政方針演説でも成長戦略として言及がありました。
・・・という、重要なテーマについての議論をさせていただく貴重な機会に恵まれたので、僕なりに議論から学んだことをまとめることにしました。
グローバルで通じるスタートアップ・エコシステム構築の5つのポイント
「グローバルで通じるスタートアップエコシステムを構築するために、これから日本が取り組まないといけないことは何か?」という論点に対して、5つほどポイントがあるかなと思ったので、以下まとめてゆきます。
1. 日本が勝てる土俵を定める
「スタートアップ創出元年」と設定し、官民を挙げてスタートアップを支援していくというのは、日本の成長に欠かせないものと思います。
スタートアップとは、急成長するベンチャー企業のことを指すわけですから、そもそも成長領域なわけですし、その中でどの成長領域に絞り込むかということは今のところ定義されていません。
各スタートアップ経営者や、VCの目利きに任せていくということかもしれません。「聞く力」を重視するで岸田政権らしいといえばらしい気もしますが、やはり「グローバルで通ずる」スタートアップを生み出すのであれば、闇雲にあらゆる業界でやるべきでもないんですよね。
例えば、ヨーロッパでは「気候変動」の領域にフォーカスしているということで、これは何もサステナビリティとか、ESG投資とか、そういった文脈だからということではないようです。成長するビジネス領域として決めに行って、その領域で先行しているわけですね。
FUSEのセッションでは、日本なら、宇宙とか、素材系は世界でも強いとう意見が出ていました。また、Deep techは、開発が進めば世界で使われるものになるから、グローバル展開しやすいという意味で優先すべきという指摘もありました。
あとは、課題先進国の日本だからこそ、高齢化社会におけるソリューションを先に日本でどんどん開発、実装し、それを世界に展開していくというのはぜひ優先して取り組みたい課題ですね。医療なんかはそうした分野として優先度が高いかもしれません。
こういった、日本ならではの勝てる切り口をしっかり作っていきたいですね。
2. 英語で情報を発信する
これはそもそも論なのですが、英語の発信がないとそもそもグローバルにリーチしません。いくら日本が世界で勝てる領域を特定して、日本国内で先進的な成果を挙げたところで、英語になて情報が出回らない限り、その情報は海外に届かないんですよね。
これは、スタートアップとしてもそうですし、エコシステムを構成するVCや支援機関などもそうです。
海外には、日本に着目している投資家がたくさんいます。また、日本が好きで興味を持っている方々も多くいらっしゃいます。
特に、日本の大学で良い基礎研究などがあったりするわけですが、海外投資家や事業家からすると、どう近づいていいかわからなくて困っているという話があります。
英語でのストック情報を出しておくということは、そうした方にリーチできる可能性があるので、ぜひ意識しておきたいポイントです。
3. グローバルを前提とした組織づくり
英語での情報発信をするにしても、英訳の手間だったり、問い合わせをされても対応どうするのかとか、何かと「英語」というだけでハードルがあります。
日本で一定の収益が上がり「いよいよ海外展開」となっても、どこからどう始めていいかわからないですし、またゼロからのスタートです。プロダクトはあるし、組織もそこにあるのですが、肝心の「情報」が日本語を前提に整えてきちゃってるので、ゼロからスタートなんですよね。
そうやって、「まず日本で勝ってから」と言ってるうちに、海外は海外で類似のサービスが当然できてきているわけで、市場参入が遅れます。しかも、日本で積み上げてきたレガシーがあるので、ゼロから立ち上げるよりもむしろ組織的には難易度が上がる面も多くあります。
FUSEでも、日本とシリコンバレーの圧倒的な違いは「グローバルを前提にしてる否かだ」という意見が強く出ていました。シリコンバレーは「アメリカ」ではなくて「グローバル」を前提にしているので、世界展開がとにかく早いんですね。
なので、創業の早いタイミングから、組織内に海外経験者や、外国籍の人材を積極的に取り込むことが肝要です。そうした人材がグローバル感覚で運営をしていけば、「いよいよ海外」という時にスピーディーに展開できるわけですね。
4. 海外資本の調達
グローバルに事業展開するには、海外のパートナーが欠かせません。
海外立ち上げチームを作って、日本から現地に行き立ち上げていくわけですが、まず現地で法人設立を行い、オフィスを探し、現地採用を行い・・・、ということを、現地の法律や文化に則って行わないとなりません。
これはやはり、現地に詳しいパートナーに助けてもらうことが有効です。
そうした際に、資金調達で投資を海外のVCから引いておけば、彼らが現地のネットワークを持っていて、様々な支援者を紹介してくれるということなんですね。
当然、投資家は海外での成功を期待しているし、支援してくれる立場な訳なので、こうした仲間を組織に取り込んでおくことはとても効果的です。
海外投資を受けるせよ、海外展開するにせよ、困ったらまずはJETROに声をかけると何かと助けてくださるそうなので、是非皆さんJETROまで!
