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SHEINどころではない。Temuの世界展開の野望と成長スピードがやばいこととその秘密

日本のみなさん、最近やたらとこの広告見てませんか?

送料無料なうえに鞄が153円ておかしくないですか…

Temuというサービスからの広告が日本中で拡散してるかもしれません。大学時代の後輩からこのスクショと、この広告出過ぎるって苦情が送られてきました笑

このネットECサービスのTemuは中国ウォッチャーの皆さんはご存知かと思いますが、わずか一年ほどでの急成長の速度、そして元々は中国のスーパー企業の拼多多だということはご存じでしょうか?まずはTemuのとんでもエピソードから紹介していきます。

2022年9月にTemuが北米でのローンチを果たしたんですが、このとき設定した目標が普通ではありません。それは「2023年9月までに北米市場において少なくとも1日のGMV(総売上高)でSHEINを上回る」というもの。

SHEINはもちろんご存知ですよね。世界中で話題となり、日本にもたくさんのユーザーがいる大成功しているファッションのECサービス。時価総額が100億ドルを超え、アメリカでは2022年6月時点で、H&M・ZARA・Forever 21を売上げで抜き完全にファストファッション最大手の地位に君臨。

一方、Temuはアメリカでデビューしたばかりで、その時にこんな目標をたててくるところが普通の感覚ではあり得ませんね。

ただ、ヤバかったのはこの野心的な目標ではなかったことをみんなが思い知ります。Bloombergによると、今年の5月においてアメリカ人のTemuでの消費支出がSHEINを約20%上回っていたと分析されています。1年どころかわずか半年あまりで追い抜いているのです。

Second Measure数据より

さらに、北米だけではないところもすごいのです。2022年4月には、Temuは英国、フランス、ドイツなどの先進国に進出しました。7月には日本と韓国というアジア市場に進出した、その1ヶ月後の8月にはフィリピンとマレーシアでもスタート。なんと一年たらずの現在で世界47カ国で展開しています。

ちなみに過去1年間、TemuはアメリカのAppleストアやGoogleアプリのショップカテゴリのダウンロードランキングで常に1位に君臨していているとのこと。

Bloombergより

報道では多くのアナリストたちもTemuの力を過小評価していたとのコメントがありました。8月末に拼多多が第2四半期の財務報告書を公表したのですが、Temuを含む手数料収入は1435億元を記録。Temuの世界的な拡大がこの予想を大きく上回ったことが重要な要因となっています。

海外のサイトでもTemu躍進についてたくさん分析記事があがってたんですが、拼多多に馴染みがある中国のみなさんはTemuの戦略がすごくよくわかっています。Temuがここまで海外市場で成功を収める大きな要因は、中国でと同様、ターゲティング&低価格商品戦略と今まで培った流通セールスの仕組みです。

⤴その昔書いたnoteですが、これはもう全マーケターが読んでほしい教材だと思ってます。

拼多多もそうでしたが、Temuもターゲットを明確にした上でのマーケティング戦略が恐ろしくうまい。ユーザーに対して独自の販促活動や割引クーポンを提供しており、消費者はお得な価格で商品を購入することができます。ボクの後輩も完全に低価格帯に興味あるユーザーにクラスタリングされて広告がたくさん投下されているのでしょうw

かつて中国で拼多多が現れ始めたときに、中国にはECサービスの王者Taobaoが君臨していたほか、2位以下も熾烈な競争状態で、とても新規で成功できる人たちがいるとは思えなかったのを思い出します。しかし今の中国のEC業界では20年以上の発展を経てもまだ群雄が天下争い状態で、その筆頭は拼多多です。

国内市場で競争が激化している一方、海外で新天地を開拓することは自然な選択肢となります。Temuはこれまでの中国での市場経験を活かし、越境ECの出店者の最も大きいペインポイントを解決し、中小規模の事業主も手頃に出店できるようにしています。

Temuの海外進出国一覧

そのキーポイントはホスト型プラットフォーム。セールスは商品をプラットフォームに提供するだけで、プラットフォームが国際物流を始め、その後のカスタマーサービスなどの業務のほとんどを引き受けてくれます

出店者にとっては、こういった代行は越境ECにおいて自分の力で最も解決しにくい問題。Temuでの出品では簡単に解決でき、運営のコストも人件費も安くなります。一方でプラットフォーム側にとっても、直接品物を預かっているので架空の出荷や偽物の回避ができるし、出荷してからの大量運送により、国際運送コストも安くできるというメリットがあります。

もちろん、低価格戦略がいつまでどこまでいけるかはこれから次第でしょう。積極的に対応する供給業者が存在するのは、流量を求める業者がTemuの将来に利益があると考えているから。Temuのここまでのグローバル展開モデルでは、価格設定の損失が持続的に成長の規模で補われる構造。つまり、Temuというプラットフォームは、成長によってもたらされる利益が価格設定による損失を上回っていく必要があると分析されています。

また、課題としては大きく二点、輸送のコストと競争の激化があげられています。

まず、中国国内ではなく国境をまたがるEC取引においては、海外での輸送コストに、通関料、海上/航空運賃、通関手数料、および配送手数料が含まれます。この輸送コストは各国や地域の規制などに影響されるので、そこを交渉しながら有利に行っていくオペレーションが大変。

もう一つはライバルたちが黙っていないこと。特に中国の記事や有識者から指摘されているのは東南アジア。アリババのLazadaなども成長しているように、東南アジアのEC市場は成熟してきていて競争が激化しています。多くのプラットフォームが存在し、消費者にとっては利便性と多様な選択肢が重要な要素となっています。

この点も、解決策はいかにグローバル展開を早く進められるか、との分析があります。Temuが新たな市場に進出し、さらなる売り手と消費者を獲得すること。新たな市場では競争がまだ緩やかな場合があり、Temuは他のプラットフォームよりも優位に立つことができます。また、進出地域の拡大により、Temuは規模の経済を享受し、さらなる効率化とコスト削減が可能となるという考え方。

そんな理論は誰でもわかっていても、実行できるかは別次元の難しさですよね。新たな市場への計画と調査、然るべき手続きやコネクション作りに加え、グローバルなマーケティング、ローカライズされたサービスとサポートの提供、地域のニーズに合わせた機能提供やその開発なども必要になります。

中国企業の海外進出が積極的になった裏には、国内市場の競争の激化が深く関わっています。EC競争に新規で入場してきた抖音(tiktok)はついこの間のセール期間でも拼多多に負けない勢いで活躍しています。独身の日のセール(11月11日)期間もひと段落した中国国内のEC事情については改めて書きますので、ぜひフォローしてお待ちください!

(参考資料)


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