5. 経営人材の育成・確保
スタートアップの成長において何はともあれ欠かせないのは人材です。セッションの中では特に、経営人材の不足への言及が多くありました。
起業家については、シリアルアントレプレナーを輩出していくことが重要という指摘がありました。経験も実績もある人材が再チャレンジすレバ、成功確率は高いですし、人もお金の集めやすいからですね。
ただ、日本の特殊性としてExitの多くがIPOになっていて、大型のM&AによるExitが少ないということが挙げられていました。
M&Aの場合は、買収元から経営陣が送り込まれたりして引き継いでいくので、起業家はまた次のチャレンジに向かいやすくなります。一方、IPOの場合は引き継ぐ相手がおらず、継続して経営を続けるケースがどうしても多くなるということです。
もちろん、IPOして継続して成長を続けられる企業家も多くいらっしゃいますから、これ自体は否定すべきことではありません。
ただ、「スタートアップをどんどん輩出するエコシステムを作る」ということでいうと、ゼロイチが得意な希少な起業家が、何度も何度も事業を作り上げていく方が、よりたくさんの成功確率の高い事業を生み出せるということですね。
また、起業家がいるとしても一人ではダメで、周りを固めるCxOクラスの経営人材が欠かせないという視点もありました。
スタートアップからスタートアップへと動きながら経営人材へと育っていくケースも多いですが、経営人材をより多く・広く確保していくという意味では、大企業の人材のスタートアップへの流入も欠かせません。
特に、グローバルにスケールさせていくことを考えると、大企業で海外駐在や留学の経験をした人材だったり、外資系の大企業で勤めている人材がスタートアップに流入することは大きな力になります。
セッション中でも、「海外経験もして、早く大きな責任を持ちたいと思って頑張り、40手前でやっと管理職になったと思ったが、次のポストにまた10年かかるなーと言うのが見えちゃって、どうしようってなってる人が結構いる」といった話も出ていて、こういう方はぜひスタートアップに!と、個人的にも思いますね。
この点については、経産省の事業として「Shift X」という活動があって、大企業の人材をいかにスタートアップへと促すかということを、副業・プロボノ、キャリア相談、人材紹介、育成、など様々な切り口から手掛けています。
僕自身、このSHIFT Xには、コンソーシアム採択時の審査員として携わらせていただきました。
いろいろな企業がパートナーシップを組みながら、人材流動性の向上にむけて取り組んでいく営みはとても興味深く、これからの成果に注視していきたいと思っています。
さいごに
スタートアップ・エコシステムといえば、ちょうど年明け一つ目の僕のnoteで「スタートアップ創出元年となるか」について書きました。
多様なステークホルダーが一緒になってエコシステムを形成するには、共通の文化が必要で、「スタートアップ・カルチャー」ともいうべきカルチャーの醸成が必要だなと感じている最近です。
今年のテーマとして、注力していきたいと思っているエリアです。こちらの記事も宜しかったら是非! それでは!!
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